塩野七生さんは、以前『ローマ人の物語』で挫折して以来どうも苦手な作家のひとりでした。
古代ローマ帝国は如何にして誕生し、そして滅びてしまったのかを描いた膨大な読み物は
只のイタリア好きミーハーKimitsukuには、かなり荷が重すぎたってことでしょう。
その後は、息子アントニオ・シモーネとの対談『ローマで語る』を読んだくらいで
「敬して遠ざける」状態でしたが、今回ふと手に取ってみた『想いの軌跡』
イタリア滞在歴ウン十年の歴史作家が、1975年から2012年にかけて書いたエッセイです。
冒頭の「グーグルアースで観た地中海はホンモノではない」という文章で
此のエッセイ集の方向性が想像できました。
とにかく痛快で明晰で小気味よい短文が並んでいます。
『ローマ人の物語』誕生秘話から、交遊録、ライフスタイル、祖国への想い‥などなど
ゆっくりじっくり腰を据えて読みたい一冊です。
同じようにイタリアを愛した須賀敦子さんとは、また一味違う
知性豊かな日本女性の、超パワフルな生き方に魅了されます。
恐らく長い闘いになる自粛生活を、優しく慰めてくれることでしょう。