全員が出資、経営は連帯責任
働く人全員で出資し、福祉や給食など地域のニ-ズにあった仕事をする「協同労働」という働き方がある。「ワ-カ-ズコ-プ」と呼ばれ、経営にも労働者全員であたる。会社とは違い、雇い、雇われるという関係や正規、非正規という考え方も存在しない。派遣切りで労働者を使い捨てにする企業もある中、あらためて注目されている。
日本労働者協同組合連合会(東京)にると、こうした働き方をする人はワ-カ-ズ・コレクティブや農村女性ワ-カ-ズなどを含め、全国で約10万人、事業規模は500億円を超えるという。このうち、北海道労働者協同組合・ワ-カ-ズコ-プ北海道は本部のある旭川をはじめ札幌、釧路など7市町に9事業所があり、約200人が働く。半数以上は介護保険事業で、配送や清掃、給食サ-ビスの委託事業もある。昨年度の事業高は約4億5000万円。同組合の場合、働く人は1口5万円を出資して組合員になり、自らの給料の2ヵ月分まで増資する。働く人の立場は平等で、全員で経営する代わ゛りに、経営責任も持ち合う。非営利だが、給料は自給が基本で、経験や職種で数ランクに分かれるが、額に大きな差はない。常勤職は手当てがつき、月収は16万~20万円ほどという。同組合の田中鉄郎代表理事は「一つ一つの規模は小さいが、雇用不安や格差解消へ、地域に根ざしたわれわれだからこそできることがあるのでは。若者が地元で伸び伸び働ける地域づくりを目指したい」と話している。
タクシ-や映画館も 法制化へ動き加速 世界的には150年の歴史
「協同労働」は世界的には150年の歴史があり、600万人以上が働く。日本労働者協同組合連合会によると、このうち欧州では150万人が約6万組合を組織。業種はサ-ビス業38%、製造業33%、建設業14%など幅広く、障害者ま就労支援やリストラされた労働者の再出発にも大きな役割を果たす。日本では福祉分野が多いが、福岡県ではタクシ-運転手が集まって、タクシ-事業を運営。埼玉県ではミニ映画館を運営している例もある。千葉県では遊休農地で菜の花を栽培、苗種油やバイオディ-ゼル燃料を精製する事業で、若者就労先を確保する試みも始まっているという。先進7カ国では協同労働についての法律があり、その促進が憲法に既定されている国もある。法制化それていないのは日本だけだ。雇用情勢の悪化を受け、法制化を求める声は強まり、道議会が今年3月、制定を求める意見書を採択、札幌など道内45市町村議会も同趣旨の意見書を採択した。一方、超党派の国会議員が昨年、議連を立ち上げ、与野党194人が参加。法案の最終調整が行われており、今国会での成立が期待されている。