ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

『いつかパラソルの下で』

2006-07-13 | 読むこと。


森絵都さんが大好きな私ですが、去年この本が出版されてから、読むのを少しためらっていました。図書館の本棚でめったにお目にかからない、ということもありますが、今回も大人向けの小説だったのでちょっとがっかりした、というのが本音です。

『カラフル』で初めて森絵都さんを知り、援助交際などという過激な言葉が出てくるのに、まだ小学生の子どもに思わず「おもしろいよ」と薦め、『DIVE!』にいたっては親子で熱狂。いろんなことがあっても(多少過激な言葉が出てきても)、どれもハートウォーミングな結末で、中学生・高校生にはぜひ読んでほしい作家のひとりです。

けれど、そのあとに出た『永遠の出口』は児童小説ではなくて、少し淋しい思いがしました。思春期の男の子や女の子の気持ちを、あんなに瑞々しく描ける人なのにもったいないなあ、というのが正直な感想でした。

で、この『いつかパラソルの下で』。
彼女独特の軽やかな文章で、ラストもハートウォーミングではあるのですが・・・。大人向けの小説とうことで、一段と描写が過激になっていたのには驚きました 森絵都さんの作品だから、と何も知らずに子どもに読ませたら、目がテンになってしまいそう。
(ウチの場合、高校生の長女は読みましたが、中学生の次女はまだ読んで欲しくないかな。)



異常なまでに潔癖で厳格であった父親。その束縛から逃れるように、成人を機に家を飛び出し、初めて自由を謳歌する主人公野々。しかし、結局は25歳にもなって定職もなく、性的にコンプレックスを抱きながらも達郎と同棲生活を送っています。
父親から逃れたつもりでいて、自分のコンプレックスさえ父親のせいだと思っていた野々。
しかし、父の死後、あの厳格だった父が浮気をしていたことが発覚。今まで全く知らなかった父の過去を知るべく、兄や妹とともに父の知り合いを尋ねたり、父の親戚に会うため、初めて父の故郷の佐渡へ渡ります・・・。


この作品を読んで、父親というものを考えさせられました。
そういえば、父親って不思議な存在だと思いませんか?毎日身近に感じていた母親とちがって、少し遠い存在でした。小さいころは、毎日仕事ばかりして、何が楽しいんやろ、と不思議に感じていたものです。
年頃になるとあまり口もきかないし(共通の話題がなくて)、お酒に酔って同じことをくり返す父と口論になったこともあります。

父や母がどんな子ども時代や青春時代を送ったのか、なんて知ろうとも思いませんでした。肉親を客観的にひとりの人間として見るって、けっこう難しいことなんですね。
反発ばかりしてた私が変わったのは、やはり結婚して子どもができたから。三人姉妹の末っ子で、家のしがらみから一番遠のいていた私が、結局今では年老いた両親の近くで暮らしている、というのも皮肉なものですが。


で、話を本にもどして。

誰もが逃れられない親という存在。
そして先祖から受け継ぎ流れている血。
その同じ血を分かち合っている兄妹。

誰だってそういうものが疎ましく思えたり、つい自分の欠点を親のせいにしたりしますよね。
でも、そういうことで自分を縛っているのは結局自分自身だったんだ、ということに野々は気がつきます。


愛しても、愛しても、私自身はこの世界から愛されていないような、そんな気が心のどこかでいつもしていた。
受けいれても、受けいれても、私自身は受けいれられていない気がしていた。
けれどもそれは私が父の娘であるせいではなく、・・・略・・・自分自身のせいですらなく、なべて生きるというのは元来、そういうことなのかもしれない、と。

厳格な父に育てられたわりに、いいかげんな3兄姉妹の会話がとてもいいです。
今ちょっと人生に躓いてる若い人にお薦め。







コメント (2)
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