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多発性骨髄腫の治癒に挑戦

2020-10-25 10:34:38 | 健康・医療
従来治癒が難しいと考えられていた血液ガンの一種「多発性骨髄腫」に2020年6月、新薬が登場しました。

21世紀に入ってから登場した薬によって、画期的な進歩を遂げたこの病気の治療法に新たな選択肢が加わりました。

多発性骨髄腫は日本で3番目に多いといわれる造血器腫瘍(血液や骨髄、リンパ節などに生じる腫瘍)で、日本では人口10万人あたり約5人が発症するとされています。人間の血液中には、赤血球や白血球、リンパ球、血小板などの細胞が存在しています。

多発性骨髄腫ではこの中の「形質細胞」がガン化します。ガン化した形質細胞は骨髄腫細胞と呼ばれ、骨髄の中で増加していきます。本来形質細胞には、細菌やウイルスなどから体を守る抗体を作り出す働きがあります。

ところがガン化した骨髄腫細胞の場合、異物から身体を守る能力のない「Mタンパク」を生み出してしまいます。それによって貧血、免疫低下、腎障害、病的骨折などさまざまな症状が引き起こされます。

多発性骨髄腫の治療の中心となるのは薬物療法です。21世紀に入ってから登場したポルテゾミブとレナリドミドの併用が、一般的に初めての治療に用いられます。

ポルテゾミブは、ガン化した形質細胞である骨髄腫細胞の増殖を抑え、レナリドミドは免疫調整薬といい、体内の免疫の働きを調整して骨髄腫細胞を抑制します。ただどちらの薬も徐々に効かなくなる(抵抗性が生じる)ことがこれまでの治療のネックの1つでした。

こうした状況の中、再発または難治性の多発性骨髄腫の治療薬イサツキシマブが製造販売承認を取得しました。イサツキシマブは、ガン化した形質細胞である骨髄腫細胞の表面に存在するCD38という抗原に結合して、腫瘍細胞を直接的に細胞死に誘導します。

もう1つイサツキシマブの大きな特徴として、骨髄腫細胞に対する免疫細胞からの攻撃にブレーキをかける(免疫反応を抑制する)酵素の活性を阻害する、つまり免疫の働きに対するブレーキを外す点が挙げられます。

それにより骨髄腫細胞が免疫細胞からの攻撃をより受けやすい状態するようです。イサツキシマブは今のところ、再発または難治性の多発性骨髄腫への効能・効果が認められています。

特に既存の治療薬であるポマリドミドと併用することで、より高い治療効果が期待できる点にあります。ポマリドミドは、初回の治療に用いられるポルテゾミブとレナリドミドが効かなくなった際、次に選択される標準的な薬です。

こうしてみると多発性骨髄腫は簡単に治るような感じですが、実際の医療現場ではそれほど簡単ではないでしょう。しかしこのような進歩によって、確実に治る病気に近づいていることは確かな気がします。


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