4月 1日

2020-03-31 13:45:22 | Weblog
                      四月馬鹿・エイプリルフール・万愚節


     病院の帰りカツ買ふ四月馬鹿           沢木欣一


     四月馬鹿一日古書を入れ替ふる          栗田やすし


     礼状がわび状となる四月馬鹿           国枝隆生


     万愚節妻の返事が母の声             中山敏彦


     家計簿の帳尻合はす四月馬鹿           岡島溢愛


     母の夢つづきが見たし四月馬鹿          太田滋子


     四月馬鹿監視カメラへ投げキッス         中野一灯


     代名詞ばかりの会話万愚節            青木紫水


     四月馬鹿豆をのせたき付け睫毛          龍野初心


     百円で売る全集や四月馬鹿            坂本操子


     エイプリルフール一億円の使い道         ころころ



          



     唇のうすき女や四月馬鹿             入船亭扇橋


     みごもりしことはまことか四月馬鹿        安住敦


     万愚節踊る埴輪は口ひらく            鍵和田釉子


     建替へに二度の引越し四月馬鹿          毛塚静枝


     笑ひたるあとの涙や四月馬鹿           下村梅子


     箱に箱すつぽりと入る万愚節           能村研三



          


     西東 三鬼(さいとう さんき)の忌日 1900年(明治33年)5月15日 - 1962年(昭和37年)4月1日


     広島や卵食ふ時口ひらく
     水枕ガバリと寒い海がある
     露人ワシコフ叫びて石榴打ち落
     中年や遠くみのれる夜の桃
     おそるべき君等の乳房夏来る
     モナリザに仮死いつまでもこがね虫
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3月 31日

2020-03-30 15:27:25 | Weblog
                      猩々袴


     石をもて猩々袴掘り出せり            茨木和生


     猩々袴のをさなきが咲き茂吉歌碑         清水弓月


     奥美濃の山路に猩々袴かな            中山敏彦



          

            アネモネ

     アネモネの飄々と伸びまだ散らず         細見綾子


     アネモネや太き眉毛は母譲り           大島知津


     アネモネの花の陰より白き足           有馬朗人



          

            一人静


     一人静咲きいで旅のこときまる          水原秋櫻子


     一人静揺れ咲く母の生家跡            中根多子


     一人静ひるの鶏鳴かすれたり           鍵和田釉子



          

            明日葉


     芹よりも明日葉匂ひ売られけり          石塚友二


     明日葉や鱗飛び散る外流し            丸山節子


     明日葉の根を張る岬風あらし           安藤幸子


     明日葉へこぼして飲めり釣瓶水          山本悦子



          

            黄心樹(をがたま)の花


     黄心樹の花のほころぶ神鼓かな          紅林みのる


     をがたまの雨に香れり古窯跡           上田博子


     黄心樹の一樹の月に神遊び            小原菁々子


     をがたまの匂ひ輪蔵まはるたび          ころころ
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3月 30日

2020-03-29 13:18:03 | Weblog
                      桜草・乙女桜


     桜草買ふ干拓地巡り来て             栗田やすし


     入院の荷物小さし桜草              下里美恵子


     さくら草一葉井戸の錆袋             佐藤とみお


     ベランダに母咲かせたり桜草           小島千鶴


     婚の荷の着く庭桜草あふれ            久野和子


     介護士のやさしき問ひやさくら草         清水聡子


     桜草咲きて日差しの柔らかし           天野アイ子


     漁師町小さき茶房に桜草             白鳥光江



          



     桜草の野に東京の遥かかな            富安風生


     雨音に心ゆるべば桜草              中村汀女


     桜草咲いてむかしの暴れ川            松本泰二


     夜の部屋に日向の色の桜草            片山由美子


     放課後の兎当番桜草               竹川貢代


     花びらにかくるる蕾桜草             倉田紘文



          
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3月 29日

2020-03-28 13:34:57 | Weblog
                      苧環・いとくり草


     高野なるをだまきの花内深し           細見綾子


     苧環や櫛形山の頂に               夏目隆夫


     をだまきに風そよと過ぐ御室道          桜井節子


     苧環や子に始まりし親離れ            矢口由起枝



          

            フリージア・香雪蘭


     フリージア色を深めてしぼみけり         夏目悦江


     参観日教師の卓にフリージア           林 尉江


     フリージア受話器を置きし時匂ふ         西村和子



          

            花韮・韮の花


     韮咲けり牡丹散りたるあとの庭          細見綾子


     花にらや夕どき冷ゆる膝頭            金原峰子


     怠けては墓場をあるく韮の花           秋元不死男


     花韮の並び伏したる雨上り            深見けん二



          

            クロッカス


     クロッカス地上一寸渡米家族           細見綾子


     不揃ひの校歌聞こゆるクロッカス         小原米子


     子が植ゑて水やり過ぎのクロッカス        稲畑汀子


     大地割れ彩の出でしはクロッカス         小路智壽子



          

            三椏の花・三椏咲く・花三椏・結香の花


     春愁や三椏の花匂はざる             細見綾子


     三椏のあはあは咲いて影の濃し          牧野一古


     三椏の花に叶ひぬ曼珠院             星野麥丘人


     三椏の一つ二つが花紅く             山本悠水
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3月 28日

2020-03-27 13:04:24 | Weblog
                       勿忘草・わするな草


     忘れな草濃きもえぞ地と思ふかな         細見綾子


     子は遠し勿忘草は海の色             栗田せつ子


     勿忘草庭に色濃く咲きにけり           近藤文子


     勿忘草いよいよ口を閉ぢて病む          石田波郷



          

            二輪草


     膝折ればわれも優しや二輪草           草間時彦


     つぎはぎの長き木橋や二輪草           国枝洋子


     二輪草かがめば近く水の音            栗生晴夫


     源流やさざなみだてる二輪草           野澤節子



          

           スイートピー


     スイートピーとその名ノオトに書きにけり     細見綾子


     スイートピー抱へ米寿の母見舞ふ         栗田やすし


     スイートピー回覧板に添へられて         安藤幸子


     眉描いて女給ら貧しスヰートピー         富安風生



          

           ヒヤシンス


     ざら紙に包んでもらふヒヤシンス         河原地英武


     不揃ひに咲きのぼりたるヒヤシンス        矢野愛乃


     ヒヤシンス獣のやうに夜は届き          櫂未知子


     遺失物係の窓のヒヤシンス            夏井いつき



          

           都忘れ・野春菊


     蕾はや人恋ふ都忘れかな             倉田紘文


     日溜りの都忘れや比丘尼寺            武藤光晴


     教へ子の来る日よ都忘れ買ふ           辻 恵美子
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3月 27日

2020-03-26 14:24:47 | Weblog
                     卒業・卒業式・卒業子・卒業歌


     外套の裾ほころびて卒業す              栗田やすし


     卒業の金髪少女日本の名               沢木欣一


     卒業の子が黒々と睫毛塗る              河原地英武


     受話器より大人びし声卒業す             矢野愛乃


     記念樹の細きを植ゑて卒業す             小栁津民子


     先生とジャンプでタッチ卒園児            中斎ゆうこ


     卒業式体育教師大泣きす               服部達哉


     ランドセル何度も撫でて卒業す            工藤ナツ子


     雲流る卒業証書筒に古り               小長哲郎


     男子らも雑巾縫つて卒業す              安藤幸子


     卒業歌をとめらの帯胸高に              三井あきを


     笑顔よき少女となりて卒業す             長江克江


     泣き虫の声変はりして卒業す             岡部幸子


     髪堅く結び娘は卒業す                大島千津




          



     鉛筆で指す海青し卒業歌               寺山修司


     潦あれば日があり卒業す               秋元不死男


     声変りしきらぬこゑの卒業歌             三村純也


     太陽ヘボールを蹴つて卒業す             片山由美子


     卒業やモンペの並ぶ古写真              大塚とめ子


     卒業の歩幅に母は追ひつけず             今瀬剛一



          
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3月 26日

2020-03-25 16:41:28 | Weblog
                    枝垂桜・糸桜・紅枝垂・しだり桜 桜その4



     杉間より流るる枝垂桜かな          沢木欣一


     高麗の里枝垂桜が紅潮す           細見綾子


     二胡の音に枝垂れ桜の揺れやまず       横井美音


     枝垂れたる桜に触れし車椅子         河井久子


     つくばひに枝垂桜の枝浸す          青木信子



          



     まさをなる空より枝垂桜かな         富安風生


     枝垂桜垂れて疎水の水にまで         山口誓子


     日がさして影添ふ枝垂桜かな         西村和子


     枝垂桜地に触るる枝は舞ふごとし       古賀まり子


     見るほどに枝垂桜の老いて艶         深見けん二




          


     
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3月 25日

2020-03-24 12:56:37 | Weblog
                    山桜・吉野桜・八重桜・遅桜  桜その3


     遍路笠脱ぎて仰げり山桜             沢木欣一


     浄瑠璃寺牡丹桜の雨もよひ            細見綾子


     木の鈴を買ふ四分咲きの山桜           栗田やすし


     ぽつてりと角屋(すみや)の庭の八重桜      河原地英武


     トンネルを抜けてトンネル山桜          平松公代


     山桜後円墳を包みをり              澤田正子


     登り来て風の蔵王や遅桜             金田義子


     老いたれば老いと集ひて八重桜          武藤光晴


     山桜ここは太古の海の底             大谷みどり


     暮れなずむ彦根古城や遅桜            水鳥悦枝


     ホスピスの窓辺重たき八重桜           中野一灯


     農蚕校名残の庭の遅桜              ころころ



          



     男童も女童も羅漢山桜              山口青邨


     山桜奥千本の迷い道               白石みずき


     八重櫻遍路も脚を投げ出して           森澄雄


     ゆきずりの思ひ尾を曳く八重桜          上田五千石 


     七つ滝七つに照りて山ざくら           能村登四郎


     傘をうつ牡丹桜の雫かな             杉田久女




          


     


     
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3月 24日

2020-03-23 14:24:07 | Weblog
                    桜 その2


     スカイツリー江戸の桜を見下ろしに        栗田やすし


     乱世にあらずや桜白過ぎる            沢木欣一


     相会ふも桜の下よ言葉なし            細見綾子


     夜気吸つて桜重たくなりにけり          河原地英武


     島桜咲き初む風葬ありし村            下里美恵子


     遅桜田毎の水のひかり合ふ            梅田 葵


     医学部の桜しろじろ暮れ残る           谷口千賀子


     人と行き人と離るる桜かな            山 たけし


     花魁の打掛け並ぶさくらどき           中川幸子


     千年の幹の凸凹夕桜               さとうあきこ


     老桜や屋敷跡なる瓦塀              武藤光晴


     夜桜に五重の塔のまぎれなし           井沢陽子


     寺町に寺の託児所桜咲く             ころころ




           



     焚きあげの火の神祀る朝桜            文挾夫佐恵


     泥つけて鶏歩きゐる桜かな            岸本尚毅


     思ふまま歩きたき夜の桜かな           渡辺桂子


     一切を桜のせゐにしてしまふ           夏井いつき


     桜さくら各駅停車して桜             津田清子


     見かぎりし古郷の桜咲きにけり          小林一茶


     さまざまの事思ひ出す桜かな           松尾芭蕉
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3月 23日

2020-03-22 19:08:51 | Weblog
                    花・花埃・花明かり・花見・花衣・花筵


     花の山ふもとに八十八の母        沢木欣一


     繭倉の裾を流れて花の水         細見綾子


     朝靄に前山けぶる花の宿         栗田やすし


     ラケットの破れ繕ふ花の雨        河原地英武


     足湯して眠気兆せり花の昼        国枝隆生


     花疲れ柱に凭れ足袋を脱ぐ        矢野孝子


     寝そべつて土の湿りの花筵        関根切子


     新聞紙拡げ二人の花見席         岸本典子


     廃校となりし母校や花の雨        太田滋子


     西行の老いの木像花あかり        清水弓月


     花疲れ読まずにしまふ凶みくじ      中斎ゆうこ


     ぬり絵する母の真顔や花の雨       山本光江


     花あかり子規が仮寓の山本や       ころころ



          



     花どきの一週間は一と昔          今井干鶴子


     女との会話汗ばみ花過ぎ          滝 春一


     会ひに来ていま花時よ蜜柑島        石川桂郎


     花どきの窓開け忘れ閉ぢ忘れ        橋本榮治


     花時の猫の足拭く因果かな         長谷川双魚 




          
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