本部半島から南に向かった。距離は短いものの島を横断するわけだから、当然のように峠があった。で、上り坂が続くなか、速度計脇の走行可能距離がみるみる短くなっていくのをヒヤヒヤしながらチェックしていた。それでも、事故さえ起こさなければ永遠に登り続けることはなく、やがて下り坂に差し掛かる。
さて、しばらく走ると道沿いには民家を見かけなくなり、濃い緑が広がる。とたんに嬉しくなるはずが、ここではそうはならなかった。それは、米軍の演習場内を抜ける道を走っているからだった。やがて、ナビの指示で脇道に入り、静かな市街地を抜けると、漁港に到着した。そこで車を止め、白いテントに向かう。目の前に広がる美しい海を眺めながら、その白いテントに入ると、数人の方々が話をしていた。僕は遠慮なく空席のパイプ椅子に座り、会話に加わった。
名護市辺野古、ここはもう10年以上前から、米軍普天間飛行場の代替施設建設候補地とされたものの、今に至るまで膠着状態が続いている。そして今、高い支持率を背景に現政権が決着をつけようと画策していて、間もなく県知事の決断が下されようとしている。報道によると「受け入れ」に傾いているというが…
行きの飛行機から窓の外を「あそこか? ここか?」と眺めていた。眼下に広がる海は、どこであっても傷つけてはいけない美しさで僕を迎えてくれた。そして、撮った写真のうち一枚がその場所を捉えていた。
座り込みを続ける方々にお話を伺った。普天間飛行場の代替施設というだけでなく、港湾施設も併設するという話は初耳だったが、果たして僕はこの島の現状に耳を傾けていただろうか。そう思いながら改めて海を眺めた。
キャンプシュワブと辺野古を隔てる柵は、まるでここが国境であるかのように存在していた。いや、この柵の先には今も沖縄を、そしてこの国を占領している「宗主国」の軍隊が駐留している。福生や座間、横須賀、そし首都の中心に位置する麻布でも同様の光景を見かけるが、沖縄のそれは規模が違う。そして、すぐ近くに広がる美しい自然とのギャップが大きすぎる。
さて、果たしてこの場所に基地を作るべきなのか? そこにはいくつかの論点が絡み合っている。
1.市街地の中にある普天間飛行場の危険性を早急に取り除く
2.東アジア有事の際の防衛拠点として基地は必要
3.日米安保条約などで日本はアメリカに協力する義務を負っている
といったことが思い浮かぶ。いや、それくらいしか思い浮かばない。
1.については誰も異論はないだろう。「基地が出来れば豊かになれる」とニンジンをぶら下げ、住民を賛成と反対に分断するやり方は、水俣病などの公害事件や原発立地と同じ手口だが、普天間の危険性を根拠に、反対する人たちを「普天間移設を妨げている張本人」と位置づけするのはかなり巧妙…というか狡猾な手口だ。ただ、仲井真知事をはじめ「何とかしたい」という地元の方々の気持ちも真実で、無視することはできない。だから、難しい。
2.について、まず東アジアに有事が起きるのかという点を論議しなければならないだろう。確かに、中国や韓国が日本との関係を硬化させている。勇ましさを志向する総理大臣を戴く日本も、一部には「もしかしたら…」とも思う。けれども、平和のための努力をせずに有事が起きることを考えるのはちょっとおかしいんじゃないだろうか。「日本に駐留するアメリカ軍の存在が東アジアの緊張をもたらしている」という捉え方もある。
3.については、日米安保条約について改めて考えてみる必要があると思う。「専守防衛」を掲げる自衛隊がいればいいんじゃないか。それでも不安なら、米軍の代わりに国連軍に駐留してもらうのも…というのは以前聞いたことがあるが、悪くないと思う。現在のように広大な基地を必要とせずとも、さまざまな国の人が混在するということでのいい意味での緊張が、結果として平和をもたらすことを期待する。
まあ、何を言っても「現実を見ていない」とか「理想論だ」と返されてしまうのがオチだが、それでも言い続けなければ現実は変わらない。基地に頼らずとも、その豊かな自然と世界に開かれた立地を活かした未来が描けないか、同じ国の仲間として考えたい。
さて、しばらく走ると道沿いには民家を見かけなくなり、濃い緑が広がる。とたんに嬉しくなるはずが、ここではそうはならなかった。それは、米軍の演習場内を抜ける道を走っているからだった。やがて、ナビの指示で脇道に入り、静かな市街地を抜けると、漁港に到着した。そこで車を止め、白いテントに向かう。目の前に広がる美しい海を眺めながら、その白いテントに入ると、数人の方々が話をしていた。僕は遠慮なく空席のパイプ椅子に座り、会話に加わった。
名護市辺野古、ここはもう10年以上前から、米軍普天間飛行場の代替施設建設候補地とされたものの、今に至るまで膠着状態が続いている。そして今、高い支持率を背景に現政権が決着をつけようと画策していて、間もなく県知事の決断が下されようとしている。報道によると「受け入れ」に傾いているというが…
行きの飛行機から窓の外を「あそこか? ここか?」と眺めていた。眼下に広がる海は、どこであっても傷つけてはいけない美しさで僕を迎えてくれた。そして、撮った写真のうち一枚がその場所を捉えていた。
座り込みを続ける方々にお話を伺った。普天間飛行場の代替施設というだけでなく、港湾施設も併設するという話は初耳だったが、果たして僕はこの島の現状に耳を傾けていただろうか。そう思いながら改めて海を眺めた。
キャンプシュワブと辺野古を隔てる柵は、まるでここが国境であるかのように存在していた。いや、この柵の先には今も沖縄を、そしてこの国を占領している「宗主国」の軍隊が駐留している。福生や座間、横須賀、そし首都の中心に位置する麻布でも同様の光景を見かけるが、沖縄のそれは規模が違う。そして、すぐ近くに広がる美しい自然とのギャップが大きすぎる。
さて、果たしてこの場所に基地を作るべきなのか? そこにはいくつかの論点が絡み合っている。
1.市街地の中にある普天間飛行場の危険性を早急に取り除く
2.東アジア有事の際の防衛拠点として基地は必要
3.日米安保条約などで日本はアメリカに協力する義務を負っている
といったことが思い浮かぶ。いや、それくらいしか思い浮かばない。
1.については誰も異論はないだろう。「基地が出来れば豊かになれる」とニンジンをぶら下げ、住民を賛成と反対に分断するやり方は、水俣病などの公害事件や原発立地と同じ手口だが、普天間の危険性を根拠に、反対する人たちを「普天間移設を妨げている張本人」と位置づけするのはかなり巧妙…というか狡猾な手口だ。ただ、仲井真知事をはじめ「何とかしたい」という地元の方々の気持ちも真実で、無視することはできない。だから、難しい。
2.について、まず東アジアに有事が起きるのかという点を論議しなければならないだろう。確かに、中国や韓国が日本との関係を硬化させている。勇ましさを志向する総理大臣を戴く日本も、一部には「もしかしたら…」とも思う。けれども、平和のための努力をせずに有事が起きることを考えるのはちょっとおかしいんじゃないだろうか。「日本に駐留するアメリカ軍の存在が東アジアの緊張をもたらしている」という捉え方もある。
3.については、日米安保条約について改めて考えてみる必要があると思う。「専守防衛」を掲げる自衛隊がいればいいんじゃないか。それでも不安なら、米軍の代わりに国連軍に駐留してもらうのも…というのは以前聞いたことがあるが、悪くないと思う。現在のように広大な基地を必要とせずとも、さまざまな国の人が混在するということでのいい意味での緊張が、結果として平和をもたらすことを期待する。
まあ、何を言っても「現実を見ていない」とか「理想論だ」と返されてしまうのがオチだが、それでも言い続けなければ現実は変わらない。基地に頼らずとも、その豊かな自然と世界に開かれた立地を活かした未来が描けないか、同じ国の仲間として考えたい。