台風一過で暑さがぶり返しましたが、朝晩はさすがに秋らしくなってきましたね。2学期の最初の週は無事に終わりましたか? 黒澤明の「天国と地獄」はおもしろかったようですね。黒澤明の作品は、比較的単純なストーリーでありながら、場面の構図や登場人物の立ち居振る舞いには細かい所まで凝っており、深く観ようと思えばいくらでも深く観ることができる作品が多いように思います。このことは同じ作品でも、自分が置かれている状況によって、違ったように見えるということでもあります。そのような作品であるからこそ、時代を超え、言語の違いを超えて、黒澤作品は現在まで多くの視聴者を惹き付けるのでしょう。
「感動ものにはあまり興味がない」と言っていましたが、やがて君が「感動もの」にハマる時も来るのかもしれません。時を重ねて、様々な事象や人物に出会えば出会う程、物事の見方や考え方は変化するものです。「考える」ということは、既に知っていることを様々に組み合わせる作業ですから、知識や経験が多いほど、様々な考え方ができるようになり、それだけ人生は豊かになると思います。せっかく生きているのですから、豊かに生きることを心がけた方が、人生はより楽しくなるのではないでしょうか。 先週は佐藤正午「5」を読了しました。
「5」は本の帯にあるように「世界の中心で、愛をさけぶ」の対局にある恋愛小説です。あまりに現実的な生々しさに、読んでいて嫌な気分になることもありましたが、文章が洗練されているのか、構成が巧みなのか、思わずその嫌な世界に引き込まれてしまいました。純愛という幻影を求めて右往左往する人々の滑稽なまでの醜悪さと、主人公のいやらしいほどの自己顕示欲には辟易させられます。しかし、その醜悪こそが人間性の現実であるようにも思われます。人に勧めたり、手元において何度も読み返すタイプの作品ではないと思いますが、その汚れ具合がまた良かったりするわけです。まだ君には難しいタイプの作品だと思います。でも、あと何十年かすれば、このような作品を面白いと感じるようになるのかもしれません。
季節の変わり目は気候が不安定で、体調を崩し易いものです。栄養のバランスを考え、睡眠時間をしっかり確保して、ご自愛下さい。