細菌と共存 健康の秘訣=當瀬規嗣解説
母なる星、地球のいたるところに細菌が生息しています。私たちの身の回りの空気、地中、室内、ありとあらゆるところにいます。ですから、どんなに加熱調理した料理も、放置すれば細菌が繁殖し腐ってしまいます。こんな環境に暮らしている私たちの体も例外ではありません。空気や物、服と接している皮膚の上にもたくさんの細菌が住み着いています。毎日お風呂に入り、顔を洗っていても無くなることはありません。でも不潔だとか病気になるというわけではありません。細菌はただ住んでいるだけです。口の中にもたくさんおり、放っておくと虫歯を作ったりしますが、歯磨きしてへらしておけばそれ以上の悪さはしません。また、食べ物にはたくさんの細菌が取り付いているので、食べたものはいったん胃の中で胃散によって殺菌しています。でも胃散によっても完全にはなくなりません。胃酸をすり抜けた細菌は小腸や大腸に住み着きます。100種類以上あるそうで、腸内細菌といいます。牛などの草食動物では、腸内細菌が栄養の消化吸収に一役買っています。人の場合は消化吸収の役割はわずかで、腸を守るために重要です。つまり住み着いている腸内細菌が新たに入ってくる病原菌が増えるのを抑え込んでいるのです。同じような作用は皮膚の上の細菌にもあるといわれています。なんだか勝手に住み着いている「間借り人」ですが、ちゃんと役に立っているのです。「大家」として、「間借り人」と仲良く暮らしてゆくのが健康の秘訣かもしれません。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)