お元気ですか。トイレ掃除やほかの家事はちゃんとやっていますか。
私のほうは、ようやく自分なりの生活のリズムがつかめてきたような気がします。まだ繁忙期ではないので、仕事は9時5時、仕事帰りにスーパーに寄って夕食となるようなものを買い、歩いて帰宅して、夕食を取り、諸々の雑事をして、眠くなったら床に着く。そんな毎日です。週末は美術館に出かけ、今日はこちらに来て初めて映画を観ました。
この一ヶ月ほどの間に私を含めて数名の日本人社員が着任したので、先週月曜は職場近くの中華料理屋で社内の日本人会がありました。この会社のロンドンで働く日本人はグループ会社を含めて30名ほどですが、そのうち12名が集まりました。私も投資の世界に身を置いて長いせいか、全くの初対面という人は少なく、こういう時に歳を取ったなと思います。
週末はテート・ブリテンとヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムという美術館に出かけてきました。あと、家の近所にあるシネコンでニコール・キッドマンの最新作「Invasion」を観てきました。
テートではミレイ展が開催中で、以前から是非観たかった「オーフィリア」をじっくり鑑賞しました。これは「ハムレット」をモチーフにしており、オーフィリアはハムレットの恋人で、狂死してしまうことになっています。彼はこの作品を描くために、同門の後輩画家ロセッティの彼女をモデルにして、彼女にバスタブのなかでポーズをとってもらって描いたそうです。この逸話は、以前、この作品が日経新聞の日曜版に紹介された時に読んで知っていたので、作品を前にしたとき、オーフィリアの身体の折れ具合にバスタブの枠を感じてしまい、笑い出しそうになってしまいました。ミレイの作品の多くはオペラや演劇をモチーフにしており、その舞台なり物語なりを知っていれば、もっと興味深く彼の絵画を鑑賞できるのだろうと思います。 私の場合、この作品展を観て感じたのは、年代を追う毎に人間の表情の描写に力が出てくることと、晩年の風景画作品に神がかったものが現れることでした。やはり10代の頃に描いた作品は、描かれている人物の表情に深みが感じられません。描き手が、自分の中に様々な感情の履歴を溜め込んでこそ、人の表情の裏側にあるものを感じることができるようになるでしょうし、さらに様々な人生を経験して、そうした深さを表現できるようになるのでしょう。その点で、晩年の風景画が興味深かったです。一見したところ、写真のような写実的な森や川や山です。しかし、作品を前にすると、それがただの風景ではなく、その背後に何物かを感じるのです。
ヴィクトリア・アンド・アルバートは美術館なのにgalleryではなくmuseumとなっていますが、要するに巨大です。たまたま足を踏み入れた「ヨーロッパ1600-1800」というコーナーにハマってしまい、ここだけで一時間半ほど過ごしてしまいました。教会の調度品や家具、陶磁器などが展示されているのですが、400年から200年という時を経て、家具に使われている素材や装飾がどのように変化するものなのか、その変化が素材によってどのように違うものなのか、その装飾に日本の文化とのつながりがあるのか、などなど際限なくいろいろなことが脳裏に浮かび、辞書片手に展示品の説明を読みながら展示品を眺めていたらあっという間に時間が過ぎてしまいました。このコーナーは美術館の人の動線から外れたところにあり、ほとんど見物客が通らない一角でもあるので、自分のなかではすっかり穴場との認識が固まってしまいました。
「Invasion」は、要するに「バイオ・ハザード」です。つまらない作品ですが、誰が敵か味方かわからないような状況が、自分の今の状況に重ね合わされて見えました。ちなみに映画の値段は6.75ポンド、約1,700円ですから日本とほぼ同じですね。
風邪などひかぬよう、体調には十分お気をつけ下さい。