熊本熊的日常

日常生活についての雑記

「レ・ミゼラブル」

2005年03月19日 | Weblog
 帝国劇場で「レ・ミゼラブル」を観た。原作を読んだこともなければ、ろくにストーリーも知らずに観た。それでよかったような気がする。観客に下調べを要求するようなエンターテインメントはエンターテインメントたりえない。まっさらの状態で観る人にどれほどの感動や喜びを与えることができるのかが、プロの腕の見せ所なのである。その意味では、素晴らしい舞台だった。リテラシーも予備知識の量もばらつきがある観客にスタンディング・オベーションをさせるには何が必要なのか、観ていてよくわかった。
 映画やコンサートと違って、演劇には必ずある一定の割合のご贔屓さんが客席を占めているように思う。これは演劇が作品よりも役者と聴衆とのコミュニケーションによって成り立っている部分が大きい所為ではないか。芝居が終わった後の役者と観客のお決まりの遣り取りを見ながら、そんなことを思った。
 つまり、「レミゼ」の舞台そのものよりも、それ以前に醸成された役者とファンとの間の信頼関係の深さが舞台を事前に構成しており、舞台そのものはそうした信頼関係を限界的に補強するだけなのではないかと思うのである。信頼関係というのは醸成するのは難しく、崩壊させるのは簡単である。だから舞台で鍛えられた役者には「名優」と呼ばれる人が多いのだろう。日頃の人間関係も同じことである。積み重ねがモノを言う。