熊本レポート

文字の裏に事件あり

何が変わるか熊本空港の民営化 第一回

2017-05-05 | ブログ

 振り返れば可能性は十分にあったのだが、他人事で済ませて来れた県民が予想だにしなかった熊本大地震は県民の生活、県産業に甚大な被害をもたらした。震源地に近い熊本空港もターミナルビルの天井が落下するなど搭乗口、飲食店などの被害は決して小さくはなかった。
 蒲島熊本県知事はそれから八ヶ月後の12月、「空港ビルの建て替えを熊本地震からの『創造的復興』の象徴と位置づける」として、その建設を空港運営権と一体化した「コンセッション(民営化)方式」で実行したいと、それを石井国交相に要望。
 だが、この熊本空港の民営化はここで、地震からの復興として始まったことではなかった。2010年の国交省成長戦略会議で出された地方空港の民営化構想に始まったもので、それは熊本空港についても国交省側と特定の地元政治家らとの間で話し合われてきた経緯にあった。
「第三セクターがコンセッションに入札するというのは、それは選定の公平性を損なう恐れがあるので、それは認められません」
「あぁた(貴方)、そいじゃ(それでは)いっちょん面白くなかたい(ひとつも良いところはないではないか)」
 足を伸ばしてゆったりと座っていた男が、腰を引いて座り直しながら顔を突き出して、そぅ言った。
「いや県、市は応札企業に参加することは出来ませんが、落札した企業に一定の割合で出資することは可能です」
 さすが熊本出身の官僚である。熊本弁での不満に直ぐ応えてきた。
 国交省の説明は一見、そこに透明性の高い制約を課したように思われるが、実情はそうではない。県や関係市町村は「確実に勝ち馬に乗れる」という落とし所が、後で検討されて付け足されたコンセッション方式である。これでは、応札企業からの「何のための民営化か」といった批判も当然である。
 空港の民営化とは、緊急災害時での活用を優先した滑走路、それに管制塔を除いた施設を民間に委託し、その運営を任せるものだが、熊本空港の場合は鹿児島空港等とは異なり駐車場(国の第三セクター)も相変わらず除外される。
 さて熊本県は民営化を2019年半ばに予定しているが、先行組の例からだと公募から第一次審査、競争的対論、第二次審査、そして優先交渉者の決定まで三年余りを要する。
 コンセッション方式に最も求められるのは適正な運営権価格の設定、公平な選定、そしてこれらの透明性にあるといわれる。すなわち最も重要なのは、表現は悪いが権力争いであって、そうした裏の部分なのである。
 民営化は関西国際空港のようにオリックスとフランスの大手ゼネンコン傘下のヴァンシが落札、運営するというケース(関西財界も参加)もあるが、地方空港では先発組の高松空港のように穴吹興産、高松琴平電鉄など地元企業グループも受注意欲は高く、これらが三菱商事、オリックス、東急などと大成建設、前田建設工業、熊谷組などのゼネコンまで加えて、その枠組みで受注競走に入るわけで、その裏のし烈な戦いは想像できる。
 福岡空港の場合は七社会(九電・西鉄・西部ガス等)が外資系と組んだことで、市長と七社会との間に亀裂を生じたと噂されるが、それだけ特定の政治家には「働き甲斐」のあるテーマであることが伺えられる。
 野党の看板はあっても「野党議員不在の熊本県」という酷評に関係なく、国民の共有資産について、県民一人ひとりに監視と検証の求められるのが熊本空港の民営化。
 その検証のためのテーマが、経緯を含めてこれからである・・・(つづく)
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