ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

新型コロナで重症化した患者の共通点

2023-12-26 10:33:43 | 健康・医療
現在はインフルエンザの流行が話題になっていますが、新型コロナは沈静化しているようです。

新型コロナはウイルスの変異などによって毒性が下がっていますので、重症化する患者はほとんどいないようですが、重症化のメカニズムには「免疫の暴走」があったようです。

風邪をひいた時などにできる喉の腫れなど、まさに病原体との戦いの場というイメージがありますが、体に対するダメージも併せ持っています。ここではサイトカインと炎症との関係を紹介します。

ウイルスの感染防御の中心は、抗体と考えられます。しかしこれまで経験したことのない新しいウイルスに初めて感染した場合、この段階ではまだ抗体はできていません。ごく初期の段階では感染してしまった細胞は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)という殺し屋が見つけて攻撃します。

ウイルス生産工場となっている感染細胞を破棄してしまえば、ウイルスの増殖を阻止できます。2度目の感染やワクチン接種でウイルスに対する抗体が存在すれば、NK細胞は抗体を介して感染細胞を認識して攻撃することもできます。

これを「抗体依存性細胞障害反応」といいます。ウイルス感染細胞を殺しただけでそのまま放置しておくと、感染細胞の内部にある完成していたウイルスはまき散らされることになります。そこで死んだ感染細胞や死にかけた感染細胞を早く食べて消化するのが、好中球とマクロファージ(食細胞)です。

NK細胞と同様に食細胞もウイルスに対する抗体があると、効率よくウイルスや感染細胞を見つけて食べることができます。抗体などが結合することで食細胞に取り込まれやすくなることを、オプソニン効果と言います。

マクロファージには、貪食の他にもうひとつ重要な役割があります。ウイルスのDNAやRNAを感知し、炎症を起こすのです。死んだ細胞から出る物質がマクロファージを活性化して炎症を起こします。

炎症とはマクロファージや好中球、NK細胞、場合によってはT細胞など、免疫にに関係する細胞が患部に集積した状態をいいます。それらの細胞は、炎症細胞とも呼ばれます。炎症細胞が集積すると血管が拡張するので、皮膚やのどは赤く腫れてみえ、免疫が盛んに感染と戦っている現場です。

ウイルスや細菌の核酸を感知すると、インターフェロンやTNFα、IL-6といった炎症を引き起こすサイトカインが作られ分泌されます。さらに炎症が強くなると、体温が37℃を超えるような全身性の発熱が起こります。

これは炎症性サイトカインが脳の視床下部に作用してプロスタグランディンという発熱物質が作られ、体温を上げるのです。この後炎症性サイトカインが出ると「サイトカインストーム」と呼ばれる現象を起こし、重症化していくことになります。

この様に本来身体を守るはずの免疫が強すぎると、逆に重症化してしまうという事が起こるようです。

新薬の登場で腎臓治療が激変、透析の必要なし

2023-12-25 10:38:44 | 健康・医療
私の知人も透析を受けていますが、1日おきに5時間も拘束されるというのは、日常生活に大きな影響が出るようです。

近年2型糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬の登場で、腎臓治療が大きく変わりました。腎機能の悪化をかなり抑制でき、この薬を飲んでいると透析になる割合が少ないことが証明されています。

2023年改訂の「エビデンスに基づくCKD(慢性腎臓病)診療ガイドライン」でSGLT2阻害薬の投与は「1A」と最も強いレベルで推奨されました。従来のGLP-1受容体作動薬は腎臓の血管内皮細胞を保護し、タンパク尿を減らす効果があるとされています。

しかし透析を減らすかどうかのデータはまだありません。ところがSGLT2阻害薬は、透析を減らせることが明らかになっています。その意味ではSGLT2阻害薬は腎臓病治療の歴史を変えたといっていいようです。

この薬は2014年から日本で使われるようになった糖尿病の治療薬です。腎臓の近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑えて、尿から糖を排出することで血糖を下げます。インスリンを分泌する膵臓に直接働きかける薬とは異なるため、低血糖にはなりにくいとされています。

インスリン分泌促進によらない新しい作用機序を持つこの薬は、持続高血糖による破壊性が解消され、インスリン抵抗性が改善されるため膵臓β細胞の温存が期待でき、体重減少や脂肪肝改善、血圧低下、脂質代謝改善などの効果があることが分かっています。

その後様々な大規模臨床試験で心血管イベントのリスクの高い患者にはそのリスクを抑制する働きがあることが分かり、腎臓保護作用があることも分かったのです。またある試験では、タンパク尿だけではなく透析も減らすことを明らかにしたのです。

腎臓は血液をろ過して尿を作り出す臓器で、腎小体と呼ばれるろ過装置があり、その腎小体は主に糸球体と呼ばれる小さな穴が開いた微細な血管の塊でできています。

穴から血液中の水分や老廃物が漏れて尿細管に流れ込み、尿細管はその中にある必要なもののみを再吸収し、不要なものだけを尿として排出しています。歳をとるとこの糸球体の数が減っていきます。

ここではSGLT2阻害薬のメカニズムを解説していますが、かなり専門的になりますので割愛しますが、一言で言えば糸球体の減少を防ぐ効果があるようです。

これまで臓器の機能が衰えると、それを回復させる薬はありませんでしたが、このSGLT2阻害薬は腎機能を回復させるという画期的なクスリと言えるようです。このクスリによって透析を遅らせることができれば、大きな改善が期待できるといえるかもしれません。

うつ病や自閉症は脳で炎症が起きている説

2023-12-24 10:37:16 | 健康・医療
私の周りにはうつ病などの人はいませんので、あまり身近な病気と感じてことはないのですが、研究所の若手がうつ病になったことがあります。

ほとんど接点はなかったのですが、本人はもちろん周りもかなり大変だったようです。ここではうつ病などの疾患が脳の炎症で起こり、免疫と深い関係があるという話しです。

脳神経系と免疫系は全く関係がないと思われがちな2つの生体システムですが、実は深いつながりがあることが分かってきました。ストレスを受けると、主にアドレナリンや副腎皮質ホルモンによって免疫細胞は抑制を受けます。

逆に免疫が脳神経系の病気に大きな影響を与えることも分かってきました。脳神経の病気としては大きく分けると、うつ病や自閉スペクトラム症、統合失調症などの精神疾患と、アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患があります。

そのどちらにも免疫が関与していることが次第に分かってきています。神経変性疾患は、様々な要因で神経細胞が死ぬために起こります。異常タンパク質の蓄積や神経細胞死に伴って炎症が起きます。これは体の他の組織で細胞が死ぬことによって炎症が起きるのと同じです。

脳以外の体の組織では、マクロファージが炎症に関わっていますが、脳ではミクログリアと呼ばれる細胞が大量に存在し、老廃物や死んだ細胞の処理にあたると同時に炎症を起こします。うつ病などの精神疾患の原因として「炎症仮説」が提唱されています。

これは炎症性サイトカインやインターフェロンが精神疾患患者の血液や脳脊髄液で増加していることなどから示唆されています。またインターロイキン6は、統合失調症や自閉症スペクトラム症を含む神経発達症群に関与する脳の領域に影響を与える可能性があることが示されています。

赤血球をつくる造血因子であるエリスロポエチンというサイトカインには神経保護作用、神経再生作用があり、うつ状態を改善することも報告されています。ミクログリアは、脳内の免疫担当細胞として知られています。

胎児期に脳内に住みついたマクロファージの前駆細胞に由来し、原則的に脳の外のマクロファージとは入れ替わらないとされています。つまり脳内で自己複製する、寿命の長い細胞です。

このように炎症・免疫と神経・精神疾患に深い関係があることが明らかにされつつあり、今後「脳神経と免疫系」は極めて重要な研究領域になると考えられています。

若干分かり難い文章になってしまいましたが、脳の疾患を免疫細胞で治療できる可能性なども出てきており、新たな治療法の開発が可能になるのかもしれません。

喫煙者がタバコを吸える場所はどこなのか

2023-12-23 10:31:06 | 煙草
先日東京の赤坂でギター仲間の早めの忘年会がありました。会場の店は数年前にもやったことはあるのですが、念のため地図を印刷してきました。

地下鉄を出てからたぶんこの方向と歩いて、地図を確認しようかと思っているところに前からS君が歩いてきました。集合時間の30分前に店に行ったところ、準備中という事で入れなかったようです。

実は私は店に入る前に喫煙したかったので、喫煙所も探していました。S君も一緒に探してくれたのですが、飲食店の入り口に灰皿があるところを見つけ、ここなら良さそうという事で一服しながらいろいろ話していました。

こうしたよく知らない都会に出てきたとき、どこで喫煙するかは大きな問題です。喫煙率が下がってきて受動喫煙を防ぐための法律も改正され、タバコを吸える場所が本当に少なくなっています。路上喫煙禁止の地域も多く、新幹線も2024年春から全面禁煙となるようです。

たとえば大阪市は、万博開催のため路上喫煙を全面禁止すると発表しています。そのため民間の喫煙所に補助金を出し、大阪市指定の喫煙所を増やすとしています。この喫煙所整備の方針についても、数や設置場所、設置費用について様々な意見が出ています。

行政としては、喫煙者が一定数いる以上、喫煙場所を提供せざるを得ないという判断のようですが、喫煙所を増やせば問題は解決するのでしょうか。政府が株の3分の1以上を持っているタバコ会社は、政府によって守られている存在ですので、喫煙はいわば政府公認の権利です。

喫煙者としては高いタバコ税を払っているのだから、タバコを吸える場所ぐらい用意してくれても良いのではという感じもします。喫煙所は完全に密閉されていない限り、タバコの煙は必ず外に出てきます。そのため喫煙所を作っても受動喫煙の害はなくすことは難しいとしています。

喫煙所を設置する理由として、タバコの吸い殻のポイ捨てを減らせるのではないかという事もあります。このポイ捨てに関しては、喫煙者のマナーの問題ですが、なかなか難しいのかもしれません。

私は歩きタバコはしませんが、たまに駐車場などで吸うことがあり、その際は排水溝の孔などに捨てていますが、これもある種のポイ捨てになりそうです。

米国の大学生喫煙者(7532人)を対象にした調査研究によると、喫煙者の大多数が定期的に吸い殻をポイ捨てしていることが分かりました。その理由としては、タバコの吸い殻に対する否定的な態度、つまり吸い殻を処理するのが面倒だという気持ちでした。

こういった問題はあるものの、やはり適度な間隔で喫煙所の設置は勧めて欲しいものです。

めまいや難聴が起こるメニエール病

2023-12-22 10:32:28 | 健康・医療
テニススクールに行くと、開始前にストレッチとして片足で膝をかかえたり、つま先をもって後ろに引き上げる運動をしますが、最近この運動が苦手になってきました。

どうも平衡感覚が低下し、片足で立っていることが難しくなってきたようです。耳には音を聞き取る以外に、体の平衡感覚を保つ働きもあります。ストレスや過労が原因でこの両方に支障が生じ、立っていられないようなめまいと難聴が起こる病気が「メニエール病」です。

私の友人も車を運転している最中にひどいめまいに襲われ、自損事故を起こしてしまいましたが、突発性でありその後は起きていないと言っていました。メニエール病は一般的に、耳鳴りや耳の閉塞感の他、ぐるぐると目が回るようなめまいを繰り返します。

めまいは突然起きしばらくすると治まり、めまいの発作は10分程度から数時間で、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。頻度は週に数回程度から、年に数回程度までと個人差があります。初期のめまいは寝ているしかできないほど重いケースが多いようです。

繰り返すうちに症状が軽くなる人もいますが、慢性期になると発作が出ていない時もふらついたり、耳鳴りや難聴が出たりします。再発しやすいのが特徴で、再発を繰り返すうちに進行し、聴力の低下を招きます。

始めは低い音が聞こえにくくなり、慢性化すると高い音も聞き取りづらくなります。耳の奥にある内耳には、1.音を電気信号に変換して脳に伝える、2.体の平衡感覚を保つ、という二つの機能があります。

メニエール病は、内耳の中のリンパ液が増え過ぎて水ぶくれができ、内耳の機能に支障が生じることで起きます。国内の患者数は5万人前後と推計されています。似た病気に突発性難聴がありますが、めまいや難聴を繰り返すことはありません。

診断では聴力検査の他、眼球の運動検査、平衡機能検査などを行います。MRI検査で内耳の腫れを確認することもあります。治療はまず体への負担が小さい方法を試みます。十分な睡眠や適度な有酸素運動を心掛け、生活習慣を見直します。

まためまいや内耳の腫れを抑えるため、抗めまい剤や利尿剤などを投与します。それでも改善しない場合の治療法として2018年に公的医療保険の対象になった「中耳加圧療法」があります。耳鼻科やめまいの専門医を受診したうえで、専用の医療機器を借りて自宅で行います。

こういった治療法はあるようですが、めまいへの対処は難しい気がします。普通突発性ですので、いつ起きるか分からずその防止のために薬を飲むのも抵抗があります。重要なとき(車の運転中など)に起きないことを祈るしかないのかもしれません。