ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

『読む力は生きる力』

2006-04-26 | 読むこと。
 
『読む力は生きる力』
脇 明子


いつも絵本のことを書いておられるrucaさんのブログでこの本を知りました。
私は絵本が大好きで多少絵本とも関わっているのですが、今の子どもたちがあまり本を読まない、読んだとしてもイマドキの読みやすい本しか手にとらない状況にどことなく危機感を抱いていたので、この本に興味を持ちました。

この本の著者であり児童文学者の脇明子氏は、大学で「本が嫌いなのはあたりまえ」「読まないのがふつう」と言う学生が目立って増えてきていること、しかもその多くが小学校や幼稚園の先生をめざしている人たちであることを放っておけず、本を読むことの大切さについて考え続けてきたそうです。

本を読むということは、いったいなぜ必要なのか。
なんとなくわかっているようで、でも、つきつめて考えたことなんて一度もない、というのが正直なところです。そのくせ世の大人たちは子どもに向かって「本を読みなさい」って言うんですよね。そんなこと言わなくても、大人が本を読んでおもしろそうにしていたら、子どもだって興味を持つと思うのですが。

この本には、子どもが本を読むことの意味、大人がほんとうにいい本を手渡すことの大切さについて、わかりやすく書いてあります。私自身漠然と感じていたことに、きちんと説得力のある説明がなされていて、子どもに関わる人たち、親とか先生には是非読んでもらいたい本です。


ただ、私にはどうしても納得できない、というか、ひっかかる部分がありました。それは第3章の「絵本という楽園の罠」からです。
この章に、絵本の読み聞かせが普及し、学生たちも絵本を読み聞かせてもらって育ち、それを幸せな思い出としていながらも、「本を読むのは苦手」「読もうとしても頭に入ってこない」「自分で読むのはめんどう」などと言う人たちが、目立って増えつつあるという現状が書いてあります。そしてその原因として、最近の絵本のきらびやかさが子どもたちの想像力の妨げになっている、というようなことが書いてありました。「絵本を見る」のは好きでも「文字だけの本は苦手」ということになってしまうというのです。

最近の絵本は印刷の技術も発達し、また絵本作家という魅力的な職業が定着してきたせいもあって、初期の頃に比べたらありとあらゆる多彩な絵本が出版されています。確かにその中には首をかしげたくなるようなものもあります。
しかし、だからといって黒一色やせいぜい2、3色しか使っていない昔の絵本が子どもの想像力を育て、色鮮やかで細かいところまでていねいに描きこんだ今の絵本が子どもの想像する楽しみを奪っている、というのはどうでしょうか。

私はけっして今の絵本がわるいとは思いたくありません。“きらびやかな絵本”というのがどんな絵本をさしているのかわかりませんが、バーバラ・クーニーやいわむらかずおの丁寧に書き込まれた絵本にはそこにしかない独特の世界があります。
絵本というのは絵と文章のコラボレーションであり、その両方がうまく合わさったとき素晴らしい作品になります。そのため描き手はそのおはなしにより添った絵を描く努力をしているのであり、絵ばかりが主張している作品はもともと絵本としてなっていないのだと思うのです。

著者もメディアの弊害について触れておられますが、今の若い人に「文字を読むのが苦手」という人が多い原因は、やはり小さい頃からテレビやゲームがあたりまえのように生活に定着していたからではないのでしょうか。
いくら読み聞かせをしてもらっていても、日々テレビやゲームの誘惑にさらされ、受身であることに慣れてしまうと、自分から本を読むというめんどうな作業を避けてしまいます。想像力を働かせなくても、自分の想像よりはるかにすごい映像を与えられるわけですから。
それに加えてテレビやゲームは、友達とのコミュニケーションに欠かせない重要な共通点なのです。どんなにおもしろい本を読んでも、そのことを一緒に語り合える友達がまわりに何人いるでしょう(経験者は語る)。だから、絵本から読む本へと移行する時期に、テレビやゲームの方へ行ってしまうのではないでしょうか。

親として、ひとりの大人として、子どもには美しいものに触れてほしいと思います。絵本との出会いはその第一歩です。たくさんある絵本の中からどれを選んだらいいのか悩みますが、「これでなくてはいけない」というのではなく、子どもの撰んだ本も尊重しながら、自分の好きな本や名作といわれる絵本も読んであげたらいいんじゃないかと私は思います。

そして物語の本を読む年頃になったら、著者がいうようにはじめのうちはめんどうでも読み聞かせてあげたらいいと思います(大変ですけど)。私も小学校のとき、終わりの会で先生が毎日少しずつ本を読んでくださったのを今でも覚えています。テレビやゲームもおもしろいけれど、本はもっとおもしろい、という経験があれば、子どもたちは自ら本への扉を開けようとするのではないでしょうか。












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