熊本熊的日常

日常生活についての雑記

1ヶ月経過

2007年10月22日 | Weblog
ロンドンにやってきて1ヶ月が経った。勤務先が用意してくれた仮住まいの期限も過ぎ、自分で探した家での生活が始まった。

ロンドンは物価が高い。消費税が日本よりも高いという事情があるにしても、東京に比べて平均して5割ほど高い。大げさに聞こえるかもしれないが、本当なのである。例えば、1ポンド250円として東京とロンドンで同じ商品を扱っている無印良品の商品価格を比べてみれば、物によってロンドン価格は東京の倍である。地下鉄の初乗り運賃が4ポンド。しかも、日常的に故障などがあり、信頼性は東京の地下鉄の比ではない。

そんな都市の住宅事情は推して知るべしであろう。私の場合、離婚の財産分与で自宅を元妻に譲渡したので、その住宅ローンの残債負担もあり、養育費の負担もあり、経済的に余裕は無い。最初は、月500ポンドの予算で通勤30分以内の地域で探し始めた。勤務先の福利厚生のイントラネットに登録されている不動産屋に、「500ポンドくらいの予算で職場の近くに家を探したい」と言ったら「週500ポンドですね」と言われ、「いえ、月500ポンドで」と答えたら笑われてしまった。仕方ないので、ネットで物件を探してみたが、やはり500ポンドは無理があり、少しずつ金額を上げて検索を繰り返したら700ポンドあたりでようやく物件が引っ掛かるようになった。その数少ない物件を求めて、広告を出していた不動産屋を訪ねた。

その不動産屋はGreenwich Parkの東側にあり、なぜかその一角には不動産屋が軒を並べていた。こちらでは、ショーウィンドウに掲示されている物件が、手持ちの全てであるらしく、どの不動産屋でも「実はいい物件がありまして…」ということは無かった。ネットで探した物件は生憎、既に借り手がついており、その物件を持っていた不動産屋で別の物件を紹介してもらった。3日後に内見させてもらう約束をして別の不動産屋をまわり、結果として、その不動産屋の向かいの不動産屋で今住んでいる物件を見つけた。まだ前の店子が住んでいたが、その日のうちに内見させてもらうことができ、その店子の話を聞くこともできた。古いけれど静かな住宅街にあり、とは言いながらショッピングセンターも徒歩圏内に2箇所あり、交通至便。これは押さえておかなければならないと思いながら、付近を歩き回って環境を見て回った。

Greenwich Park周辺は閑静な住宅地が広がっている。この公園の北をA206という道路が走り、この北側はかつて工業地域であったそうだ。この通り沿いにはインド料理、中華料理、ケバブーなどの持ち帰り料理を売る店が目立つ。小規模なスーパーもあり、全体としては少し荒廃した感じである。一方、3日後に内見予定であった家は、公園の南、Lewishamという地域にある。ここはDLRという軽便鉄道、国鉄、多くのバス路線が通り、繁華街も大きく賑やかである。しかし、そこを行き交う人々は殆ど有色人種である。それも濃いめの。その地域だけを取り出せば、誰もそこがイギリスだとは思わないだろう。そんな場所である。内見予定の家は、高い塀で囲まれた住宅地のなかにあり、その塀の中は外側とは打って変わって閑静な住宅地になっている。とてもそんなところで生活する気にはなれなかったので、その場でここを紹介してくれた不動産屋に電話して、内見の予定を取り消してもらった。

結局、内見させてもらった家を借りることしした。ここは、Charltonという地域にあり、おそらくかつてはテムズ川沿いにあった工業地帯で働く人々が生活していた地域なのだろう。今は、人種も職業も様々の人々がそれぞれの暮らしを営んでいるようだ。私の前の店子はポーランド人の夫婦だったし、時々誤配される隣人の郵便物の宛名から、彼等がイギリス人ではないことが明らかだ。反対側の隣人は黒人の家族で、家の改装中なのか、家の前にゴミの山がある。向かい側はアラブ系のようだ。近所を走るバスの乗客は7割が黒人で、1割は中国系と思われる人々。付近に中国食材を扱うスーパーがあり、ということは中国系住民が多いということでもある。最寄りのフィッシュ・アンド・チップス屋は中国人の経営で、持ち帰りの中華料理もある。ここの料理は、持ち帰りにしては抜群に美味しく、しかも手頃な価格である。夜遅くまで営業しているので、たいへん重宝だ。

まだ収納家具が何も無いので、荷物は段ボール箱に入ったままだ。ベッドも寝具も無いので、トレッキングに使う寝袋で寝ている。日本企業の駐在員としてロンドンで暮らす人々には想像もつかないような過酷な環境ではないだろうか。それでも、私が思い描いていた生活よりは快適な日々であることは、ありがたいことである。