( 蝉の殻・空蝉 )
裏返る蝉のなきがら蝉時雨 蓬田紀枝子
芭蕉糸こはくに透けて島の蝉 細見綾子
たれかれのうわさ過ぎゆく蝉の殻 小池万里子
空蝉のいづれも力抜かずゐる 阿部みどり女
空蝉の一太刀浴びし背中かな 野見山朱鳥
( 蓮・蜂巣 )
♪ 開いた開いた なんの花が 開いた 蓮華の花が 開いた ♪
俳句を始めるまで れんげ は れんげ草のことだと思っていました
蓮の花咲きゆく真珠いろの空 柴田白葉女
てのひらに蓮の紅玉つゝみたし 沢木欣一
蓮の花ひとりになる日考へず 木野愛子
☆ 昨日は隅田川の花火 子供の頃には自宅の物干場から仕掛け
花火の端っこぐらいは見えていたほど高い建物が有りませんでした
その頃の隅田川はまだ汚れもひどく、油と下水の匂いのする川でした
通っていた、二葉小学校は明治38年国民学校として創立以来103年の
歴史の中にも震災、戦災など二度にわたって焼失しています
その校歌にも「宮居の東 鴎飛ぶ 隅田の流れ 近くして・・・♪」
両国中学校の校歌にも「都鳥鳴く 隅田川・・・♪」
江戸開幕以来近住の人達には生活の川が隅田川です
亡き祖母(明治8年生まれ)に聞いた話によれば、震災、戦災の火事の
炎から逃れてきた人達が一月あまりも隅田川に流木のように流れて
いたそうです。下町は木造二階屋が軒並みでその上細い路地
一度火災が起きれば大きな被害を出してきたところです
その復興の力が花火や祭りを盛り上げてきたことは間違いありません
いまでこそ深川・本所・向島はその情緒を美しく紹介されていますが
私にとってはその頃の景色がいつも蘇っています
莫大小工場ばかりの町の星祭り
末っ子の甘え上手や夏燕
ラムネ飲む何度も玉を響かせて
蚊遣り豚風よく走る腹の中
あやされている間も眠し天瓜粉
子の寝言花火の続きらしきかな
( 花火 )
大輪の花火の中の遠花火 野澤節子
花火上るはじめの音は静かなり 星野立子
手花火にうかぶさみしき顔ばかり 岡本眸
花火屑おしろい花に掃き寄せて 細見綾子
路地ごとに隅田川ある祭町 深川正一郎