6月 1日

2020-05-31 18:24:14 | Weblog
                      更衣・衣替え


      更衣して水色のシャツ着たし           細見綾子


     脱ぎ捨てゝ冥途姿へ更衣             沢木欣一


     父の書く職歴長し更衣              河原地英武


     更衣マネキン一糸纏はざる            岸本典子


     ポケットの砂を叩きて更衣            奥山ひろ子


     独り居を頑固に通し更衣             上田博子


     形見なる服捨てられず更衣            安藤幸子


     更衣母の手擦れの桐箪笥             久野和子


     野良着にも好みを通す更衣            内田陽子


     女生徒の声の明るし更衣             加藤元通


     更衣して浮世絵の前にたつ            加藤都代


     警官の腕に入墨更衣               若林美智子



          



      衣更へて肘のさびしき二三日           福永耕二


     六十漢早寝早起更衣               黒田杏子


     ちんどん屋通るが見えて更衣           藤田あけ烏


     公園の掃除女の更衣               鈴鹿野風呂


     まだ少し残る恙や更衣              高野素十


     勢ひ書く返信二三ころもがへ           岡本眸


     銀座ママ老いも若きも更衣            鈴木真砂女




          
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5月 31日

2020-05-30 13:23:29 | Weblog
                        蝸牛・でで虫・でんでん虫・かたつむり


     妻の疲れ蝸牛はみな葉の裏に         沢木欣一


     かたつむり婚十年の二階住み         栗田やすし


     医務室の曇りガラスに蝸牛          河原地英武


     山頭火句碑に角出すかたつむり        下里美恵子


     かたつむり一揆の塚を這ひ上る        国枝洋子


     でで虫の登りつめたる道標          武田稜子


     蝸牛ころりと落つる晴れつづき        小原米子


     でで虫が角出す秋篠窯の木戸         小島千鶴


     肉伸ばしきりて雨中の蝸牛          櫻井幹郎


     身を屈め児が捕まへるかたつむり       藤吉 博


     かたつむり新聞受に首伸ばす         関根近子



          



     かたつむり甲斐も信濃も雨のなか       飯田龍太


     ででむしやダムに長居の袋雲         秋元不死男


     一つ葉に一つのあるじ蝸牛          阿波野青畝


     牧に降る雨は明るし蝸牛           嶋田一歩


     呼び馴れて女淡しや蝸牛           藤田湘子


     でんでん虫汝が祖文明開化派か        後藤綾子



          



          
          


     
     
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5月 30日

2020-05-29 14:02:16 | Weblog
                       紫陽花・四葩・七変化


     寺町が晩学の宿濃紫陽花             栗田やすし


     あぢさゐや逢はばすずしくもの言はむ       細見綾子


     紫陽花の原種苗買ふ朝の市            丹羽康碩


     父の供花少し小振りの濃あぢさゐ         岸本典子


     鎌倉の山あぢさゐの瑠璃きざす          福田邦子


     虚子庵の名残の四葩藍淡し            小島千鶴


     紫陽花や町家にパッチワーク展          市原美幸


     濃あぢさゐ男子生れしと声はづむ         不破志づゑ


     紫陽花に触れて石仏巡りかな           藤本いく子


     白紫陽花幼き毬は薄みどり            巽 恵津子


     あぢさゐの色を重ねし雨上り           清水聡子


     あぢさゐや仏足石に水溜り            渡辺協子


     門川に鯉飼ふくらし濃あぢさゐ          角田勝代




          

            まいこあじさい(舞妓紫陽花)

          

            うずあじさい (渦紫陽花)



     子の渦に保母ひとりづつ濃紫陽花         福永耕二


     七変化はじまる白は毬なさず           吉年虹二


     あぢさゐや夢にはいつも医師の父         水原 春郎


     紫陽花や別れて来たる言一句           石田波郷


     ふるへつつゼリーが皿に濃紫陽花         福田蓼汀


     紫陽花を抱いて持ち込む守衛室          廣瀬直人



          

            かしわばあじさい(柏葉紫陽花)
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5月 29日

2020-05-28 12:58:48 | Weblog
                        夏帽子・麦藁帽子・パナマ帽・日除帽


      夏帽子こめかみ深く旅出ずる           沢木欣一


     旅みやげ久留米絣の夏帽子            細見綾子


     夏帽子触れあふ内緒話かな            河原地英武


     夏帽を濡らして伊豆の雨あがる          栗田せつ子


     旅立ちの麦藁帽を浅かむり            丹羽康碩


     自転車の尼僧の黒き夏帽子            市原美幸


     大道芸投銭受くるパナマ帽            益田しげる


     生簀箱手繰る女の日除帽             舩橋 良


     新しき麦藁帽に風の音              山田悦三


     敬老手帳使ひ始めや夏帽子            塩坂惠子


     網棚に取り残されし夏帽子            渡辺慢房


     夏帽子被りなほして富士仰ぐ           ころころ



          



      夏帽といはずいつでもベレー帽           吉田鴻司


     オリーブの銀緑叢中夏帽子             福永耕二


     わが夏帽どこまで転べども故郷           寺山修司


     「丹頂チック」の香の失せてゆく夏帽子       櫂未知子


     パナマ帽かぶり一見好々爺             鷹羽狩行


     夏帽子リボンを派手に阿弥陀かな          星野立子


     そばかすのある娘の似合ふ夏帽子          牛尾美恵子




          


     
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5月 28日

2020-05-27 13:20:59 | Weblog
                       楝の花・花楝・栴檀の花


     吉野川青き流れの花楝              細見綾子


     栴檀の匂ひ満ちたる毛利墓所           上杉和雄


     花楝雲とどまれば色深む             梅田 葵


     でこぼこの溶岩に降り継ぐ花楝          角田勝代


     青空にまぎるる淡さ花樗             清水弓月


     車椅子押す手に零る花あふち           熊澤和代


     肩組める予科練像や花楝             岩上登代


     湧水の流るる大社花楝              野島秀子


     雨やんで楝の花のけぶりをり           牧 啓子




          



     樗咲き空は深さをうしなひぬ           福永耕二


     かつて世にありしやさしさ花樗          森 澄雄


     樗咲き敢て甘ゆる姉娘              林 翔


     花樗霧吹く如き盛りかな             西村和子


     ひろがりて雲もむらさき花樗           古賀まり子


     中学のソプラノ揃ふ花栴檀            長村雄作


     花樗あふげば雲にまぎれけり           片山由美子




          


     
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5月 27日

2020-05-26 13:59:46 | Weblog
                         蛍袋・釣鐘草・提灯花


     一とむらの雨の雫の螢袋             細見綾子


     手洗ひに蛍袋の花の影              清水弓月


     螢袋かすかに揺れぬ何かゐる           田畑 龍


     魚釣りし辺りや螢袋咲く             中村たか


     野面積隙間に蛍袋かな              高橋幸子




          



     四五本のほたるぶくろが村境           藤田湘子


     釣鐘草降りぬかれたるさまにかな         清崎敏郎


     蛍袋は愁ひの花か上向かず            鈴木真砂女


     釣鐘草まつしろの鐘雨に揺れ           福田蓼汀


     ながあめの晴間ほたるぶくろは袋干す       山口青邨



          



     箱根山はるかにのぞみ麦茶のむ          細見綾子


     円空の像観る冷えし麦茶飲み           栗田やすし


     ボヘミアングラスに麦茶透き通る         中村あきら


     からくりの童子麦湯を運び来る          伊藤旅遊


     虫封じ終へたる巫女が麦茶のむ          片山浮葉


     下校の子喉を鳴らして麦茶飲む          熊谷タマ




          



     どちらかと云へば麦茶の有難く          稲畑汀子


     句会して居るが何より麦茶冷え          星野立子


     合宿の薬罐汗かく麦茶冷ゆ            篠田悦子


     麦茶のむ芭蕉の宿に着きしころ          平井照敏 


     よき音の氷を浮かべ麦茶かな           長谷川櫂
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5月 26日

2020-05-25 13:57:14 | Weblog
                         麦の秋・麦秋


     赤富士の胸乳ゆたかに麦の秋           沢木欣一


     麦秋へ浅草発の朝電車              細見綾子


     迷路なす地下墓地を出て麦の秋          栗田やすし


     麦秋や指に紫紺のインク染み           河原地英武


     麦秋や河より低き治水の碑            国枝隆生


     抱きしめて赤子の古道麦の秋           矢野孝子


     手拍子で賛美歌謳ふ麦の秋            鈴木みすず


     麦秋や別れのあとの風の音            岸本典子


     武蔵野の土の温みや麦の秋            森垣一成


     火薬庫に火のつきさうな麦の秋          鈴木みや子


     人恋ふる龍笛の音や麦の秋            丹羽一橋


     残照に映ゆる大利根麦の秋            伊藤旅遊




          



     すぐそことずつと遠くが麦の秋          加倉井秋を


     上空が渦巻いており麦の秋            五島高資


     気管支を痛める恋や麦の秋            寺井谷子


     麦秋の櫂を濡らしてもどりたる          夏井いつき


     水甕の水のうまさも麦の秋            福永耕二


     麦秋の黄をこめ灯る崖の上            吉田鴻司




          


     


     
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5月 25日

2020-05-24 14:42:23 | Weblog
                        山法師の花・やまぼうし・山帽子


     朝鳥に花ちりばめつ山法師            水原秋櫻子


     霧深く恥らふごとく山法師            菖蒲あや


     朝の日を集めて清し山帽子            武田稜子


     暮れてなほ径に明るし山法師           千葉ゆう




          



     宝鐸草雑草園の藪の中              山口青邨


     けものみち狐の提灯花つけし           飴山實


     山の辺に狐の提灯綾子亡し            国枝隆生


     坪庭に狐の提灯大井宿              山下智子




         



     溝に咲き海芋は垣の内ならず           富安風生


     ブラインドの縞の影あり花海芋          長谷川櫂


     一日経て一日古りたる海芋かな          渡辺慢房


     海芋咲く灯台守の官舎跡             幸村志保美




          



     花とべら志賀島けふ波たかき           飴山 實


     海鳴をレクイエムとし花海桐           水原 春郎


     断崖に砕ける波や花海桐             横井美音


     魚臭き島の夕暮れ花海桐             ころころ
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5月 24日

2020-05-23 13:31:02 | Weblog
                        朴の花・朴散華・厚朴の花・ほほがしは


      朴咲くや津軽の空のいぶし銀           沢木欣一


     朴の花山気をほしいままの白           細見綾子


     散華てふ哀しき言葉朴の花            栗田やすし


     山襞は雲湧くところ朴の花            武田稜子


     背に日を受くる観音朴の花            武藤光晴   


     裏木曽の谷筋深し朴の花             河合義和


     傘閉ぢて見上ぐる空に朴の花           大島智津


     無住寺となりて久しや朴ひらく          桜井節子


     杖借りて目指す頂上朴の花            服部鏡子


     登城坂ぬけて明るし朴の花            渡辺かずゑ


     浮雲を追ふ浮雲や朴の花             小原米子


     そこはかと山家に匂ふ朴の花           石原けい彩



          



      朴咲くや谺のごとく雲殖えて           福永耕二


     明るさが水の始まり朴の花            今瀬剛一


     朴の花菩薩の如く宵月夜             阿波野青畝


     朴の花かなしきときは遠くを見て         津田清子


     朴の花軽く狂ひて旅したし            茨木和生


     一花づつ揺れやむ朴や夕きざす          鷲谷七菜子



          
     
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5月 23日

2020-05-22 14:10:27 | Weblog
                         花栗・栗の花


      花栗の香にまみれたる別れかな          栗田やすし


     赤ん坊に少年の相栗の花             沢木欣一


     栗の花咲きそむ白き紐垂れて           細見綾子


     川ふたつ落ち合ふところ栗の花          下里美恵子


     根尾谷の横ずれ断層栗の花            上杉和雄


     微かなる夜汽車の響き栗の花           渡辺慢房


     花栗の匂ふ丸子の無縁墓             中村修一郎


     夜風やゝ湿りて来たり栗の花           梅田 葵


     外湯まで闇に匂へり栗の花            平松公代


     咲き満ちて花火のごとし栗の花          矢野愛乃


     俯いて擦れ違ふ子や栗の花            兼松 秀


     野仏や花栗匂ふ小布施みち            漆畑一枝



          



      母屋から運ぶ夕餉や栗の花            杉田久女


     岨道や匂へば仰ぎ栗の花             高浜年尾


     花栗に寄りしばかりに香にまみる         橋本多佳子


     栗の花脚の長さは尚ほ仔馬            中村草田男


     栗咲いて林のはづれ撓みたり           水原秋櫻子


     昼火事の向ふの栗の花ざかり           飯田龍太




          
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