熊本レポート

文字の裏に事件あり

天草市下田温泉で考える災害レッドゾーンでの人災

2021-03-18 | ブログ
昨年7月、球磨川流域での大水害では死者52名、行方不明者10名という尊い犠牲を生んだが、その責任は誰にも問われず、自己責任で終わった。
その直後の事だが、温泉好きの夫婦が天草下田温泉の旅館組合(藤本貴士組合長)に電話を入れた。
「災害レッドゾーンエリアの旅館が在ると聞いたが、それは何処か?」
すると、
『それには応えられません』
と、愛想のない返事だったというのだ。
「源泉かけ流しの温泉、豪快な海鮮料理で憩いの一夜をお過ごしくださいと宣伝しながら、客の生命など何とも思っていないなんて、何が接客商売か」
その怒り心頭の矛先が、そのまま廻って来た。
想定通り、「熊本県、天草市の災害ハザードマップをご覧下さい。詳しくは法務局で簡単に確認出来ます」との熊本県、天草市両行政自治体の返事。
即ち、周知の必要性を持ってハザードの公表を行うとしながら、肝心な場所については個人情報が絡むと、「責任」を最も嫌う自治行政は先述の旅館組合と同じく、その関わりを拒むのである。


(防災システム研究所)

人の生命を危うくするハザードマップの公表が周知度として、どの程度、それが徹底しているかはともかく、該当地の住民なら理解も早いだろうが、先に紹介した観光客には、どのような手法で通知、周知させるのか。
自己事業の施設の中でも特に他地域から迎える観光客、その宿泊先の旅館、ホテルに在っては、その指導、管理の組合、市町村及び県には大きな課題だといえる。
災害ハザードマップの公表、その趣旨から敢えて回答をここでも繰り返すと、該当のホテルは「五足のくつ」。



源泉かけ流しの露天風呂、そして東シナ海を眺めながらの懐石料理と、そこは賑わいを見せる旅館だけ在って、レッドゾーン指定は不運なことも確か。
土砂災害防止法の制定、執行は平成11年6月、広島、呉市で発生した土砂崩れで、24名もの犠牲を生んだ事に始まり、警戒避難体制の整備、既存の住宅、自己業務施設の移転促進等が勧められ、法も都市再生特別法など改正が図られた。
土地災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域として、ハザードマップにはイエローゾーンとレッドゾーンとに区別されているが、該当の五足のくつに在っては、急傾斜崩壊危険区域であると調査報告された。
地元の話によると、「地盤整備の工事中、崩壊の事故も在った」というが、現状は明らかに深刻。
ここまで生命第一の観点からの報告だが、法に従っての移転や整備とは言っても、それが事業主にとって容易でない事も確か。
ところが「充分な補助制度を併用した法律」と、天草市及び熊本県の回答。
それでは、何故に推進されないのか、ハザードマップの周知義務と同じく、これが下田温泉旅館組合、天草市、熊本県に強く問われて来る。
他人の命は、自らの命より価値は重しである…。