シソは和風ハ-ブの代表格で、薬用植物でもあります。若種子を 塩漬けにした紫蘇子は健胃や痰の鎮静に効果があり、脚気を治 すとされます。食中毒の毒消しとして生魚の「つまもの」にももちい られます。青ジソは大葉とも言い、日本料理に欠かせない食材で、 特にちりめん状の葉は柔らかく喜ばれます。赤ジソは、梅干しに よく使われます。シソの種は休眠期間が六ヶ月もあり、畑で落ちた 種は自然生えとして良く発芽します。発芽後の間引き苗は芽ジソと してパセリなどのように使われます。葉ジソは株の下から順次摘み、 トウガラシとみそのシソ巻きにも利用します。開花し始めると花ジソ、 穂ジソとして、実ジソとは別に塩漬けなど生食で楽しめるほか、貯 蔵薬味にもなり、お汁粉を作るのに大事な一品です。今からでも 室内で栽培が可能です。電照栽培をすると、需要の多い正月から 冬に葉ジソが収穫できます。八月中に深さ十五㌢以上のプランタ- や鉢に種をまきます。種はあらかじめ一昼夜、ガ-ゼで包んでぬる ま湯の中に浸し、明るい場所でバラまきして軽く土を押さえれば、 5日位で発芽します。九月以降、温度は十三度以上に保ちます。 シソは短日植物で秋になると急にトウ立ちしてきます。そこで居間 などに置いて夜は電灯をつけ、冬至に向かって照明時間を延ばし、 最終的に24時間続けると、トウ立ちが抑えられます。追肥として 週に1回、二百五十倍に薄めた液肥を与えると、窓外の雪をよそに 次々と軟らかい新鮮な大葉ができます。 (おかだ・あきら=園芸研究家)
食糧争奪―日本の食が世界から取り 残される日 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2007-07 |
六十六億人を突破した世界人口の圧力によって、人類は食べ物の 争奪戦を始めるのではないか、という恐れに対する、ひとつの回答 である。この不安は、もはや明白な未来図となりつつある。加えて、 BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの諸国が、世界中か ら資源をかき集める高度経済成長期に突入した。猛烈な速度で資 源が消費され、当然のことに、食糧もまた地球規模での需給逼迫 時代へと突き進む。本書は、その現状をグロ-バル化した世界食 糧市場の動向などから解析する。豊かになった中国の食糧消費性 向、減り続ける穀物在庫、遺伝子組み換え作物の可能性、バイオ マス燃料との相関、耕作面積の推移、異常気象と収穫量の影響、 利用可能な水資源などの数値から見えてくる未来図にぞっとさせら れる。
例えば、2006年から07年の、世界のコメ(精米)生産量は四億 千五百三十トン、対して消費量は四億千七百七十トン。豊作とされ る生産量で、すでに不足。が、生産量は1970年代前半の二億トン から倍増している。にもかかわらず、コメの期末在庫率は18・9% で、二十五年来の低水準だという。やはり中国が驚異となる。 十三億人の彼らが肉や卵を食べれば世界の飼料穀物の需給が 逼迫し、トウモロコシなどに代表されるバイオマス燃料との相関に よって、穀物価格を押し上げることになる。食糧自給率40%(カロ リ-換算)の日本は、これまでのように食糧を輸入することができ なくなるだろう。著者は、その処方箋のひとつとして、日本国内では 団塊世代などの就農や、会社法人の、農業への参入を提起し、 その一方でアジア諸国との共同備蓄構想の必要性を指摘する。 食糧を軸としたアジア共同体の構想は困難な道筋であり、国内農 政との調整も容易ではないが、このような構想がなければ、食糧 争奪戦の地獄を迎える。数字に裏打ちされた警告の書である。 (評・橋本 克彦=ノンフィクション作家)