9月30日

2008-09-30 01:11:24 | Weblog

     ( 九月尽 )

 

少年の商才かなし九月尽        楠本憲吉

 

雨降れば暮るる速さよ九月尽      杉田久女

 

ガラス器を磨きてしまふ九月尽      種市清子

 

まが雨の降りもつづきて九月尽      佐藤鬼房

 

  ・・ 写真 高麗巾着田の曼珠沙華 ・・

 

          曼珠沙華火の色波に巾着田 

 

この巾着田に何万本もの曼珠沙華がいっせいに花開く世界は分かっていても

一種異様を呈している。息苦しくなるほど赤という色に責められている。

巾着田に入ると花を見るというより花に見られている、そんな感じだろう

その中に見つけた白花の曼珠沙華に安堵の息を吐く。

責めたてられる赤色の波に咲く一株は焦点となり,回りの景色が見えてきた

そうなると白という色を中心にまさに涅槃のような想像がうまれる

曼珠沙華から仏はいかにもの付き過ぎだろうが詠まざるをえない

 

         白一株釈迦の如くに曼珠沙華


 




 

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月29日

2008-09-29 00:08:31 | Weblog

      ( 石榴の実 )

 

露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す      西東三鬼

 

石榴の実吸ふやたかだか四十年       辻桃子

 

石榴裂け吾が中に濃き鬼子母神       野見山ひふみ

 

昨日寸前今日また寸前熟れ石榴        林 翔



    ( 実石榴のどの面ざしも印象派    ころころ )

 

 ☆ 調べについて (俳句創作の世界・2章・平井照敏)

調和のとれたひびき

音楽の三つの要素はリズム、メロディーと和音だといわれます。

メロディーにあたるものは、俳句では何になるでしょうか。俳句は短いので

メロディーとよべるようなものを作り出す長さは有りませんが、しいて言えば

調べがそれにあたるのではないかと思います。和音はいくつかの音の調和の

とれた響きですから、季語のところでも触れてきたことがそれにあたるとも

言えましょう。そのほか句の言葉のもつ母音、子音の響きあいの美しさの

ことも考えられます。言葉の音色の調和ということですが、しかし、一句は一つの

有機体ですから、リズムも音色も、互いに助け合って、一句の調べを生み出す

のに役立っているはずです。私が何年か俳句を熱心に学び、かなり上達した

時に,師の加藤楸邨は「君がこれから考えなくてはならないのは,調べの問題

だ」と示唆されました。調べが俳句の高度な段階であることがわかります。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月28日

2008-09-28 00:42:27 | Weblog

     ( ジンジャー )

 

ジンジャーの香夢覚めて妻在らざりき      石田波郷

 

聖書読む寡婦ジンジャーの香の中に      中屋敷 晴子

 

ジンジャーの白極まりて香を高む         平岡喜美子


コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月27日

2008-09-27 06:51:09 | Weblog

       ( 花野 )

 

大花野ときどき雲の影に入り      加藤瑠璃子

 

雲ふるるばかりの花野志賀の奥    細見 綾子

 

花野来て夜は純白の夜具の中      岡本眸

 

大変な仕事も一段落、昨日今日と自由行動(というかサボり)

昨日は日高の巾着田へ彼岸花(曼珠沙華)の群生を見に行きました

想像していた以上にすごい景色に息が詰まるほどで、一株の白咲きに

救われるようでした。


         曼珠沙華群れ咲きうねる巾着田

   

巾着田へ向かう一角にコスモス畑(今日の写真)

まさに花野を満喫しました。 少しの風が尚更良かった

 

         声あげて童返りの大花野

 

この一角には蓮田も有り、コスモスの摘み取りは一本10円、蓮は5本で

200円だったと思います。昨日のお羽黒蜻蛉はその蓮田に注ぐ小流れ

私がじっと見ていると後ろからおばあちゃんの声が・・・・

「おはぐろは水が好きなんだよねぇ」   なるほど 幾種類の蜻蛉が

飛び交う中でお羽黒だけは水際すれすれに飛んでいました

 

          水音を離れぬ羽黒とんぼかな

 

さてさて、今日は向島百花園へ・・・

向島百花園では八月に虫の音を聞く会、九月には観月の会が開かれます

今日はお茶の会が盛大に執り行われていました。

私は萩のトンネルを思い出し急遽参じました。思ったとおり今が萩の盛り

句を授かるべく何度もくぐって見ましたが・・・・駄目でした

 

         たもとほる萩のトンネル百花園

 

こんな週末を過ごしました

 

 

 

 

 




 

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月26日

2008-09-26 16:51:16 | Weblog

      ( 羽黒蜻蛉 )

 

おはぐろ蜻蛉とんで羅漢の笑まひ顔     橋本榮治

 

川蜻蛉木深き水のいそぎをり         能村登四郎

 

おはぐろ蜻蛉連れて保津川下りかな      水原春郎


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月25日

2008-09-25 18:35:41 | Weblog

      ( 茶の花 )

 

侘の茶の寂の茶の花咲きにけり     後藤比奈夫

 

茶の花や鵜の目は水を湛へたる      殿村菟絲子

 

茶の花や門のみ残る屋敷跡         高浜虚子

 

茶の花にほのとゆくての夕がすみ      飯田龍太

 

 

      真実感合を措いて道なし     加藤楸邨

 

把握と表現が一枚になるためには真実感合という態度に徹する外ないと

私は考えている。自然を把握するにも、用意された美的趣味など捨てて

一念凝って自然に立ち向かわなくてはならないと思う

俳句用の眼鏡などはずしてしまって、自分そのもので立ち向かうのである

そして、そこにあらわれる、自然そのものの真実に感合しなくては

ならない。

 

  ( 栗田靖著 現代俳句考  先達の言葉より )


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月24日

2008-09-24 21:02:22 | Weblog

      ( 藤袴 )

 

藤袴手に満ちたれど友来ずも     橋本多佳子

 

藤袴ゆれれば色を見失ふ       山下美典

 

藤袴にもひとこゑや山鴉        藤田湘子

 

   

     朽木は彫るべからず    富安風生


  柱から庭木へ縄や土用干し

富安風生はこの句を取り上げて「見たままありのままにが叙してあるが、

ただごと過ぎて趣が乏しく、詰まらない」「一口に言えば事実に詩がない」

とし、この句を否とした。

全ての事実が詩材たり得るわけではない。朽木は彫るべからず。

写生ということを穿き違えて、俗眼俗耳に入り来るところの現象そのものに

何らの取捨選択を施すことなく、自己の上層の坩堝で陶冶を加ふることなく

据えられた写真機が種板に物を撮しとるように、外物をただ十七文字の

形の中にはめ込んだといふだけでは詩にならない

 (栗田靖 著 現代俳句考 先達の言葉より)

 



 


 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月23日

2008-09-23 19:47:23 | Weblog

      (藪枯らし・貧乏蔓)

 

うぶすなに残る臍の緒藪枯らし      山内遊糸

 

藪枯らし売地の札の古りにけり       栗山妙子

 

大藪に容れられたりし藪枯らし      相生垣瓜人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月22日

2008-09-22 17:45:20 | Weblog

        ( 紅花襤褸菊・べにばなぼろぎく )

 

地の罅によべの雨滲む秋彼岸      岡本眸

 

秋彼岸濯ぎ慣れたる川瀬あり       友岡子郷

 

かみそりのひやりと置かる秋彼岸     小松栄子


 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月21日

2008-09-21 01:02:42 | Weblog

      ( 案山子 )

 

夕空のなごみわたれる案山子かな      富安風生

 

モジリアニの女の顔の案山子かな      阿波野青畝

 

出征旗まきつけ案山子立ち腐れ        沢木欣一

 

遠山も風の案山子も伊賀のうち        桂 信子


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする