ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

ものをつくる人たち

2007-02-21 | 読むこと。
最近、ずっと気になっていたM.B.ゴフスタインの絵本。
ようやく図書館で借りることが出来ました。
残念ながら図書館にあったのは、『ふたりの雪だるま』、『わたしの船長さん』、『おばあさんのはこぶね』、『ピアノ調律師』、『ゴールディーのお人形』の5冊だけ。
それでも、ゴフスタインの世界を堪能することができました。

驚いたことに、以前読んだことのある絵本がありました。
それは、『ふたりの雪だるま』。
パステルで描かれたこの絵本と、シンプルな線で描かれたほかの絵本の印象が違ってて、気がつかなかったのです。



   『ふたりの雪だるま』


一度見たら忘れられそうにない、印象的な表紙でしょ?
パステルで描かれた子どもが描いたような単純な絵ですが、
色合いのせいか落ち着いた雰囲気すらします。
お話もとてもシンプルで、暖かくて心にふわ~と残る絵本です。


そして、今回私がとても気に入ったのがこれ。


     『ゴールディーのお人形』


ゴフスタインの絵本はどれも小さくて、おまけに表紙の絵を見たら、
このがさつな私でさえ、手に取るのもそっと優しくなってしまいます。
それくらい、優しさが滲み出てる絵本なのです。


人形づくりをしながら、ひとりで暮らす女の子ゴールディー。
彼女は、
木のかたまりの中にうまっている、人形の新しい顔を彫りだそうと、
いつも静かに、心をこめて仕事をしました。
それだけで、彼女の人形づくりに対する真摯な態度が伝わってきます。

森でひろった枝を使うゴールディーに、大工で彼女の友達のオームスから、
どうして大工仕事の残りに出る木っ端を使わないのか、
尋ねられたときもこう答えます。
うまく言えないけど、それだと本物のような気がしないの。
それに彫っていても面白くないし、それだとうまくできないの、
生きているような気がしないのよ。


そんなゴールディーが、ある日、お気に入りのお店で、
とても美しい中国製のランプを見つけます。
お店のミスター・ソロモンの好意もあって、
その高価なランプを手に入れることができたのですが
友達の(そして多分彼に好意も抱いていたのでしょう)オームスに、
こんな高価なものを買って、とても正気とは思えないと言われ、
沈んだ気持ちで家に帰り、後悔しはじめます。

美しいものに出会った喜びを、理解してもらえなかった淋しさ。
オームスも大工というものづくりに携わっているのに、
彼とはものづくりに対する気持ちが、根本的に違っていたのです。

しかし、その夜、ゴールディーに不思議なことがおこります。
そのランプをつくった中国人も、
彼女と同じ思いでものづくりをしていたのです。
彼は言います。

私はあのランプを、会ったこともないあなたのために作ったのです。
どこかの誰かが、きっと気に入ってくれると信じて、一生懸命作ったのです。

美しいものをつくろうとする人たち。
作品に命を吹き込もうとしている人たち。

彼らは、美しいものは心や生活を豊かにする、
人の心を幸せにできる、ということを知っているのですね。

クーニーの『おおきななみ』では、ひとりの女の子が、
自分の好きなことを仕事にしようとする決心(覚悟?)を感じ、
その凛とした姿勢に心打たれました。

この『ゴールディーのお人形』では、
自分の好きなことを仕事にしている人たちの、
真摯な態度と美しいものへの一途さに心打たれました。

ゴールディーの生活は孤独かもしれないけれど、
それはひりひりとした淋しさを感じるような孤独ではなく、
大空を飛ぶカモメのような、ある種心地よい孤独なのでしょうね。

若いころ、ものをつくる人たちに憧れた私にとって、
心の残る一冊になりました。
コメント (4)
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