４月 １日

　　　　　　　　　　　（　初桜・初花　）


一花よりみなぎる力初桜 　　　　　　　　　　　稲畑汀子


いちにちのはじまる冷えの初桜 　　　　　　　　岡本眸


初花の水にうつらふほどもなき 　　　　　　　　日野草城


初花の夕べは己にほの白く 　　　　　　　　　　高野素十


ゆるむとも咲くとも風の初桜 　　　　　　　　　深見けん二

３月 ３１日

　　　　　　　　　　　　　　　（　辛夷　）


すぐ晴れん空疑はぬ辛夷かな 　　　　　　　　　　　　阿波野青畝


真白に行手うづめて山辛夷 　　　　　　　　　　　　　高野素十


一辨のはらりと解けし辛夷かな 　　　　　　　　　　　富安風生


一山に一樹のみある夕辛夷 　　　　　　　　　　　　　能村登四郎

　
幣辛夷


少女期の真蒼な顔幣辛夷 　　　　　　　　　　　　　　川崎展宏

３月 ３０日

　　　　　　　　　　　　（　木五倍子・きぶしの花　）


雨の日の木五倍子の花のうすみどり 　　　　　　　　　鳥居みさを


きらめきて木五倍子の花の金簪 　　　　　　　　　　　三浦 郁


谷かけて木五倍子の花の擦れ咲 　　　　　　　　　　　飯島晴子


木五倍子咲く地図には載らぬ道祖神 　　　　　　　　　北澤瑞史

３月 ２９日

　　　　　　　　　　　　　　（　蒲公英・鼓草　）


蒲公英や石垣匂ふ海のふち 　　　　　　　　　　　　沢木欣一


蒲公英や空より戻る観覧車 　　　　　　　　　　　　佐藤幸子


児の眠り終着にして朝霧蒲公英 　　　　　　　　　　高野ムツオ


夕方の空の肌いろ鼓草 　　　　　　　　　　　　　　山西雅子


遠景の野に失ひし鼓草 　　　　　　　　　　　　　　稲畑汀子

白花蒲公英


うずら葉蒲公英


関東蒲公英

３月 ２８日

　　　　　　　　　　　　　（　翁草　）


銀冠の軸の青さよ翁草 　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


花も葉も産毛のうちに翁草 　　　　　　　　　　　片山由美子


翁草手になだらかな山の景 　　　　　　　　　　　石原八束


翁草咲き上空のがらんどう 　　　　　　　　　　　菅原鬨也


翁草銀の絮かな祭笛 　　　　　　　　　　　　　　飯田龍太

３月 ２７日

　　　　　　　　　　　（　アケビの花・通草　）


先端は空にをどりて通草咲く 　　　　　　　　　　　林徹


花通草蔵王こけしの丹がやさし 　　　　　　　　　　皆川盤水


藁屋根は農園民宿通草咲く 　　　　　　　　　　　　穂坂日出子


山椒魚出でて通草の花ざかり 　　　　　　　　　　　橋爪巨籍

３月 ２６日

　　　　　　　　　　　（　踊子草・踊花・踊草　）


おへんろの通り過ぎたる踊子草 　　　　　　　　　　今井千鶴子


踊子草咲きむらがれる坊の庭 　　　　　　　　　　　山口青邨


露坐仏をかこみて咲きぬ踊子草 　　　　　　　　　　西島静歩


踊花金比羅小屋に歌舞伎来る　　　　　　　　　　　　渡辺恭子


散りゆくも躍るさまなる踊り草　　　　　　　　　　　石井青歩

姫踊子草

3月 25日

　　　　　　　　　　　（　連翹・いたちぐさ　）

連翹や焼杭を打つ宇治の院 　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


連翹や蛭ケ小島は石ばかり 　　　　　　　　　　　　　林 徹


雨の中連翹の黄の流れだす 　　　　　　　　　　　　　長谷川 櫂


童画展連翹の黄がここに撥ね 　　　　　　　　　　　　福永耕二


いかるがの暮色連翹のみ昏れず 　　　　　　　　　　　和田悟朗

３月 ２４日

　　　　　　　　　　（　樒の花・花樒　）

花樒風ざうざうと湖の寺 　　　　　　　　　　　　　皆川盤水


人の世に咲きて樒の花かすか 　　　　　　　　　　　高木石子


石段にこぼれこぼれて花樒 　　　　　　　　　　　　小沼伸子


山門を入るより匂ふ花樒 　　　　　　　　　　　　　東 容子

菊咲きいちげ


　独り言　

どの子にも涼しく風の吹く日かな　　　　　　飯田龍太

震災で母を探す少女の映像が目に焼き付いて離れない、この一句を見たときに胸が締め付け
られる思いがした。
福島の原発から避難した子供達にも、一日も早く平穏な風が行き渡ることを祈る

３月 ２３日

　　　　　　　　　　　（　ヒヤシンス・風信子・夜香蘭　）

むらさきの砂の流れや風信子 　　　　　　　　　　小菅佳子


墨の香も孫に磨らせつ風信子 　　　　　　　　　　瀧井孝作


水にじむごとく夜が来てヒヤシンス 　　　　　　　岡本 眸


ヒヤシンス高きを渡る風に和す 　　　　　　　　　有馬朗人


ヒヤシンス窓にかがやく沖の雲 　　　　　　　　　中村 信一