6月 20日

　　　　　　　　　　　　　　（　　今年竹・若竹　　）




伸びきつて風と遊べる今年竹　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



若竹やいよよつやめく能登瓦 　　　　　　　　　　　　　中村静江



暗みより天へ抜けたり今年竹 　　　　　　　　　　　　　滝沢伊代次



今年竹如庵の空にさやぎをり　　　　　　　　　　　　　　倉田信子



若竹の藪の暗さにまだ馴れず 　　　　　　　　　　　　　片山由美子



ぬきん出て庫裏の空掃く今年竹　　　　　　　　　　　　　井沢陽子



夕風や雀出入りの今年竹　　　　　　　　　　　　　　　　中山ユキ



わが伏屋若竹一本貫けり　　　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一

6月 19日

　　　　　　　　　　　　　　　　　（　　烏瓜の花　　）




烏瓜の花よ鵜の巣の三番子　　　　　　　　　　　　　細見綾子



烏瓜咲ききはまつてもつれなし 　　　　　　　　　　　深見けん二



烏瓜今宵咲かんとうすみどり　　　　　　　　　　　　　金原峰子



咲ききつて夜目にも白し烏瓜　　　　　　　　　　　　　坪野洋子



花閉ぢて真綿のごとし烏瓜　　　　　　　　　　　　　　下里美恵子



花見せてゆめのけしきや烏瓜 　　　　　　　　　　　　　阿波野青畝






花街の灯りに咲けり烏瓜　　　　　　　こころ



　　

6月 18日

　　　　　　　　　　　（　　苔の花　　）




苔の花見下ろす寺の奥座敷　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



石垣にいまも銃眼苔の花　　　　　　　　　　　　　　　中村圭作



狛犬の台座もろとも苔の花　　　　　　　　　　　　　　小野寺順子



師を恋ふて無名庵まで苔の花　　　　　　　　　　　 栗田せつ子



鐘楼も茅葺の屋根苔の花　　　　　　　　　　　　　 武藤光晴



仏ともただの石とも苔の花　　　　　　　　　　　　　　　森本林生



夫恋ふる式部の歌碑や苔の花　　　　　　　　　　　　　　大澤渓美



虚子眠る曼陀羅やぐら苔の花 　　　　　　　　　　　　　鈴木英子

6月 17日

　　　　　　　　　　　　　　　（　　南瓜の花・花南瓜　　）




花南瓜農夫に読まれ本白し 　　　　　　　　　　　　　秋元不死男



咲き初めて雄花ばかりや花南瓜 　　　　　　　　　　　河本遊子



神の田へ蔓伸ばしたり花南瓜　　　　　　　　　　　　　篠田法子



授粉せり南瓜の花を広げつつ　　　　　　　　　　　　　藤田岳人



母の鍬いつも戸口に花南瓜 　　　　　　　　　　　　　　伍賀稚子



人影なきフクシマの地に花南瓜　　　　　　　　　　　　近藤文子



稲藁を敷かれ南瓜の花盛り　　　　　　　　　　　　　　市原美幸



見捨てられ雨の南瓜の花小さし 　　　　　　　　　　　　菖蒲あや



砂を這ふ南瓜の花に島の雨 　　　　　　　　　　　　　　今井千鶴子

6月 15日

　　　　　　　　　　　　　　　　（　　青柿　　）






本棚に青柿二つ子規祀る　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



青柿や秘仏小さき円通寺 　　　　　　　　　　　　　　加藤三七子



青柿のげんこつほどが落ちてゐし 　　　　　　　　　　佐藤和枝



柿青し分教場に紙芝居　　　　　　　　　　　　　　　　岸本典子



青柿や石垣粗き山の家　　　　　　　　　　　　　　　　橋本紀子



青柿の落ちて転がる陶干場　　　　　　　　　　　　　　関根近子



青柿や鈴屋旧居ほの暗し 　　　　　　　　　　　　　　山田みづえ



青柿に陶器の固さありにけり　　　　　　　　　　　　　河原地英武

6月 14日

　　　　　　　　　　　　　（　　蝸牛・でで虫・でんでん虫　　）




古寺の紅殻壁にかたつむり　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



山頭火句碑に角出すかたつむり　　　　　　　　　　　　下里美恵子



蝸牛雨の郵便局が混み 　　　　　　　　　　　　　　　　宮津昭彦



ゆふやけに夕日が溶けて蝸牛 　　　　　　　　　　　　　岡本 眸



かたつむり一揆の塚を這ひ上る　　　　　　　　　　　　国枝洋子



でで虫の背伸びしてゐる小糠雨　　　　　　　　　　　　八尋樹炎



でで虫の登りつめたる道標　　　　　　　　　　　　　　武田稜子



妻の疲れ蝸牛はみな葉の裏に 　　　　　　　　　　　　　沢木欣一

6月 13日

　　　　　　　　　　　　　　　　（　　薔薇　　）



バラ園のホースの水を天に放つ　　　　　　　　　　　　　　栗田やすし



薔薇剪るや深きところに鋏入れ 　　　　　　　　　　　　　　島谷征良



ベンチ去る女のあとに薔薇の風　　　　　　　　　　　　　　　梅田　葵



薔薇園やアーチの下の小休止 　　　　　　　　　　　　　　　和久津フミヱ



仏間にも薔薇活け母へ香を分つ　　　　　　　　　　　　　　　桜井節子



アンネの像囲みアンネの薔薇香る 　　　　　　　　　　　　　　坂田悦子



背を曲げて古寺の路傍の薔薇を嗅ぐ　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一



夕風や白薔薇の花皆動く 　　　　　　　　　　　　　　　　　　正岡子規



☆　　　バラの雨恩師傘寿のたんじょう日　　　　　　　　　　こころ


　おめでとうございます。ご健康とますますのご活躍をお祈りしています

6月 12日

　　　　　　　　　　　　　　（　　昼顔・鼓子花・容花　　）




昼顔の野原横切り貰ひ乳　　　　　　　　　　　　　　　　細見綾子



昼顔や捨てらるるまで櫂痩せて 　　　　　　　　　　　　　福永 耕二



昼顔や川ひろがりて京の果 　　　　　　　　　　　　　　　長谷川櫂



昼顔のゆるりとからむ箒の柄 　　　　　　　　　　　　　　中嶋秀子



昼顔の風が漉しゆく関所跡 　　　　　　　　　　　　　　　桶脇康治



ひるがおの虹色砂上夢しかと　　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一

6月 11日

　　　　　　　　　　　　　　　（　　柘榴の花・花柘榴　　）





妻の筆ますらをぶりや花柘榴　　　　　　　　　　　　　沢木欣一



花柘榴の花の点鐘恵山寺 　　　　　　　　　　　　　　　金子兜太



墓碑銘はアリョーシャと読め花柘榴 　　　　　　　　　　西村和子



ざくろ濃く咲く築城の石切り場　　　　　　　　　　　　　岸本典子



子のあらばつけたき名あり花柘榴 　　　　　　　　　　　片山由美子



下宿屋の暗き階段花ざくろ　　　　　　　　　　　　　　　関根切子



花柘榴受けし告知を淡々と 　　　　　　　　　　　　　　　塙 義子
　　

6月 10日

　　　　　　　　　　（　　十薬・どくだみ　　）





盲ひの鵜十薬の辺にうづくまる　　　　　　　　　栗田やすし



十薬の花ひつぱつて蜘蛛の絲 　　　　　　　　　　星野立子



どくだみを千切りて犬の傷ぬぐふ　　　　　　　　上杉美保子



十薬の花の十字や流人墓 　　　　　　　　　　　　村上喜代子



十薬の花敷きつめて泣き羅漢 　　　　　　　　　　橋本榮治



十薬の花も詰めこむごみ袋 　　　　　　　　　　　横山 房子



どくだみや朝日とどかぬ屋敷神　　　　　　　　　　菊池佳子



十薬を軒に吊して駐在所 　　　　　　　　　　　　内田芝石