石炭から花のまち
「レモンパイ」(黄色)、「はつゆき」(白)、「ハッ ピ-ヴァレンタイン」(紫色)-。愛らしい名前が 付いた黄色や白のコチョウランが、優雅なカ- ブを描いて揺れる。約四百平方㍍の温室12棟 で約7万株のコチョウランを通年栽培する、赤平 市の赤平花卉園芸振興公社。18~25度に保 たれた温室にいると、厳寒期であることを忘れそ うだ。コチョウランは、花をつけるまで四年半もかかる。全道一の生産
数を誇るどう公社を支えるのは、茎から成長点 を切り取りフラスコの中で苗を育てる人工培養技 術。堀口輝秋社長(64)は「組織培養をすることで 品質が欽一になり、日持ちも良くなる」と話す。 同社の創業は住友赤平炭鉱が閉山した1994年。 前進は炭鉱の廃熱を利用していたバラなどの切り 花栽培だ。基幹産業を失った市が「石炭のまちか ら花のまちに」と、地域振興策の柱に打ち出した。 市内では毎年春に、色とりどりのランを集めた「ら んフェスタ」が開かれ、道内各地から愛好者が集まる。ただ、ランの 市場価格の低迷に灯油代の高騰によるコスト増が重なり、経営環境 は厳しさを増している。堀口社長は言う。「石炭に続き灯油と、私たち はエネルギ-に翻弄され続けているが、町を元気づけ、町民が『ランの 町』に誇りを持つよう、負けずに経営努力したい」。風雪に耐え、春を 待つ気持ちで。