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経済政策に大局観を「浜矩子時事評論」

2007-08-17 13:00:00 | 国際・政治

はま・のりこ同志社大大学教授解説                                              参議院選挙における自民党の敗北は当然の結果だった。安倍政                            権は、バブル崩壊後の「失われた15年」を経て日本経済が直面                             する問題をまったく認識していなかったからだ。そもそも安倍晋三                             首相自身、経済がよく分からず、興味もなかったのではないか。                             最大の敗因は、地域や企業間の格差問題だ。急速に格差が拡大                            したのは、日本企業がグロ-バル競争に突入し、働く人たちや下                            請け企業を切り捨てたせいだ。デフレも企業体質を大きく変えた。                            「小泉・安倍政権の構造改革が格差を生んだ」とよく言われるが、                            それはある意味、過大評価だ。両政権にはそんな大それた実績                             すらない。ところが、安倍政権は妙に自意識過剰になり、格差是正                            のためと称して景気底上げ路線を訴えた。本来は、国が財政出動                            を抑えつつ、効率よく行政サ-ビスの質を上げることが大事だった。                           なのに、公的部門にまで市場原理を導入しようとした。「成長か、                             福祉か」は、先の仏大統領選挙でも焦点となった大きな問題だ。                             国家の存在を否定する経済グロ-バル化の中で、国がやるべきこ                            とは何かを真剣に考えるべきだろう。そもそも、成長や競争は、                              放っておいても民間企業がやる。ところが、財界の意向を受けた                             安倍内閣は、6月の骨太の方針で、締約国間の関税などを撤廃                             する経済連携協定(EPA)を「数、質ともに充実する」と打ち出した。                           協定の相手先としてメキシコ、フィリッピンなど手当たり次第に声を                            かけ、時流に乗り遅れまいと必死だ。

だか゛、EPAは締約国間だけの排他的なものだ。協定の数が増え                            れば複雑になり、協定同士の整合性とれず、逆に身動きできなく                             なる。「自動車を売り込むために欧州連合(EU)との締結を」とか、                            「液晶テレビ輸出のライバル韓国を出し抜きたい」といった企業の                            要望にいちいち応えていけば、大局的な通商政策はできない。                               農産物の自由化につながる日豪団体のEPAには農業団体が強く                            反対しているが、今の政権にはそれを調整する能力も乏しい。                              秋から始まる税制改革論議も、場当たり的な対応になる恐れが                             ある。所得税に依存した今の税体系は限界があり、消費税引き                             上げは基本的に避けられない。安倍政権はそのことを正直に、                              将来展望を持って国民に語るべきだ。いま最も恐れるのは、こうし                            た大局観のない安倍政権が、地方へのばらまき政策に回帰するこ                            とだ。市場主義や競争をあおっておきながら、ばらまき政索へと路                            線を転換するのは危険だ。西側東西統一のドイツでは、旧東側復                            興のため連帯税を賦課された旧西側住民が「働きの悪い東側の犠                           牲になるのか」と反発し、東西間対立が悪化した。そのまま当ては                            まるわけではないが、日本でも対応を誤れば、地域間の感情対立を                           招きかねない。

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