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皮膚の細菌バランスが健康と病気を左右する

2024-06-09 10:38:14 | 健康・医療

 

近年腸内細菌の研究は活発になってきましたが、同じように多種の菌が存在するとされる皮膚の常在菌はあまり研究されていないようです。

腸内といういわば袋の中にいる微生物は扱い安く、皮膚という外部に面した部分の微生物は扱いにくいのかもしれません。

皮膚の細菌数に関しても研究者によって若干異なるのですが、ヒトの皮膚には約1000種類、100兆もの細菌が生息しているとされています。

皮膚はどんなに滑らかに見えても、実際は無数の穴が存在し、その中に多数の常在菌が生存しているようです。こういった皮膚の常在菌は、単に皮膚の表面に存在しているだけではなく、免疫システムと密接に関わり合いながら、皮膚の恒常性維持に重要な役割を果たしています。

近年の研究によって、皮膚細菌叢のバランスが崩れることが、様々な皮膚疾患の発症に関与していることが明らかになってきました。健常人の皮膚には、主に4つの門に属する細菌が優勢に存在しています。

この「門」というのは微生物などの分類上属の上に位置するもので、あまり使いませんが皮膚には非常に多種の細菌がいるためにこういう表現になっているようです。

ここでは非常に多くの属の名前が出ていますが、私に馴染みがあるところではコリネバクテリウム属、スタフィロコッカクス属、ストレプトコッカス属の細菌が代表的な皮膚常在菌として知られています。

これらの細菌叢は、皮膚の部位や環境によってすみ分けられています。興味深いことに同じ部位でも個人差が大きく、脂質量や水分量によって細菌叢の組成が大きく変化することが報告されています。

このように皮膚細菌叢は非常に多様性に富んでおり、そのバランスを保つことが皮膚の恒常性維持に重要だと考えられています。皮膚細菌叢は単に皮膚のバリア機能を高めるだけでなく、免疫システムを教育するという重要な役割を担っています。

新生児の時期にはまだ発達途上の免疫システムが、皮膚細菌の定着を炎症反応を起こすことなく受け入れます。この免疫寛容は、制御性T細胞によって担われていることが明らかになっています。

また特定の皮膚細菌が免疫応答に影響を与えることも報告されています。例えば表皮ブドウ球菌は、インターロイキン-1aの産生を促進し、宿主防御や皮膚の炎症に関与するT細胞の働きを活性化します。

この免疫システムと皮膚の相互作用をさらに解明することで、アトピー性皮膚炎を始めとする様々な皮膚疾患の病態解明や、新たな治療法の開発につながることが期待されます。

このように皮膚細菌叢のバランス異常は、炎症性皮膚疾患から皮膚ガンに至るまで、様々な日う疾患の発症に関与しているようです。

皮膚の常在菌を整えることが、こういった疾患の予防や治療に役立つ可能性があるのかもしれません。


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