ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

『陰陽師』

2007-06-29 | 読むこと。


         『陰陽師』
         夢枕 獏


遠い昔の話が好きです。

嘘とも真実ともわかりかねるような、
こんなことありえない、と思いつつ、どこかに真実がひそんでいるような。

灯りの輪から一歩出ればそこには本物の闇があり、
その闇に鬼や物の怪が巣食っていたそんな時代。

「闇」とか「鬼」などというものが、人のすぐ身近に在ったころの物語。


去年の夏、長女が高校の図書室で漫画『陰陽師』を借りてきて、
ふたりですっかりハマッてしまいました(*)。

たまたま最近小説に手を伸ばし、軽い気持ちで読み始めたら、
これがまた漫画より読みやすくておもしろい。
それでいて、簡潔な文章なのに情景がありありと目に浮かぶのです。
まあ、漫画をさきに読んでいたせいかもしれませんが。


『陰陽師』、いわずと知れた安部清明の物語です。

簡単に言えば、
友人である源博雅と鬼や物の怪を退治する話、
ということになるのでしょうが、
果たして、その鬼や物の怪というのは一体何なのでしょう。

いつの時代の人々にも潜む心の闇。
愛が執着になり、怨みになり、その心が鬼になってしまう。

行き場を失って彷徨うその怨みや心の鬼を、
清明はなだめ、納得させ、あるべき場所にもどしてやる。

だからでしょうか。
鬼や物の怪の話といっても、おどろおどろしくはなく、どこか哀れ。
愛も、怨みも、もともとは哀しい人間の性から生じたものですからね。


本のほうも漫画と同じく、
謎めいた清明に、飄々とした博雅の組み合わせがイイです

ふたりで荒れた庭を眺めながら、
酒を酌み交わす場面がいいなあ・・・。
私も、清明の式神にでもなって、
鮎なんぞ焼きながら、その場でお酌でもしたいくらい


漫画は途中から宇宙観みたいなのがでてきて難しくなるのですが、
本のほうは会話も多く、今のところすごく読みやすいです。

文章ごとに改行がしてあって余白が多く、
それが「間」を感じさせます。
文章は簡潔なのに、行間から情景や色彩が滲み出てくるようです。


シリーズがたくさん出ているようなので、
この夏は、平安の都にショートトリップもいいかな~
コメント (2)
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