何か薄汚い壁を粉々に叩き壊したくなるような、そんな蒸し暑苦しいTSMCバブルでの話である。
TSMCの日本企業であるJASMから6月21日、第二工場用地の土地代約48億4800万円が振り込まれた(全て数字は複数の関係者による見解からの推定額・以下略)。
週刊新潮は8月1日号で「JASM進出で消える農家」と現地ルポを掲載し、その2ヶ月前にはABC放送がテレメンタリーという番組の中で、「土地(農地)代の高騰と一緒に(同)借地代も異常に上がった」と、町(菊陽町)外に農耕地を求める悲痛な農家の実状を紹介したが、第一工場用地収容(022年)の場合(坪約3・2万円)と比べて、2年間で坪約5万円 と約1・5倍余りの上昇率。
ところが、先に述べた第二工場用地約60606坪の約48億4800万円からして、JASMは坪約8万円で購入(第一と比較して2・8倍)した訳で、その差額3万円の内訳、攻防は後編でゆっくり述べるとして、JASM側にだって「第三工場は菊陽町外」と同町への不満が出ているのも事実。即ち住民、JASM双方の不満は、早々とここでの結論となるが、何れも自治、菊陽町の対応能力。
「第一工場用地収容では、多額な助成金も絡んだ誘致企業として、その責任から住民(地権者)説明会を開き、上限(農地価格)を設定し、それを理解して貰って、町が同買収に介入」
後藤三雄前町長は、国策事業として町の当然な対応だったと語る。
国民一人当たりの負担額約1万円と試算される助成金約1兆2000億円が、このJASMには投下されている訳で、マスコミの「国策事業」も妥当な見解。
しかし町長が替わった第二工場用地の買収では用地は別物と、それが吹っ飛んでしまった。
「突然、地元の不動産業者から『第二工場用地の収容には不可解な動きがある』と聞いて驚いた訳だが、私たち町議員にも責任があるものの、町民への透明性、説明責任の欠落には呆れてモノが言えない。怠慢どころか、意図的に不管理だったとすると重大問題」
怒って語る上田茂政同町前議長。
『何で、こうなった?』
読者や視聴者が知りたいのは、ここである。
第一工場用地の収容が終わり、後藤町長が勇退して吉本孝寿町長が誕生した頃、全国紙の在阪記者が『第二は地元に儲けさせて貰う。建築はフジタ(大和ハウス)が良い』と、そんな仕切り屋の噂を聞いた。その噂の主を仮にZ氏とすると、そのZ氏の名前が後で述べる今回の主人公である㈱アスク工業からも周辺に漏れ出ていて、第一工場を竣工した㈱鹿島と比べて㈱フジタはランクが違い過ぎるとは言っても、この噂を無視出来ないのも確か。何故なら熊本市東区でアスク工業が以前、物流倉庫をJVで竣功させた相手がフジタ。Z氏は日台文化経済交流会の役員だが、同会が会員を募る親睦団体の域にある以上、同氏が詐欺師でもない限り『儲けさせてやる』というセリフなど、出て来ない中身にあるのも確か。
しかし見解によってはという想定もある訳で、仮に吉本町長がアスク工業、㈱坂本建設、㈱東築建設の地元特定3社に第二工場用地の収容を任せたとなると、Z氏が仕分けたのか、それともアスク工業から仕掛けたかはともかく、それが理由になった一つとも考えられる。
㈱アスク工業の上村信敏代表は、小口金融業から建設業に転じて成功を収めた立身出世した人物と語られるが、一方で彼には過去に脱税容疑の噂もある。それに021年のコストコ熊本店建設で造成工事を請け負った際、軟弱な地盤から土壌改良工事を行政から指摘、指導されたにも拘らず、それを無視するどころか、逆に釘やプラスチック類が混入した震災廃土を埋め込んだという噂も出た。
これが004年、完成工事高を水増し、同虚偽の申請書で工事参加資格の申請を行ったと、熊本県から営業停止処分を受けているとなると、それが悪質な違反行為だけに先の噂も真実では無かろうかと疑われる訳で、コンプライアンスでは決して褒められた企業で無いことだけは確か。
ところで第二工場用地の収容に関して、先出した推察の理由も含めて吉本町長は第二工場用地の収容をアスク工業、それに坂本、東築建設に任せた訳だが、アスク工業の場合、同社及び同社の不動産部門を担う㈱ジョイントが、用地収容を目的に該当エリアにある地権者の間を走り回った構図にはない。地権者の間を苦労して回り、買付証明を重ねて行ったのは、皮肉な事に同町が面会(協議)を避けた㈱エスエーグローバルの佐藤榮一氏。
佐藤氏については「前のバブル時代から熊本で1、2を争う地上げ屋」と語られる程、地元不動産業界では超有名な人物。また、ちなみに同氏は、ヤクルトスワローズの強打者・村上宗隆選手の祖父で、これまた地元では有名な話。
彼は熊本市内のマンション用地だけでなく御船町、合志市、益城町、菊陽町の大型商業施設、福祉施設の開発で彼は多くの実績を持つが、その彼が022年暮れから023年春頃にかけ、JASM側と頻繁に接触していたとの情報もある。何れにしてもアスク側で用地収容に努めたのはエスエーグローバルの佐藤氏で、それを菊陽町がアスク工業で行政処理したのである。
そのエスエーグローバルの佐藤氏に実務は任せ放しだったアスク工業が、「一番ここで儲けたのは坂本建設」と言い切るが、その坂本建設が意識して収容を残したエリアがあった。
エスエーグローバルの佐藤氏が024年3月頃、全国紙熊本支局の記者に「嫌な問題を残した」と呟いた。それが坂本建設が意識して収容を残したと、そうとしか考えられない同社担当であった謎のエリア、バミューダ・トライアングル。それが今回の該当問題でクローズアップされた山口組元直参組長と、福島知雄同町議長絡みの仮登記地で、関係者の語る『虫食い』であった…(後編へつづく)。