皮膚の血管拡張し調節
風邪などで体温が上がることを「発熱」といいますね。発熱は病原 体の増殖を抑える体の防御反応ですが、あまり高い体温になったり、 発熱の期間が長くなったりすると、体力を消耗して逆に体の抵抗力 を弱めることになります。そこで、解熱剤を使って体温を下げる治療が 必要になります。発熱は、脳の体温調節中枢が目標にしている設定 温度が上がるために起きます。風邪薬などに入っている解熱剤は、 このブロスタグランジンを減らす作用があるので、服用すると設定温 度が通常に戻ります。こうして、戻った設定温度に比べ、体温が高い ことになるので、体温調整中枢は体温を下げるようにと、皮膚の血管 を広げて熱を放出するとともに、発汗をうながすのです。例えば、「風 邪かな」と思ってかぜ薬を飲んで、一眠りするとびっしょりと汗をかい て、熱が冷めたという経験がある人も多いと思います。それはこういう しくみによるのです。ただし解熱剤は、病原体を退治したりはしませ ん。ですから、こうやって熱が冷めて楽になっても、病気はまだ治って いません。熱が冷めても安静が必要なのです。それともう一つ。「汗を かけば風邪が治る」と信じている人が多いようですが、解熱剤などを 使わずに、無理に布団などかぶって汗を出しても熱は冷めません。汗 をかくためにお酒をあおる人もいますが、言語道断です。むしろ汗をか くことで体力の消耗が進みますので、体にはよくありません。やはり、 風邪は無理に暖めないで、十分な休息をとるのが一番なわけです。 (とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)