さすがに着物を着て歩いている人がいない
気温は高いけど(今日は26度)風がさわやかで着物を着て歩くに丁度いい
今日は生まれて初めて「曳舟」という町に降りた
若葉を渡ってくる風が気持ちよく目的地まで少しあるのだが小さい公園の中を歩くことにした
スカイツリーが見える
「ああそうなんだそういう町なのねここは、それにしても高いなあ」と見とれていると三輪車に乗った小さな男の子が
「足元見ないと危ないよ」
と注意してくれる
「はっははハイありがとう」
「おばちゃんの着ているものな――に」
「き・も・のよ」
「キモノ?ふーん、かっこいいよ」
「そうありがとう、うれしいわ」
そこへ母親が走って戻ってきた
「ママおばちゃんかっこいい」
「そうねママもきもの持ってるのよ今度着ようかな」
「えええーママいついつ?」
子供にせかされ母親は嬉しそうチャ子ちゃん先生の着物を触って
「めずらしい着物ですね見たことないです」
と子供を中にして目的地まで着物談義、母親が着物を触ると生意気にもボクちゃんも小さな手で触る
「ダメダメ汚してはダメ」
「大丈夫よお顔に着けると気持ちいいでしょう?」
「うん」
絹はこんなに気持ちいいのよ、お子さんは直感でわかるんでしょうね
「絹って取り扱いがむつかしいのでついつい着物を着ないのです」
「それはもったいない」
と絹のすごさをあれこれおしゃべりして目的地まで、ボクちゃんは二人の話にずっと耳を傾けている
別れ際ママにこれなさってと絹のマスクをプレゼントした(常に替えを持って歩いている)
「えっ」
と返そうとするママの手から素早くマスクとりあげたボクちゃん、早速自分のほっぺにマスクの布を当てて
「ママ気持ちいいよ」
と大喜び
電車に乗っても街を歩いても小さな子供たちは必ず着物を着た女性に目線を送っている。チャ子ちゃん先生はそういう御子達に会うと必ず声をかける。赤ちゃんは嬉しそうにキャッキャと手足をバタバタさせて喜びを表してくる
所用が終わっての帰りも4歳ぐらいの女の子が道端でぐずっていた
「どうしたの?」
と座ってお話を始めたら黙って着物を触ってきた
「すみません」
と母親が子供の手を払いのけたけど、その小さな手をひらひらさせてニコニコ笑いながら「ばいばい」
子供は自分が気持ちのいいものが直感でわかる
こういう子供たちの未来を私たちはもっと真剣に考えなければ曳舟から船漕ぎながら新宿に戻った