ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

守るべきもの

2007-02-15 | 読むこと。


 『天と地の守り人 第一部』
    上橋 菜穂子 作


待ちに待った『天と地の守り人 第一部』、もったいないと思いつつ一気に読んでしまいました。とにかく日々の雑事から逃れたくて
その前に出た『神の守り人』や、外伝『蒼路の旅人』からでもしばらく時が経っているのに、ページを繰ると不思議なもので、まわりの雑音は消え、すーっとこの世界に入っていけるのです。

この守り人シリーズは、30代の女用心棒バルサが主人公の物語です。児童向けファンタジーにしてはちょっと変わった主人公の設定ですが、そのせいで大人のファンも多いのかもしれません。子どものころから強い女性に憧れていた私(←自分も強くなりたかったという意味ですよ)は、短槍使いの名手でかっこいいバルサに第一巻から惹かれました。

その第一巻『精霊の守り人』では、精霊にとり憑かれ、実の父である新ヨゴ皇国の王から命を狙われる皇太子チャグムを、バルサが命懸けで守るストーリーでした。その後『闇の守り人』、『夢の守り人』、『神の守り人』と続くのですが、それ以外に外伝として、チャグムを主人公にした『虚空の旅人』、『蒼路の旅人』が出ました。
守り人と旅人のシリーズはそれぞれの物語として展開し、別々の道を歩んでいたふたりでしたが、この『天と地の守り人』でふたりの運命はまたひとつに重なっていきます。そして、今までひとつひとつの物語は完結したと思っていたのに、それらが微妙に絡まりあい、国と国との争いや駆け引き、異界<ナユグ>の変化など、壮大な物語に発展していきます。

この物語がこれまでの西洋のファンタジーと違うのは、善と悪とがはっきり分かれていないことでしょうか。そういう意味で、とても東洋的なファンタジ-といえます(舞台もアジアっぽいし)。
その国によって、あるいはその人の立場によって、当然ながら見方も考え方も変わります。ある国にとっては敵国であっても、その国内では様々な内情を抱えていたり(そしてその国でも人々は生活しているわけです)、チャグムの命を狙う者が必ずしも悪者として描かれていない、など、見方が多面的で現代に通じるものが多くあります。そのあたり、作者が文化人類学を研究されている方だからかもしれません。

そしてこの物語の魅力のひとつは、なんといっても登場人物たちでしょうね。
主人公のバルサ、この巻ではもう35才です。彼女がどうして女用心棒になったのか、ならざるを得なかったのか。そこには過去の様々な事情があり、彼女は自分の人生を背負って生きているのです。それがこの物語を単におもしろいだけでなく、人生の重みを感じさせ、深みのある作品にしています。

バルサに命を助けられた皇太子チャグムも、子どもから青年に(しかもかなりイケメン?)成長しています。皇太子として、民を守るため行動を起こそうとするチャグム。
敵国の密偵でありながら、チャグムを救おうとするヒュウゴ。
バルサの幼なじみで、呪術師の見習いのタンダ。
新ヨゴ皇国の星読博士でチャグム行方を心配するシュガ。

バルサのまわりにいる男性が、みんな素敵なのですよ
特に今回、『蒼路の旅人』で登場したヒュウゴがバルサの前に現われ、敵対関係なのに救ったり、救われたり。このふたりの場面、けっこう気に入ってます(バルサは全くそんな気、ないでしょうけどね)。

ストーリーは、タルシュ帝国から新ヨゴ皇国を救おうと奔走するチャグムですが、自国ではすでに死んだ者とされ、やっとたどり着いたロタ王国との同盟も結ぶことはできません。あちこちから命を狙われるチャグムを追いかけるバルサ。ようやく再会を果たし、ヒュウゴの伝言により、ロタ王国とバルサの故郷であるカンバル王国との同盟を結ぶことを決意して第一巻は終わります。

第二巻の舞台カンバルでは、バルサも自分の過去と向き合わないといけないのかもしれません。
新ヨゴ皇国内では、孤立しているシュガはどんな道を歩むつもりなのか。
そして、草兵として戦場にかり出されたタンダは、異界の変化に気づき、災いの予兆を感じながらどんな行動にでるのか。
それぞれの思いが、それぞれの行動が、大きなうねりとなって一つの結末に向かって流れていくようです。
ああ、どうなっていくのでしょう。早く続きを読みたい!
コメント (2)
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