熊本レポート

文字の裏に事件あり

熊本県の疑惑公共工事を考える市民講座 第8回 宇城広域連合と日立造船

2019-08-26 | ブログ
2016年4月、大分県の宇佐・高田・国東広域組合が予定していた新環境(焼却炉)施設建設へ向けた入札が、その寸前にストップとなった。
同入札に参加を予定していた2企業体の1企業体が、同入札の前になって辞退し、その企業体に参加の地元業者が「官製談合の疑いが濃く、暴力団による圧力があった」と訴え出て、入札は停止(2017年2月解除)。


ここで関わっていたのが、日立造船で、この後、同社は菊池環境保全組合による新環境工場建設の入札に挑んで来た。それで大分県の事件絡みの延長と、同入札を見たのである。
そして同入札で日立造船は落札し、約180億円もの受注となった。
そこで、業界の若い営業マン辺りから浮上した「日立造船はなぜに熊本県では強いのか?」(八代市、菊池環境保全組合と約180億円の事業を連続受注)といった、興味を背にした疑問符であった。
確かに鮫川村での同社の焼却炉爆発事故、そして先の大分県での事件絡みの入札も関係なく、見事と思える程の実績づくりである。
それに応えたのが1973年当時、日立造船の企業誘致に関わった旧県政の人物。
「誘致企業第1号として、県は全面支援を約束」(前述)
だが、今や日立造船は熊本県から撤退し、何の忖度が働くというのか。
「いやいや、所望されての県三役クラスの天下り(日立造船)があった。これは極めて珍しい事です。まして、判決する側(審査会・日本環境衛生センター)にも熊本県OBが所長として在籍」(業界事情に詳しい地元設備業者談)
それでは、色々と問題となっている「天下りへの忖度」である。
しかし、断っておくが、いま計画段階にある宇城広域連合の新清掃工場建設が、日立造船への発注に事前決定していると、そう断定しているわけではない。
20年程前、日本のビッグ企業である新日本製鉄の担当部長が、入札後にアメリカへ逃亡(転勤・不正入札とは異なった理由)したり、また先の大分県での事件等もあっても、そうした意味ではなく、あくまで、ここまでの検証から浮上する想定であって、単なる関係者の噂である。
確かに陸に上がった日立造船は強く、ちなみに宇城広域連合は宇土浄化センターを日立造船、浅野環境という親子に38億円で発注。
それで、10月頃には入札結果が出る同広域連合の入札について、
「日立造船は100%子会社のエスエヌ環境テクノロジー(大阪市此花区)を押し込んで来るのではないか。その理由が2ヶ月後での同広域連合での規模縮小修正(前述)。日立造船の真の狙いは天草市」(前述の業者談)
噂も、ここまで複雑となると、その理由はと、尋ねたくなるのは当然…。

※この連載は再編集し、資料を添付して9月末に冊子で刊行予定。

熊本県の疑惑公共事業を考える市民講座 第7回 宇城広域連合と日立造船

2019-08-23 | ブログ
2013年8月、福島県鮫島村に建設された仮設焼却炉施設で、10キロも離れた集落でも衝撃音を感じた程の爆発事故が起きた。
その焼却炉の建設と同運転管理は日立造船であったが、その1年後の014年9月、環境省は「運転ミスも含まれる焼却炉から漏れ出た燃焼灰による爆発」と、同事故の検証結果を発表。
そして、その頃である。
「3月、沖ノ島で桟橋工事を行っていた新日鉄と五洋建設が人身事故」
意外な情報が届けられた。
それは事実であったが、振り返れば発信元は日立造船の関係者。
震災、原発事故から立ち上がれない住民に追い討ちを掛けるような事故の当事者が、「他人の事故をチクる立場にあるか」と、その厚かましさ、不謹慎さは常識から問われる。その意図は、明らかに八代市での営業にあったわけで、その根性には驚く。
確かに当時、造船不況から同社は株価の下降傾向を大きく示し、熊本県からの全面撤退前にはあった。
この時、撤退はするが、「全面支援の約束だけは果たして貰う」と、手前勝手な発想から浮上したのが人的パイプの再構築。


ここで介在、仲介したのが誰かは後に残すが後の、これが山本理氏の日立造船への天下りであった。
そして2015年、八代市の新環境センターは先の新日本製鉄、また神戸製鋼等は除外されて、日立造船が運転管理ともで約180億円で受注。
この時、「市議団東京視察での
延長で園田代議士事務所における逆転説」、また「下請け業者の統一窓口」とかの情報も浮上したが、これらは他のケースでも有り得ることで、ここでは省略する。
ただ、後に運転管理において日立造船は地元の下請け業者とトラブルを生んだが、その下請け業者の「地元への還元が感じられない」とは、20年間の運転管理費61億1944万円を指しての、その下請けの言い分。
日立造船の「熊本県との強い繋がり」として、悲願であった県三役の山本氏が天下って来ると、次の狙い は同じく約180億円の事業計画で、菊池環境保全組合による新環境工場の建設、同運営であった。
それは、刑事事件まで発展した大分県宇佐市での日立造船VS荏原の延長戦でもあった…。(次号へ続く)

※この連載号は9月末に再編集し、資料を添えて冊子にて刊行予定。

熊本県の疑惑公共事業を考える市民講座 第6回 宇城広域連合の廃棄物処理施設 5

2019-08-18 | ブログ
1970年、田中角栄による日本列島改造論に沿って九州自動車道路の建設が始まり、また新産業立地政策により太平洋ベルト地帯から地方へ工業地帯が延び出すと、第一次産業中心の熊本県も企業誘致に積極的に動き出した。
菊池川を水源とする豊富な工業用水を武器に、大牟田市から荒尾市と延びる有明臨海工業地帯として、玉名郡長洲町町に工場団地を建設。
早速、そこへの進出に応じたのが、第3次輸出船ブームを迎えていた日立造船(大阪市此花区)。


「1000名からの雇用に繋がる大企業の誘致として、熊本県は全面的な支援の約束を交わした」(当時の関係者談)
全面支援とは言っても、建造された船を買える(熊本県)ものでもなく、生産工場として、整った環境を提供するのが関の山。
「だいたい日立造船が、ごみや下水等の環境設備(施設)も造っているとは知らなかった」(元県議会議員)
直接、それに関係する市町村議員や首長はともかく、「全面支援」を約束した熊本県の大方の県議会議員は、その程度の理解にしかなかった。
もちろん、日立造船側も環境施設の
売り込みに消極的であったわけではない。1990年には熊本市から400t、また1993年には天草町(現天草市)から17tの清掃工場建設を受注し、それに関連会社のアタカ大機が県内市町村へ汚泥処理プラントを納入。これに県内市町村におけるごみ焼却炉施設のフル操業(非改築)期間を差し引くと、決して結果的には「全面支援」を反故にしていたわけではなかった。
だが、造船業界が不況に入ると2002年、その日立造船有明工場は日本鋼管(現JFE)と合併したユニバーサル造船の有明工場となり、2015年には更にIHI(石川播磨重工業)と合併したジャパンマリンユナイテッドの有明工場に姿を変えると、日立造船は熊本県から撤退(注・同社株8%所有・小型船舶のエンジン製造会社は長洲町に存在)。
これが、「船を造らなくなった日立造船の熊本県からの撤退」である。
こうして大阪工場を中心にし、環境プラントの生産を主事業とするようになった日立造船の経営状況なのだが、2014年に800円であった株価が現在は347円。2019年3月期の決算によると、第2四半期だけども86億円の赤字を計上。
こうなると、外交問題での某国の理屈ではないが、「約束を交わした県の全面支援はどうした?」と言いたくもなる。




こうした最中、熊本県環境局長から会計管理者、その県三役クラスまで務めた山本理氏の日立造船への天下りである。失礼な例えとなるが、自らハローワークを通じて再就職というのはもちろん、頭を下げて日立造船の門を潜られた形でないことだけは確か。
丁度、それは福島県鮫川村の日立造船による仮設焼却炉での爆発事故の頃でもあった…。

※この連載は再編集、資料を加えて9月末には小冊子で刊行予定。



熊本県の疑惑公共事業を考える市民講座 第5回 宇城広域連合の廃棄物処理施設 4

2019-08-15 | ブログ
リニア新幹線工事における談合問題で、東京地検特捜部の取り調べに対して「誘われて断れなかった」と清水建設は応え、その捜査中、工事予定地を大成建設が先行して購入し、それを発注者であるJR東海に譲渡していることも判明。
また公判中、鹿島は「発注先が既にJR東海の方で決められていた」とも証言した。
ところで現在、熊本県では14市町に副長として、田嶋副知事の尽力もあって(某代議士事務所の秘書も関与)、熊本県からOBが天下っているが、菊陽町議会ではその副長に対して「辞職勧告」を決議し、彼を追い出した。副長は入札の責任者として指名権を持つが、それが理由の全てではないものの、「偏った入札指名」という不満が議会にあったことは確か。


こうして述べると、公共事業の全てに官製談合があって、発注者が先に決められて準備が図られる状況に受け取られやすいが、その全てがそうだとも言えず、また、そうした形で事業化が仮に図られても公平、公正の上で否定されるとは限らない。
限定して語れる話ではないが、小さな自治体の中で息子は役場、娘は漁協に勤務し、本人の親は細々と農業を営み、隣は高齢者二人を抱えた生活保護家庭。即ち、地域の8割以上が補助金を含む公費に頼って生活している自治体も現にある。ここでは利益誘導も忖度も当然な必要プロセスなのである。
日本の地方は特に忖度、利益誘導へ向かう上で、既得権益の生まれやすい構造となっている事だけは確か。
さて、10社前後の廃棄物処理メーカーのある中で2015年、八代市の新環境センター(建設、運営180億円)、そして2017年には菊池環境保全組合の新環境工場(同)と日立造船所が連続して受注すると、「何んで熊本県では日立造船だけが強いのか」と、競合するメーカーのベテランとは異なり、若手営業マンらには衝撃が走った。
その答えが、こうだ…。
「1973年、熊本県は玉名郡長洲町の海岸に工業団地を建設したが、その企業誘致の第一番手として応じてくれたのが日立造船。その時、熊本県の全面支援を約束し、人的派遣も交わした」
当時の関係者談である。


その結果が、八代市と菊池環境保全による連続発注(約360億円)と断定はしないが、一つの参考にはなる。
予想通り、八代市が180億円を発注すると直ぐ、その人的派遣は熊本県三役クラスとなり、熊本県で環境局長を務め、会計管理者で退職した山本理氏が日立造船へ天下った。
そして、その貢献とは断定しないが、続いて菊池環境保全の180億円の受注である。
同社熊本営業所は、それまで目立たない事務所を熊本市西区二本木に置いていたが、それを同市中央区上通りの新築ビルに移転。
その頃に受注したのが、今回の宇城広域連合からの38億円。いやいや該当事業ではなく、同連合が宇土市で稼働させている浄化センターの改修工事で、それを浅野環境との親子で受注。
日立造船の誘致企業第1号は理解し、その熊本県の全面支援という密約も納得はしないが理解は出来る。
だが、その密約が義理を果たす必要のある形で、現在も生きているか否かであるが…。(次号へ続く)

※この連載は9月末頃に再編集の上で冊子として刊行


熊本県の疑惑公共事業を考える市民講座 第4回 宇城広域連合の廃棄物処理施設 3

2019-08-14 | ブログ
特別交付金で循環型社会形成を支援するというエネルギー回収率15・5%以上の国策について、それを僅か2ヶ月間で曲げて修正し、10%に戻した宇城広域連合。
その背景を金融機関に例えると、国策に応じた場合は三菱UFJ、三井住友、みずほ銀行クラスが取引対象に絞られるので、その対象を福岡、りそな、肥後銀行クラスに拡げる必要が出てきて、そこで計画規模をダウン化したというのが先の見解。
さらに具体的にいうと肥後銀行か、または鹿児島銀行と取り引きするべく、アドバイザーである日本環境衛生センターが規模の縮小へ向けて計画を修正というのがベスト。


これが最も理解しやすい想定と、外野席の専門家は語った。
もちろん、これは宇城広域連合には失礼な話で、決して断定するものではなく、この業界に精通した関係者による一つの想定である。
この時、「後に続く事業と連係して考えた時」という条件も出たが、この条件は意味深いもので、それは時期を見て述べるとする。
さて、問題の発注先だが、10月中旬頃には決定すると思われるが、それは総合評価方式競争入札で実施。
入札条件をクリアして、それに参加した業者(廃棄物処理施設メーカー)の提出資料(技術採点用)と、また入札価格とを評価し、その合算評価で落札、発注業者を決める訳だが、その合算評価の難しい事は確か。
その作業は、宇城広域連合が委託して設立した環境審議会の8名で審議されるわけだが、性能技術評価で最高採点を取ったからといって、その該当業者が落札するとは限らず、また入札価格が最も安価であっても同じく落札するわけではない。あくまで合算評価である。
当初の受付の際、発注側が提示した条件をクリアしての入札なので、どの業者が落札しても構わないという考えも外野席には生まれるが、発注側が全く意図としない業者の落札では困るというのは当然。
表現は悪いが、この審議会について「繕いの場」と語られる理由がそこにある。それだけに、なおさら審議会における採点、合算作業は極めて困難ともいえる。
ここで審議会メンバー8名の中で、副会長を務めるのは前述した熊本県庁OBで、同事業のアドバイザーを委託された日本環境衛生センターの田北熊本営業所長。
そして会長は、元熊本県立大学教授の篠原亮太氏。この篠原氏は元北九州市役所職員という異色の経歴を持ち、専門は水環境。


副会長の田北氏も水環境が専門の技術屋で、この水専門家の会長、副会長で「火の焼却施設」が大丈夫なのか、そんな懸念の声も予想されるが、先に述べた審議会の仕事についてご理解を頂くと、その点は安心して頂けるのではなかろうか。
ところで、篠原会長について「難しい人」という印象が複数のメーカーから聞かされたが、個々の接触とはどの様なものか、それも想定内といえる。
さて、10月までの間にどのような業者が土俵に上がっているのか、これが外野席では1番の興味ある点だが、そこで話題の中心は、やはり田北氏と同じ熊本県庁のOB…(続く)

※この連載記事は再編集して9月末に冊子として刊行予定。