「先生〜!辞書に載ってません!」
たまにこういった言葉をかけられることがあります。
今年度から教科書が変わり、今までは高校で習っていたような単語の数も増え、中学生用の辞書だと載っていない、そんなことも稀にですがあります。
このときも、そんなことが理由かなと思っていたのですが…
声のした席に行ってみると、使っているのは電子辞書。しかも高校生が使うような辞典が内蔵されたもの。
「これに載ってないわけないよなあ」
と思いながら生徒さんと画面を覗き込むこと数秒。ちゃんと載っているではありませんか!
では、なんで生徒さんは見つけられなかったのか。
実はただ単に下にスクロールをしていなかっただけなんですね。
見えている部分だけを見て「載っていない」という判断をした、そういうことになります。
電子辞書は便利で使い勝手が良いものですが、紙の辞書に比べると一覧性がないのがデメリットですね。
もちろん、ただ単に使い慣れればいいだけの話ですが、慣れていないとこんなことがあるんだなあと、そのときはなんだか感心?してしまいました。
いま実際に生徒さんを教えていて思うことは、視野の狭い生徒さんが増えてきたなあということです。
先ほどの電子辞書の話もそうですが、問題文をよく読んでいなくてバツということも、残念ながらよくある話です。
最後まで問題文を読まずに解答したり、単位を間違えたり、早合点して解き始めて答えにたどり着けなかったり…いろんな例があります。
この仕事を始めて30年、昔から"よく読んでいない人"はいるにはいましたが、最近はそれが学力に関係なく、とみに顕著になってきたように思います。
スマートフォンなどの普及で一文が短くなり、"ぱっと見た範囲で全部"という勘違いをしている、そんなふうにも見えます。
デジタル化が進み一文が短くなってきた結果、"視野に入る部分だけが全て"、そんなふうに思ってしまっている人が増えたのかなあとも思います。
ちょっと下にスクロールしたり、ちょっと視点を変えて読んでみたり、ちょっと視野を広げてみたりするだけで、"見えないものが見えて"きます。
その見えないものを見なかったがゆえに損をする人が増えてきているのは、本当にもったいないことだと思います。
統計を取ったわけではないので、あくまで私の個人的な感想ですが、なんとなくそういう感じの生徒さんが増えてきているように思えてなりません。
見える世界を見ていくこと、まずはそれが大切なことは言うまでもありません。しかし、その一歩先にある見えない世界を見ようとする力がないと、物事の本質にはたどり着けないような気がします。
見えないものを見ようとする力、これからはそういう力を育てていくことも念頭に指導をしていきたい、そんなふうに思います。