濃い、薄いは民族の差=當瀬規嗣解説
以前、民族学の専門家のお話を伺う機会があり、日本にはひげの濃い人と、薄い人がいることを知りました。個人差のことではなく、民族的な差であるということです。古くから日本列島に住んでいた縄文系の人たちはひげが濃く、あとから日本列島に渡来した弥生系の人たちはひげが薄いのだそうです。縄文系の人とは、わが北海道のアイヌ民族系の方々のことです。これを聞いて疑問が浮かびました。暑い南の方のひげが濃いのはなぜなんだろうと。よく伺ってみると、北方の人はひげが薄いのだそうです。ひげが薄い弥生系の人は、もともと大陸の北のモンゴルあたりから移り住んできたと思われるのだそうです。そして寒い地域ではひげを長く伸ばすと、息が凍り付いて凍傷になりやすいので、次第に薄くなっていったのだそうです。今の人類はもともとひげが濃くて、北に移るにつれて薄くなっていたのは明らかなようです。そういえば大相撲の両横綱はモンゴル出身ですが、つるんとした体で、体毛が見あたりません。北海道とモンゴルをくらべると、やはりモンゴルの方が寒そうだから、アイヌの方々のひげが濃いのは理解できます。逆に言うとひげは保湿のためにあるのではないようです。じゃあ何のためにひげは生えるのか?男である目印なのでしょうか?まだ明きらかではありません。ただ、初めてひげをそったときの、大人になったようなあの甘酸っぱい感覚は、まだ私の心に残っています。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)