1トン当たりの卸売価格14万7000円。家庭用小売同価格32万5254円。
この価格、差額を念頭にして読み進めていただきたい。
「協力金は、5万円(一戸当たり)ではないですが、確かに支払いました」
二神石油ガス(熊本市南区田井島2丁目)同社長は、「証言者」の存在を告げ
て問い直すと、それを認めた。
同社は作州商事(樺島敏幸社長・福岡市博多区大博町)の販売するエイルマンションにおいて、エルピーガスを納入する条件で協力金を同社に支払った。
熊本市交通局前に建つマンションの場合、一戸5万円として98戸で約450万円。同市建設会館通りのマンションは、86戸で約430万円。
断るまでもなく分譲マンションにおけるプロパンガスの契約は、マンションの販売会社との間で発生するものではなく、購入した家主、オーナーとの間で交わされて成立。
また都市ガスと違ってLPプロパンガスの場合、消費者はその価格、サービス等から同契約先の選択権を有する。
プロパンガス業者は現在、能本市内だけでも130店(県内約600店)を超えるが、同マンションの消費者は、マンション販売会社の作州商事と二神石油ガスとの利益供与(協力金)によって、アクションでも起こさない限り同権利を失うわけだ…。
「パンフレット製作代、マンション販売における営業等の協力金という名目で求められ、支払いました。処理は税理士と相談の上で処理」(ニ神社長談)
何ら問題はないと応えた。
民間会社同士の協力金は、どの業界においても確かに存在する。菓子折りの贈呈から食事の接待まで、それは常識といわれる美的慣習でもある。
しかし問題なのは金額で、それが300万、400万となると、明らかに慣習の域を超えた利益供与。
それが下請け業者に大きなリスクを発生させたり、その付けが消費者に回ってくることから建設省(国土交通省)、通産省(経済産業省)は「禁止通達」を出した。
その背景にあったのが、独占禁止法を巡っての訴訟。
同法第二条では定義として「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと」、「不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、または強制すること」、「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること」を禁止。
「問題があるとしたら三項目の『優位性』を利用しての示唆」
公正取引委員会(九州事務所・福岡市博多区)の審査官は、第三者の情報における見解と断った上で回答。
そこで一方の作州商事の見解となるが、これについて同社の中崎総務部長は「協力金を貰った事実はもちろんだが、要請した事実もない」と回答。
それでも「支払った証言者がいる」と念を押すと、同部長は「社内調査の時間」を求めてきた。
ところが替わって企両部長の翌日に返した回答は、
「プロパンガス業者から協力金を受け取った事実はない」
全面的に否定。
これでは「営業パンフレットの製作費…」で示唆し、公務員の平均賞与額における四倍から五倍の協力金を受け取った、作州商事の領収証まで提出した男は果たしてどこへ行ったのか、と不可解な話。
真実は一つという観点から推察すると、脱税容疑へ続く領収証の不存在である。
同社は2006年、怪物と称された社長の故城戸辰徳氏が、脱税容疑で福岡地検に逮捕された頃から坂を転げ始めた(経済誌主幹)と語られる。
同8年に同社長が死去すると、福岡シティ銀行(西日本シティ銀行)出身の樺島社長がその任を受け継いだが、銀行出身で堅い経営手法と評される割りには契約、販売後のユl
ザーとのトラブルが相変わらず多い…。
篠栗町(福岡県)のエイルマンションでは雨漏り、外壁のひび割れ、床のたわみ等で住民から損害賠償を求められた。他にも土地購入に関する案件も含めてトラブルは多い。
ところで先述の試算は一戸当たり5万円の協力支出だが、それが3万円でも利益供与。
それを渡した側の証言が複数もあっては、作州商事の強気な姿勢は同社社員の個人的な行為(犯罪)なのか。だが発生するのは領収証の不存在という推察で、双方の脱税容疑。
繰り返すが、契約者、当事者である消費者を抜きにして、該当の契約に関わる取引に何百万円もの大金が動いたとなると、双方のコンプライアンス(遵法)は明らかに問題。
住民が察知せず、修正の行動が執られないから平穏無事に通っているが、消費者の商品における自由な選択権は、この不当な大金によって半強制的に奪われたのである。
仮に住民からクレームが出ないからと、独禁法では民と民との商取引だと寛容に解釈、片付けられても脱税容疑もそうだが、社会的な倫理観は明らかに問われる。
(社)熊本県エルピーガス協会(佐藤逸郎会長・熊本市中央区上水前寺2丁目)は昨年末、自主ルール(ガス切替時)改訂を実施。
供給契約者(消費者)がLPガス販売店を変更する際、その手続きが安全、円滑に行われることを目的にした協会内のルール改訂。
内容は極めて常識的な改訂だが、この素案を進めたのが今回の事案における主人公の社長(同協会経済委員会副委員長)。
すなわち一般市民の声を借りると「協会内のルール改正の前に本人の倫理観」で、これが一般的、常識的な見解。
しかし、その主人公を弁護して業界から出たのが、「彼だけではなく問題は業界全体。ワルの大物は他に居て、それは卸売り業者、機器メーカーとの癒着まで拡がる協会自身」という取材への反発から出た詳細、多量な情報。
賃貸マンションの住民、また医療福祉施設等に問題は拡がるが、その背景にあるのが冒頭に紹介した卸売価格と小売価格との差額。
市民に驚愕のストーリーは、いま序論のスタートである…。