害をもたらした悪。それを包み隠したのもまた悪。悔を残した水俣病だが、それを教訓にした環境立県もそこは全くまた一緒。
5カ月程前の初夏、倉岳町(天草市)の海岸に異様な光景が出現した。教えてくれたのは、天草市御所浦町に竿を伸ばした福岡からの釣り客。「紺碧の海から対岸に視線を上げると、海面に黒色の不自然なボタ山が見えて、ボートでそこに近づくと、それはクリンカアッシュ(石炭の燃え殻)にも思えた」
工業試験場に勤務の彼は「産業廃棄物の不法投棄だ」と直感し、その情報を直ぐ電話でくれた。
ところが、同市倉岳町支所(総務課)に電話を入れると、「そんな話は聞いたことがない」釈然としない反応。
幻覚だったか、と疑いながらも2カ月後、現地を訪ねると、「現場はエビの養殖場跡地」やはり事実だった。
同市倉岳町棚底鳴川の番外地(国の管理区域)が、その現場。龍ケ岳町(上天草市)と自治境界線を跨ぐエビの養殖場跡地である。
「半年以上も前からの工事現場。漁師や釣り客の中には海側から見た人もいたと思うが、雑木林の下に入り込んだ入り江で、住民も、ほとんどが知り得ない場所」
業務上、係わったという給油所のスタッフは、現場について淡々と語った。
しかし後述するが、推定500トン余りが搬入されてボタ山を形成した物質は、人体に極めて有害な物質を含んでいた…。
一般的に公害及び環境破壊は、歪んだ経済観念を持つ者の仕業とされるが、実のところそれを監督指導する行政次第で発生する。これから述べることは、このことを確認し、その背景、理由を検証、考えてもらう上でのレポートである。
さて、有害物質の投棄された現場は、龍ケ岳町から県道二六六号線を倉岳町に入って直ぐ、左下に海岸へ降りる小路の終点口。説明通り海に突き出た雑木林が集落からの視界を遮断し、関係者が口を開かない限り天草市も承知するのは困難な場所。
約1万平方メートルの養殖場跡地に近づくと、コンクリート壁の堤防に囲まれた中、作業員が住宅用地の造成でもしているかのように小型ブルドーザーで整地中。その黄色い土木作業車には、横に大きく「K海運」(八代市)という社名が見えた。昨年、八代市のK商事が海砂利の不法採取で摘発されたが、K海運の旧社名はそのK商事。
土木機械車を使っての作業は、黒色と いう色を除けば土砂による造成工事。米粒程の物質を米俵四つ分くらいにまとめて、それを押して移動させているわけで、見た目によっては粉砕した石炭殻の埋め立てである。
ボタ山のように積み上げられての放置が、その2カ月後、埋められて整地された…。
ただ、替わりに約30トン余りの白砂が該当地の隅に山積みされた。
養殖場跡地の角地にコンクリート壁の底が見えた。そこからだと、黒色の物質による埋め立て面は高さ約三メートル。
基礎土が仮に二メートルの厚さとしても、約1万平方メートルの養殖場跡地に10トン車で1千台分と膨大な量になる。その5パーセントとしても搬入量は500トン。
幅三メートルにも満たない小路をトラック10トン車で搬入したとは思われないし、海運業者として船で運び込んだのは明らか。
搬入された黒色の物質について、「有害か無害か」は、この時点では未断定。
だが、この後で倉岳町漁業協同組合を訪ねると、「持ち込まれたのは廃棄物」とも想定させる情報。
「保健所(熊本県天草広域本部保険福祉環境部)が撤去指導した」(同漁協役員談)埋め立て造成中と推察したのは、実は撤去作業中であった。
ところで同漁協は当初、「養殖場の底上げ工事用の資材」として搬入者(U氏・元エビの養殖業者)から説明を受けている。
それが、保健所が出て来て「土木資材の撤去」となると、不安を抱くのは当然。
500トンもの土木資材を半年も苦労して搬入していながら、それを急に撤去し始めたとなると、誰もが「何んでだ」と不思議だというか、いや、不安に駆られる。
「搬出は大分の事業所で、搬入者を通じて搬送者(K海運)が撤去」天草広域本部の衛生環境課が、「住民からの通報を受けて速やかに行政指導を執った」と回答。だが半年以上も前からの搬入となると、住民による通報までの半年間以上は放置(同衛生環境課)していたとなる。
そして普通ならここで問題解決ということになるが、だが違った…。(12月1日号の第二弾へ続く)
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ここで述べる熊本市長選挙は、「政令指定都市に相応しい熊本市長」とは誰か、といった理想論の話ではなく、それなりの候補者三人の中で誰が当選するかという力学上の予想。
当初、面白いと観た想定は、大西候補の自民党推薦を確認してから出馬表明し、人気の細川夫人を陣営に取り込み、県外から選挙参謀を呼び込むなど、戦力の「大西候補」に対して重なり合う市民層へ向けた「戦術の石原候補」であった。
そもそも現市政の「MICE計画」は、その善し悪しはともかく下川候補の主張が最も理解しやすい「執行部の計画を議会が承認してスタート」の状態で、そこには同候補の一部修正か、「維持費負担をいかにカバーするか」(大西候補)という「MICE容認の施策」が現実。
維持費負担を意識するどころか、メジャーなアーチストが熊本にやって来ると顔を上げさせれば、素早くそちら
に走る若い世代、それに全体的にも反対30%という世論の中にあって、クーデターを起こせとまではいわないが、石原陣営がどんな命懸けの戦術を見せるか期待したのは事実。
ところが反対50%くらいまで「燃える選挙」で浸透、支持を拡大させたかというと、その状況、結果が全く見えない
基礎票を7、5、4とすると、投票率45%なら残り約9もあって、戦術次第では逆転の可能性もあると当初は想定したが、「戦力候補を脅かすほどの活気がない」となると投票率は35%前後まで落ちると予測して、残り3の争奪となると、細かな理由抜きで勝ち馬に乗るのが大衆心理。結局、次位、3位に3以上、場合によっては5以上の差をつけての当選というのが今回の市長選で想定した結論。
民主政治における選挙は、表現は悪いが馬の一票と豚の一票に価値の違い
はないとする証明の舞台。討論でノーをイエスに変えるには大きなエネルギーを要するが、平等な価値の分捕り合戦となると戦術次第で実に面白い結果も生まれる。
今回、その面白い結果が見られそうにないが、実のところ民主政治は戦術において都合の良い舞台。
薄暗い街から入って来た男は、席に着くなり顔を突き出し、
「あんたの予想は外れとる。日立と西松…」どすの利いた声ながら、そう囁いた。
そして、「米本・和久田・藤永…」と走り書きしたメモを中指と人差し指に挟んで、放り投げるようにして渡した。
十一月一日、夜も深まった八代市である。
馬、牛、羊、豚を並べられて「家畜にしたいものを連れて帰れ」といわれたとすると、人は飼育する時の手間を考えたり、愛玩にするか販売を目的にするかで悩むが、「羊なら散歩にも連れて行ける」と追って言葉を足されると子供なら誰でも羊を選ぶ。だが、選択の基準によっては異なる回答が出るのと、後者の選択も押し付けになることは確か。
八代市は環境センターの処理施設選定に向け、その舞台にストーカー、ストーカー灰溶融、流動床方式ガス化溶融、そしてシャフト方式溶融など異なる方式を一様に上げた。民主的で公正という印象にもあるが、それぞれが持つ長所、短所を総合して審査するわけだから当然、そこには「判定基準」という疑問は浮上する。もちろん、それが「シャフト方式溶融炉」と噂通りの事前通知があれば、それは手の込んだ芝居ながら審査においてはこれほど楽な話はない。しかし、それは先の例と同じく強要の示唆であって、審査委員会の存在価値が問われるというより明らかな不正。
「専門的な知識に欠けるから『コンサルタント』や『審査委員会』に任せた」
同市はその機種、発注メーカーの決定について「専門家による審査委員会に委託」と語るが、自然科学等の個々の分野で活躍の大学教授(八名)であっても処理施設のトータル的な判断には疑問符が打たれる。彼らの「名誉的肩書」はともかく、「中国製の不良材料指定」とか「審査点数結果とは異なる結果」も飛び出す評価、審査委員会も多い中、その出席率からして「形式的委員会」は想定内。
結局、実際の判定は八代市側の三名と審査委員長である全国都市清掃会議の技術部長によって決まるということになる。そこで全国都市清掃会議だが、同会議は全ての自治体が参加する法人団体ではなく、環境省公認の公式審査法人でもない。新日鉄住金エンジニアリング、日立造船、エイト日本技術開発等の関係会社が協賛会員として参加していて、該当の技術部長は葛飾区(東京都)清掃工場の元場長。個々の専門家である大学教授らよりは総合的な判断では勝っているとされるが、「公正さに欠ける背景」という批判の声は否定できない。
これが八代市環境センターにおける機種施設選定、発注先決定の表舞台だが、いずれにしても「審査決定は専門家による審査委員会での結論」と責任転嫁が許されるものではなく、その責任はあくまで八代市に存在する。市民なら不承知、不認識でも通るが、官吏、公吏と称される公務員となると、それは許されず、場合によっては「不作為罪」として罰せられる。
百二十八億円もの規模となると、一般市民には想像もつかない額というより、その負担を強いられるという認識すら出て来ないが、利権、いや仕事として肖ろうとする者には命を賭けて必死になる大規模事業。遠くに離れて行くようだと激しく追い、舞い戻ると掴んで離そうとはしない攻防が繰り返される。
それだけに一般市民とは違って、執拗に朝から晩まで同事業で過ごす間、何を勘違いしたのか、「八十二億から九十八億、そして百二十八億円まで事業費を増やしたのは俺」言い切ったとの噂まで出る…。
その報酬を求めるのは当然だと言わんばかりに個人の支払い延期の理由にし、それを裏付けにして利用する脇の甘い者。
「市長選挙で五洋建設が金子(代議士)後援会の法被を着て必死で応援」、「中村市長誕生の立役者は金子」
そんな小さな噂まで飛び交ったが、シナリオは動くはずのない別本線。
ただ、沖の鳥島での港湾工事で死者七名を出した新日鉄住金、五洋建設が先行していたのは事実で、それが何のペナルティも科せられず入札窓口を通り抜けたのは、誰が考えても不可解、不道理な話。
そして十月、「中村市長が審査委員会において『神戸製鋼が良い』と発言」という噂まで飛び出したが、任せたはずの審査委員会で市長の発言というのも不可解なら、仮に天の声でも多数の門前ならど素人政治家の失態。後で命取りにも成りかねないこんな予測をプロの政治家が言うはずはなく、これで『神戸製鋼は消えた』と判断する方が常識。
事実、神戸製鋼側で受注に向けて売り込みを図っていた人物が、
「十月十七日、敗北が決定」
肩を落として認めた。
残りは自民党県連の山本秀久会長、村上寅美県議らが「性能の面で優れている」と、審査委員よりもストレートに推薦していた日立ということになるが、その説明に村上県議が成松由紀夫市議(建設委員長)を訪ねていたのは確か。
そして東京発信の情報だが、「十月十六日の夜、園田博之代議士事務所の白石氏が八代市の市議と密談」
全く別件での陳情とも無理に想像したりもするが、この会見の噂が想定の決定。
総合して判断をして頂けると理解は早いと思われるが、発注先がどのようにして決定されるか、これがそのプロセス。
八代市十三万市民へのクリスマスプレゼントの中身は、途中ですり替わりにお歳暮となったが、元の中身は義理と人情で年を越えて合志市か、または天草市に届くか…。