泡がおいしさを演出 今から六十七年前の夏、ビ-ルの泡を不当に多くして暴利を得て いると、ビァホ-ルを訴えた人がいました。三年かかって出た結 論は「泡もビ-ルのうち」と、ビァホ-ルが勝利しました。このとき、 当時の醸造学の権威、坂口謹一郎博士の鑑定書には「ビ-ルの 泡はいらない」とおっしゃる方もいますが、泡は炭酸ガスを逃げる のを防ぎ、ビ-ルのおいしさを保ってくれています。大手ビ-ル メ-カ-が推奨する「2度つぎ」「3度つぎ」という注ぎ方は、最初 に勢いよくビ-ルを注ぐことにより、泡に苦みや雑味の成分が吸 着し、ビ-ルの味をまろやかにしてくれる効果があります。試しに 泡が立たないように注いで飲むと、舌にピリピリとしたガスの刺激 と苦みがあっておいしく感じません。しかし、この注ぎ方は一般的 によく飲まれているビルスナ-スタイルのビ-ルには向いていま すが、地ビ-ルの場合には少し違います。ボトルや缶の容量に あったグラスを用意して、味や香りが変わらぬよう、そっと注ぎ始め、 泡を立てながら一度で注いでください。泡立ちが非常に良いヴァイ ツェンは、斜めに傾けたグラスの内側に沿って注ぎ始め、徐々にグ ラスを立てて、ビ-ルを注ぎきります。と言っても、なかなか難しい ので、家でいろいろ試してみるのも楽しいでしょう。そのうちにそろ えたくなるグラスの話はこの次です。
夏は食中毒が多くなります。あるいは、夏バテや冷たいものの 食べすぎなど胃腸の調子そのものが低下します。こうゆうときに は下痢が起ります。食べ物は、腸の中で消化作用により、細かく 分解されてから体の中に吸収されます。食物の中に有害な細菌 や毒物などが含まれていると、それを吸収してしまう恐れがあり ます。そこで、食べ物が腸内に到達したときに有害物の存在を察 知し、有毒物質を内容物とともに一気に排除します。これが下痢 です。吸収する前に排除するので、食物の水分や加えられた消 化液も一緒に出て水のような便になります。ですから、下痢は有 毒物質を含んでいるので、出すべきであると考えたほうがいいの です。一方、たくさん食べ過ぎたときにき、腸が食物を処理しきれ ず下痢になります。冷たいものを食べ過ぎたときには冷えで腸の 働きが低下して処理しきれなくなり下痢になります。下痢は病気 の症状として重視されていますが、病気がなくても下痢は起るわ けです。下痢は人に備わった正常の反応なのです。という訳で、 むやみに下痢止めを使うのは、むしろ逆効果で病気を長引かせ、 事態を悪化させる可能性があります。そうは言っても、下痢が 何回も起って便ではなく、透明に近い消化液がそのまま出ている 状態になると、体が水分不足になってしまい危険な状態になるの で、下痢は止めなければなりません。下痢は、止めなければなら ないときと、止めてはいけないときがあります。どうすればよいか、 やはり医者に相談してください。 (とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)