熊本レポート

文字の裏に事件あり

地方議会の壊死 第一回・市長の独走を時効だと目を閉じる天草市議会と暴力団排除条例が怖くて棚に上げた苓

2013-11-29 | ニュース
 70年後、熊本県では半数の自治体が崩壊すると予測した学者がいた。原因は地方議員の資質。「議員の義務と責任とは何か」を果たして問えるかどうか。資質の向上に向けた競争原理の導入(大幅削減)には「民主政治への挑戦」という詭弁が、政治家づくりには手っ取り早さが壁となって立ち塞がる。それでは市民は、平々凡々と崩壊寸前での対策を子や孫に託すのか。秋の夜長に気を注いでもらいたい、その回答へ向けての紹介3例…。

 20代、30代の女性が今の半分しかいなくなったら、地域の社会経済や住民の生存基盤は崩壊する…(増田寛也前岩手県知事・東京大大学院客員教授)。だが五木村では現在、36集落の中で16集落がすでに限界集落(人口の50%以上が65歳以上…高齢者だけとなって冠婚葬祭など社会的共同生活が困難な集落)。
 同村の人口は昭和35年の6161人をピークとして後は激減傾向に入り、現在はその約2・1割の1302人。限界集落どころか、村は消滅寸前。色々な見解、評価は承知の上だが、同村の照山哲榮元議長の唱えた「議員報酬評価制」はこの一点において、その憂いからの焦りでもあった。引退前の遅過ぎた政治行動としての責めは認めるが、その趣旨とは同村の議員に求めた「政治家の責任」で、「政治家とは何か」であった。それを同村議会は却下した。ところで同村の限界集落とか、懸念されるとする自治体の崩壊は「ダム建設」という国家事業に振り回された結果というのは詭弁であって、また自治体の崩壊は五木村に限った予測ではなく、遅かれ早かれ県内各市町村が迎える明日といっても過言ではない。他市町村も似たり寄ったりの状況にある。「町職員の給与はもちろん、公共工事に頼る建設業者、補助金で生活を維持する産業と、ほとんどの町民が公金に係わって生活」(県内某町幹部職員談)
 それは真っ先に消える村、町の最大要因である。
 執行部に責任ある明日に向けた施策がないというのが最大の理由だが、その舵取役と連帯責任にある議会にも問題がある。自治の明日に活かされる立法が全く不在では、何のための議会かとなる。
 活発な論議を展開しているというのは、手前の理由による旧態依然とした政治力学上の争いで、住民にとっては無駄な空論。
 肝心なチェック(自治)機能が働いているかというと、実質的には無駄な盲判議会。
 その無駄な議会の例を挙げてみる。
 既報の通り天草市の安田公寛市長は2007年、「(国民宿舎)あまくさ荘の民営化」を打ち出して、入札に向けて公募したものの途中で1689㎡を「給水施設の点検用」(五足の靴への通行路)として市道化し、同入札も不可解な理由を取り出して中止とし、替わりに先の五足の靴へ6311㎡を議会の承認なしで売却(5000㎡以上の市有地の売却には議会の承認を必要とする)。結果、地元農水産品の再購入問題等はもちろん、彼が民営化への最大課題とした従業員の再雇用問題は自ら放棄し、国民宿舎の民営化構想を自ら潰した(国立公園内での建ぺい率からして11640㎡の観光開発には無理がある…開発業者談。一方、五足の靴における事業拡大には貢献)。P4_6
 これが九月、同市議会で「国民宿舎の民営化構想から逸脱」、また「議会に無断で市有地を売却した責任は?」と問題化。
 ところが同市議会は、これを継続審議としたのだ。
 関係者の話によると、同議会では「市町合併前の継続事業に基づく随契対象事案」、また「区長の承認に基づく売買」とか、地方自治法からは想定外の答弁が執行部から登場。 この想定外の答弁が出て、そこで継続審議とするようでは、同議会にあっても同事案では同罪。
 地方自治法及び市条例と照合すれば、それは即決の事案。
 そもそも同議会が5年間も「不承諾事案」というのも不可解な話で、議員としての義務を果たしているか否かであって、彼らにもコンプライアンスが問われる。
 天草パールマラソンの後、「市長は閉会後の公式典を抜け出して、親しい女性ランナーの打ち上げパーティに出席」という噂も飛び出しているが、そこで終わったところを考えると、「指をくわえた妬み」として品格が彼らにも問われる。
 もちろん、これらの課題が後述の事例を含めて、最も難儀な市民の政治意識に起因することを否定はしない。
 また隣の苓北町(田嶋章二町長)にあっても四月、同町議会において「町との事業契約者が暴力団と長年の関係」という問題が勃発したが、その事案が棚上げされた…
 九州電力の苓北火力発電所で排出される石炭灰(フライアッシュ)を再資源化(地盤、路盤、盛土材)する目的で誘致、設立された(株)エコアッシュ(苓北町内田)の井手元高行社長が、山口組系暴力団のS組総長(昨年一月引退)とは10年前からの付き合いで、そこには金銭のやりとりもあった…。
 苓北火力発電所から排出する石炭灰は、北九州や大分のセメント工場へ搬入する場合のコストに比べて4分の1(1トン当たり4800円)ということもあって、大方は地元のエコアッシュへ搬入されているが、そこで再資源化された建材のほとんどが苓北町に納入されている(年平均3474二トンで約1億6676万円)。
 それでは事案の根本的な問題だが、政府は暴力団対策法を制定し、市町村は「暴力団排除条例」を制定して施行していることもあって、各市町村は自治体事業との関係者に「同条例における誓約書」を求める。
 そこで先述の通り、町事業として契約(公共工事契約)するエコアッシュが暴力団と関係をもっていると、その物証を添えて内容が議会へ届いた。
P06_7 ところが同社の井手元社長は、彼も「暴力団とは関係がない」と誓約書を自ら提出。これは権利を有する弁明だが、同時に議会(関連委員会)で「情報発信者を名誉棄損で告訴する」と発言。しかし、日本の司法は「証拠裁判」にあって、証言に加えて「物証」まで提出されると正誤の審判は簡単。
 表現は悪いが、理解のしやすい形に換えると、泥棒と捕まえられた男が物証を出されて「泥棒ではない」といっても、その証拠がなければ起訴される。
 だが、苓北町議会は先述の提出された「物証」を証拠とせず、「否定」の話だけで推認したのである。それが公共工事契約(購入)2件の承認。何も誘致企業との取引が永久的に無効というわけではなく法、条例に問われている対象は同社代表。
 エコアッシュの代表に問われていたコンプライアンスが、ここで同町議会、執行部まで対象を拡げた。刑法161条、同246条、そして住民監査請求の対象となる地方自治法242条まで発生させたのである。
 みずほ銀行の反社会組織への融資、またホテルやデパートを揺るがしている食材の偽装問題を語るまでもなく、いま最も注視されているのがコンプライアンス。
 人生、会社の存亡に係わるコンプライアンスだが、条例を施行してもそれが守れないとなると、表現は悪いが児童らのルール以下。
「町長は震災の超安値(450円)の時に九州電力の株を3万株購入(現在1500円前後)。議員も何らかの形で九州電力、そしてエコアッシュの恩恵に授かっている」
 これは現地で出た噂だが、こうした噂の示唆する政治不満、不信より問題なのは、その結果での自治行政への絶望感。
 不満、不信はあっても住民側から監査請求等の政治行動が何ら生まれないというのは、自治体崩壊の前兆ともいえる…。

 次は地域少年らに「違法を合法化」して見せた菊池市議会…。