12月 1日

2019-11-30 12:41:12 | Weblog
                  十二月



     武蔵野は青空がよし十二月          細見綾子


     植木屋の妻の訃知りぬ十二月         沢木欣一


     竹割つて鵜籠つくろふ十二月         栗田やすし


     白目剥く達磨の列や十二月          河原地英武


     田にそそぐ水の一縷や十二月         下里美恵子


     藍甕の泡のきらめく十二月          福田邦子


     先生ともんじや焼食ぶ十二月         国枝洋子


     鎌錆びて軒に転がる十二月          武藤光晴


     靖國の大樹見てゐる十二月          伊藤範子


     駅頭に募金の僧侶十二月           小柳津民子


     朝市に研ぎ屋来てゐる十二月         篠田法子


     わが杖の音に順ふ十二月           中川幸子


     雑踏の中の一人や十二月           山 たけし



          



     削るほど紅さす板や十二月           能村登四郎


     凌渫船杭つかみ出す十二月           秋元不死男


     十二月医者に持薬のあることも         飯田龍太


     踊り子と終の電車の十二月           清水基吉


     尼の荷のまことにちさき十二月         黒田杏子


     路地歩く癖はなほらず十二月          谷口桂子



     
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11月 30日

2019-11-29 13:08:57 | Weblog
                 柊の花・ひひらぎの花・花柊



     柊の花を見し目や眼帯す           細見綾子


     赤子見に花柊の路地ぬくる          武田稜子


     花柊ポンプに注ぐ誘ひ水           武藤光晴


     柊の花一枝挿し第九聴く           谷口千賀子


     ひひらぎの香れる朝子は母に         若山智子


     花柊匂ふ如安庵の躙り口           角田勝代


     風凪ぎて柊の香の漂へり           加藤雅子


     柊の花こぼれ継ぐ窯場径           幸村志保美


     花柊術後の息をそつと吸ふ          金原峰子




          



     父とありし日の短かさよ花柊          野澤節子


     柊の花も蕾も銀の粒              橋爪巨籟


     車椅子寄せてつみ折る柊の花          野村喜舟


     花柊だれもが風の強さいふ           鍵和田釉子


     柊散る障子越しなる尼の声           吉野義子


     花柊こころ誰にも覗かせず           山田瑞子




          
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11月 29日

2019-11-28 14:38:53 | Weblog
                藪巻・菰巻・菰巻く・竹巻



     東京の名園、六義園で見かけた菰巻き、菰巻きはマツカレハなどの害虫から守るために、
     松の幹に藁でできた菰を巻きつける。啓蟄にこの菰を越冬した虫とともにはずす
     のが恒例になっているようです 写真の菰巻きには結び目に縄で飾りがしてありました
     また藪巻きとも呼ばれ躑躅や桜の若木をぐるぐる巻きにされている物もあります
     菰巻き・藪巻きは冬の、菰はずしは春の季語になっています



     菰巻かれ三河黒松獣めく        下里美恵子


     藪巻や飾り結びの一と並び       平松公代


     腰高に菰巻く松や皇居前        内藤雅子


     菰巻くや亀甲荒き松の幹        小田二三枝


     木賊にも藪巻したる陸奥の寺      近藤文子


     菰巻の結ひしばかりの縄匂ふ      内田陽子


     菰を巻く仕上げの縄の花むすび      こころ



          



     藪巻や晴を見にゆく日本海       森 澄雄


     菰巻のまだ新しき勿来関        伊藤伊那男


     菩提寺の藪巻の裾濡れてゐる      佐藤鬼房


     菰巻の桜花束吉野駅          茨木和生


     藪巻を覗きたる鼻濡れにけり      大石悦子


     菰巻の桜花束吉野駅          茨木和生
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11月 28日

2019-11-27 13:07:04 | Weblog
                枯蟷螂・蟷螂枯る



     手を合はせ行き所なき枯蟷螂        細見綾子


     疑えば卓の蟷螂褐色に           沢木欣一


     枯れてゆく蟷螂すがる指の先        栗田せつ子


     荒壁に夕日浴びゐる枯蟷螂         掛布光子


     蟷螂の枯れて日向に仁王立ち        伊藤旅遊


     つまみあぐ枯蟷螂のみどりの目       武山愛子


     蟷螂の青き腹見せ果てにけり        神谷 尚


     暮れてなほ窓を離れぬ枯蟷螂        平松公代


     枯れきつて蟷螂の目の赤み増す       足立サキ子


     枯蟷螂俳聖殿に斧かざす          林 尉江


     枯蟷螂ふるれば斧をふり上ぐる       垣内玲子



          



     枯蟷螂落ちても構ふ石の上          山口草堂


     蟷螂の枯れゆく脚をねぶりをり        角川源義


     一条のみどり残れる枯蟷螂          横山房子


     灯ともせば夜毎灯に寄る枯蟷螂        吉野義子


     枯蟷螂日のある方へ動き出す         守谷順子


     枯色も攻めの迷彩枯蟷螂           的野 雄
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11月 27日

2019-11-26 13:22:03 | Weblog
                枯蓮・蓮の骨・枯はちす



     暖かき枯蓮の色日暮れても            沢木欣一


     夫婦住む平穏小池蓮枯らし            細見綾子


     鰻田につづく蓮田の枯れ尽くす          栗田やすし


     夕ぐれの風吹けば鳴る蓮の骨           下里美恵子


     山積みの蓮の骨焚く輪中村            国枝隆生


     蓮枯れて水面の空の細切れに           伊藤範子


     枯はちす音符のやうな影ゆるる          小澤明子


     風に鳴る音の乾けり枯蓮             河村恵光  


     放生池くの字に曲る蓮の骨            廣島幸子


     病み臥して聞く枯蓮の折るる音          森 靖子


     城堀に枯れ初めにけり蓮の骨           大平敏子


     枯蓮田この静けさの身に及ぶ           鈴木みや子



          



     枯蓮のうごく時きてみなうごく          西東三鬼


     蓮枯るる弁才天は燭あまた            山口青邨


     氷るには美しかりし蓮の骨            吉田鴻司


     薬師寺や破れぬまゝに蓮枯るゝ          松藤夏山


     蓮枯れて晴れのむら雲姫路城           飯田蛇笏
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11月 26日

2019-11-25 13:44:56 | Weblog
                日向ぼっこ・日向ぼこ



     耳遠くなりしと母の日向ぼこ         栗田やすし


     クッキーのかけらが膝に日向ぼこ       梅田 葵


     榾を焚く煙まとひて日向ぼこ         上杉和雄


     棒切れを咥え新鵜の日向ぼこ         倉田信子


     繕ひの針の手休め日向ぼこ          太田滋子


     掃除夫の日向ぼこする能舞台         松原和嗣


     みどり児に頬撫でられて日向ぼこ       横井正子


     日向ぼこ母の小さき背をさすり        垣内玲子


     働きし海見て海女の日向ぼこ         森田とみ


     百歳の姉の愚痴聞く日向ぼこ         森 妙子


     日向ぼこ思ひ出話尽きぬ婆          上杉美保子


     縁側に母いつもゐて日向ぼこ         伊藤貴美子



          



     だんだんに人でなくなる日向ぼこ       奥坂まや


     うしろにも眼がある教師日向ぼこ       森田峠


     みどり子の足先ぴんと日向ぼこ        今井千鶴子


     欲ばりな嫗いつまで日向ぼこ         黒田杏子      


     ここに母居たらと思ふ日向ぼこ        下村常子


     日向ぼこ頬杖といふ杖もあり         村越化石
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11月 25日

2019-11-24 14:40:27 | Weblog
                白菜・山東菜・山東白菜



     白菜の尻つややかに積まれあり       下里美恵子


     括られて白菜影を濃くしたり        夏目悦江


     四つ割りの白菜山の日に並べ        中村たか


     白菜の尻を朝日に並べ干す         国枝洋子


     白菜を供へ明かるき飛鳥仏         沢田充子


     大白菜ばさつと割りて縁に干す       青山美佐子


     白菜を着けこむ庭や湖見ゆる        福田邦子


     白菜の四ツ割干せる陣地跡         二村満里子


     色褪せて白菜畑にころがれり        佐藤きぬ



          



     白菜の山に身を入れ目で数ふ        中村汀女


     真二つに白菜を割る夕日の中        福田甲子雄


     鍋煮立つしゆんと白菜放り込む       星野椿


     灯の洩れるあかるさ拾ひ白菜売       中山純子


     白菜を離島の如く採り残す         能村研三




          



     ☆ 11月25日は 作家 三島由紀夫の忌日 憂国忌・三島忌 没後 49年になります


     陵前に踏む散紅葉憂国忌          伊丹三樹彦


     三島忌や造花の薔薇に棘のあり       内田美紗


     いてふ散る御幸通りや憂国忌        武藤光晴


     市ヶ谷に正午のラッパ憂国忌        鈴木みすず


     憂国忌冬の金魚のみじろがず         こころ
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11月 24日

2019-11-23 13:35:12 | Weblog
                水鳥・浮寝鳥・鴨



     尻向けて水鳥のみな無防備に        栗田やすし


     地を歩くときの楽しさ鴨の顔        沢木欣一


     鴨射ちの下げたる鴨の目は見ざり      細見綾子


     水鳥が宙で捕へしパンの耳         河原地英武


     行く雲の影と流るゝ浮寝鳥         梅田 葵


     鴨の陣ひとつが抜けて崩れける       丹羽康碩


     いつときの鴨の騒ぎや夕川面        武藤光晴


     荒波にしやくられづめの浮寝鳥       矢野孝子


     鴨の水尾湖中句碑まで及びけり       若山智子


     賀茂川の夕日かきまぜ鴨遊ぶ        武田稜子


     はばたいて浮寝鳥とはまだなれず      鈴木みや子


     百の鴨翔たせて湖の乱反射         熊澤和代


     鴨睦む玉のしぶきを日に散らし       上村龍子


     嶺映す水面乱せり鴨の陣          藤田岳人



          



     大琵琶の八十の浦なる浮寝鳥        鈴鹿野風呂


     その夢も薄墨いろか浮寝鳥         鍵和田釉子


     上空に使はぬ空気浮寝鳥          正木ゆう子


     鴨鳴くは湖近きこと霧の中         山口青邨


     番ひ鴨遠くはとばずまた浮寝        下村梅子


     浮寝鳥橋の下まで夕日さす         角川春樹




          
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11月 23日 

2019-11-22 13:11:51 | Weblog
                一葉忌・樋口一葉の忌日



     小説家・歌人として明治期に活躍した樋口一葉(1872~1896)の忌日
     母と妹を養いながら小説家として立つ決意をし、半井桃水の指導を受けながら、
     『闇桜』『たま襷』『別れ霜』『五月雨』などの小説を執筆した。
     『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』など今も読み継がれる作品や多くの和歌を残している。
     本名 奈津 24歳8か月の短い生涯でした。 写真は台東区竜泉にある一葉記念館



     荷札小さき古本届く一葉忌            栗田やすし


     一葉忌暗き三和土のしみ抜き屋          矢野孝子


     百円で甘酒飲めり一葉忌             栗田せつ子


     竹筒に禿びたる小筆一葉忌            佐藤とみお


     水仙のやはらかに伸ぶ一葉忌           鈴木みすず


     本郷の古書店のぞく一葉忌            牧 敬子


     路地裏を子猫横切れり一葉忌           鈴木真理子


     衿替の絹糸弾く一葉忌              尾関佳子


     短めの鉛筆並べ一葉忌              長崎眞由美


     一葉忌針を持つこと遠ざかり           小原米子


     売薬の薬入れ替ふ一葉忌             荻野文子


     一葉忌出さずじまひの恋の文           幸村志保美


     一葉忌母にまだある糸切り歯            こころ



          

          文京区本郷菊坂にある『一葉井戸』


     一葉忌折目を六ツに薬包紙            秋元不死男


     頼まれし妻の足袋買ふ一葉忌           福永耕二


     廻されて電球ともる一葉忌            鷹羽狩行


     惜しまれて消ゆる銭湯一葉忌           吉田京子


     霧の香のなかの菊の香一葉忌           飯田龍太




          
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11月 22日 

2019-11-21 13:59:53 | Weblog
                冬木・冬木立・冬木宿・冬木道



     巣箱一つ子規の小庭の冬木立         栗田やすし


     乳牛をつなげば高し桐冬木          細見綾子


     武蔵野の雀と親し冬柏            沢木欣一


     落日に犬の遠吠え冬木立           中山敏彦


     いつまでも見ゆる葬列冬木立         矢野孝子


     発掘の礎石転がる冬木立           河合義和


     冬木立野仏の顔粗削り            加藤ノブ子


     サックスの音色抜け来る冬木立        藤本いく子


     冬木立透かして青き尾張富士         橋元信子


     板壁に冬木の影や版画館           奥山ひろ子


     三日月の尖り鋭し冬木立           渋谷さと江


     下校の子石蹴つてゆく冬木道         小原米子


     和紙めける月をかざせり冬木立        井沢陽子



          



     歳月の獄忘れめや冬木の瘤          秋元不死男


     触れし手のゆき処なし冬木立         谷口桂子


     煌と過ぐけものの影や冬木立         鷲谷七菜子


     わが凭れる冬木ぞ空の真中指す        八木絵馬


     堕ろし来て妻が小さし冬木立         吉田鴻司




          
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