熊本熊的日常

日常生活についての雑記

「眠れる森の美女」

2005年03月02日 | Weblog
 有楽町のニッポン放送の地下にあるファンタスティックシアターというところで「眠れる美女の村(Village of Sleeping Beauty)」というドキュメンタリー映画を観た。これは2003年の「世界自然・野生生物映画祭」でグランプリを受賞した作品である。ここでは、カメラがフィンランドとの国境に近いロシアの寒村に暮らす老夫婦の日常を淡々と撮影している。53分間のフィルムで語られているのは、二人が家畜の世話をしている様子であるとか、夫が大好きな自宅のサウナに入る姿、牛をしたり羊の毛を刈る映像というごくありふれた日常である。しかし、平凡な日常であるがゆえに、そこに流れる時間とか彼等の表情といったものに生命が溢れているように見える。生きることの幸せというのは、財産とか仕事というような自分の外にあるのではなく、毎日の生活を自然という与件のなかであたりまえのように生きるという生活観のなかに静かに築かれてゆくものなのだと感じさせる作品だった。勿論、都市での暮らしは、その土地の自然とは無縁の世界である。しかし、与えられた環境のなかで自分の欲望とそれを満足させる可能性との均衡を図るということは、物理的な自然環境だけでなく我々の心のなかの自然環境についても言えることだろう。己を知り、足るを知った時、煩悩を超越した幸福感のようなものを味わうことができるような気がする。