落語の舞台を訪ねる旅というものに参加した。お題は「鰍沢」。落語の「鰍沢」は知らなくても葛飾北斎の『富嶽三十六景』にある『甲州石班澤』は知っているという人は多いだろう。その鰍沢のある富士川町が「落語のまち」として町おこしをしようというのである。そういう事情を一切知ることなく、昨年イイノホールで聴いた「鰍沢」の会で手にしたチラシに引かれて今回の旅行を申し込んだ。
そのチラシには「第一回 落語『鰍沢』の舞台をめぐる旅」とあるが、この以前にきっかけとなる似たような試みやテストマーケティング的な企画を重ねてきたのだそうだ。きっかけに登場した噺家は今は亡き立川談志。このときは木戸銭500円という設定だったのを、「そんな半端な額を取るくらいならノーギャラでいいよ」ということで無料での開催となったそうだ。談志の声掛けで春風亭昇太が出演することになったとき、『鰍沢』はできない、とのことで急遽助っ人で柳家三三が共演し、それが縁で今日に続いているのだそうだ。
それで「第一回」というからには「第二回」「第三回」と続くのである。少なくとも「第五回」までは続けないといけないらしい。というのは、落語で町おこしという企画で国から補助金を取り、その期間が5年なのだそうだ。公の金を使う以上、なにをどのようにして、その結果なにがどうなった、という報告をしないといけないのである。大胆な試みだ。大胆なことをしないといけないくらい地方経済は逼迫しているということでもある。
今日は午前9時10分にJR身延線の鰍沢口駅前集合だった。この待ち合わせに間に合うには9時7分に鰍沢口に到着する特急ふじかわ4号に乗らないといけない。この特急は甲府を8時44分に発車する3両編成だったが、甲府駅のホームの風景には特に違和感を覚えるようなことはなかった。電車が鰍沢口に着いてみるとホームに法被を着て幟を持った人がいる。お寺がたくさんあるらしいとは聞いていたので、何か法華の団体でもあるのだろうと思った。ホームから階段を下り、線路の下を潜って工事中の駅舎のほうへ出ると同じように幟を持った人がいて法衣姿の人もいたのでなおさらそう思った。大型バスが停まっていて、その周りに大勢人がいる。自分たちが乗るバスもすぐに来るのかなと思いながらそういう風景を眺めていた。が、よく見るとそれは今回の落語の旅の人たちで、法衣姿の人と話をしているハンチングをかぶった人が三三師匠だった。今日の特急ふじかわ4号に甲府から乗車した客のほとんどがこの落語旅行の人たちだと、ようやく気がついた。つまり、こういうことがなければ、この特急はほとんど客がいないということだ。
この駅前の人だかりのなかにはNHKの取材の人たちもいて、今回の企画を番組で紹介するのだそうだ。バスに乗り込む直前、私にもマイクとカメラが向けられた。この時点ではこの企画が町おこしの一環であるとか、落語というソフトで町おこしをする比較的珍しい試みであるというようなことは一切知らなかった。それで「落語で町おこしをするというのを、どのようにお考えになりますか?」と尋ねられ、思い切りネガティブなコメントをしてしまった。たぶん、私のところは放送されない。
バスはまず昌福寺へ。ここは虫切りで有名なのだそうだ。ご住職に寺の縁起一通りを伺った後、境内と周囲の説明も伺う。このあたりから天気予報通りに雨が降り始める。次の見学地である法論石で説明を伺っている最中に雨脚が強くなり、これ以降はずっと降り通しとなった。雨の中、毒消しの護符で有名な小室山妙法寺に参詣。普段はあまり公開していない三門の中を拝見する。限りなく梯子に近い階段を上って楼上へあがると、十六羅漢像が並んでいた。鰍沢の街中に戻り、国本屋という旅館兼料理屋で店のオリジナルである「落語弁当」をいただく。この後、本来なら商店街を散策するはずだったが雨脚が強いので、要所要所間をバスで移動しながら、竹林堂というお菓子屋さん、写真美術館、酒蔵ギャラリーを見学して落語会となった。
本日の演目
「転宅」
まくら:岐阜県関市善光寺 五郎丸のルーチンと同じ印形の大日如来像
そのすぐ近くの曹洞宗の寺で落語会 三席 締めは「蒟蒻問答」
開催地の寺の住職の父の感想「はらわたがにえくりかえった」
怒られたのかとおもったら、腹がよじれるほどおもしろかったの意らしい 日本語はむずかしい
日本語の上手な20代の韓国人の友人
「日本語お上手ですね」ー「滅相もない」「右と左がわかりません」
スーパーあずさの車中 電車が動きだす前に弁当を食べ始めた60代と思しき紳士
食べるのが早い
弁当の包装に「なるべくお早めにお召し上がりください」
切符を買うときに販売機の前で顔をいじっている老婦人
「しわをのばして入れてください」
落語のまくらはマーケティングリサーチ
今日はこれから泥棒の噺
十両盗んで首が飛ぶ
人気があったのは鼠小僧
有名なのは石川五右衛門
「鰍沢」
まくら:日曜昼席 中入りで帰ってしまう客がいる
「笑点」を観るため
「笑点」放送50年
歌丸師匠 車椅子 見納め?
陰陽 万物の理
噺も陰陽がある
宗旨にも陰陽がある 陰:南無阿弥陀仏 陽:南無妙法蓮華経
江戸時代 身延山参りが流行
富士川 日本三大急流 鰍沢の船「乗るも馬鹿 乗らぬも馬鹿」
開演 15:30 終演 17:00
会場 富士川町ケイパティオ