信頼を欠く政治家はもちろん、そうした政治腐敗の批判に終始し、期待される政治の改善が一向にできない政治家も「無用」だとする大学教授らの「落選運動」が注目され、来年の統一地方選挙に向けて各地の野党議員も戦々恐々にある。
そこまでの9ヶ月間の議席を巡って、村上寅美氏の死去に伴って熊本県議会議員の補欠選挙が、熊本市第2選挙区(定員2名・7月22日)では行われる。13日の告示に向けて出馬に名乗りを挙げたのは元職の井手順雄氏(58歳)と新人で故村上県議の秘書を務めていた竹﨑和虎氏(44歳・竹﨑芦北町長の子息・林田威元代議士元秘書)、それに共産党の益田牧子さん(68歳)の3人。
自民党熊本県連(前川收会長)は「2議席確保に党をあげて戦う」と6月21日、井手氏と竹﨑氏の2人を公認候補としたが、考えづらい法定得票はあっても投票率5パーセント以下でもならない限り、2人の当選は確定と想定される。
ところで、この両氏だが反野田(野田毅代議士)、非野田の候補。そこで野田派市議、市民からは「野田支持」の踏み絵が出された。それでは野田派自らの候補はとなるが、そこは来年の統一選挙を考えれば、それは現職で満杯の試算。
9ヶ月の県政か、それとも4年先以上を見据えた県政かを考えると答えは簡単なのだが、表上の礼儀は当然。その政治家同士の約束ごとは守られた試しがないとなると、第三者の興味は投票率だけということになる熊本県議補選の熊本市第2区。
ところで低調ムードのこの県議補選に比べ、その裏で火に油を注ぐように過熱化する一方なのが、熊本県漁業協同組合連合会(熊本市西区中原町656番地)の会長選挙。
熊本県における海の男(もちろん関係する女性も含む)らを代表するのは誰か、という単純な選挙に考えがちだが、海の資源保護はもちろん、湾岸道路、架橋建設、それに河口に堆積した砂の改善事業まで深く関与となると、その選挙に舟を係留してでも駆け付けるのは当然(H24年には4ヶ月天下も経験)。
この6月末の会長選挙では現会長の上田浩次氏(熊本北部漁業協同組合長・長洲町)と、川口漁業協同組合長(熊本市)の藤森隆美氏との一騎討ちと想定されて、県内漁協長の間で票読み、巻き返し策が練られていたが、何と現会長の上田氏が第1部会(荒尾、玉名市地区)の理事候補選挙で落選(5月26日)するという事態となって、これを不服とした上田氏が訴え出て現在、会長選挙は紛糾、混迷の状況。
県漁連の会長選挙は、地域別の6部会がまず各1~2人の理事候補を選出。そして、その選出された候補の中から役員推薦会議で8人の理事が決められ、今度は総会によって、その理事の中から会長を選出するという方式。
話を戻すと、第1部会の理事候補2人を選ぶ選挙では上田氏と滑石漁協の橋本孝組合長、それに荒尾漁協の組合長を務める矢野浩治組合長の3人が立候補。
投票方式は漁協2票ずつの複票方式(自己名投票+相互信頼準票)なのだが、上田氏を推す2漁協が2票とも同氏の名前を記入した結果、3候補が4票で並んだ。この結果、第1部会は上田氏の得票は2票と判断し、4票を獲得した橋本、矢野両氏を理事候補として推薦。
第1部会の部会長を務める橋本氏は、「2票に同一名前を記入しないと、それは事前に何度も確認した」と語り、一方の不服とする上田氏は「投票前に1票制や同一名記入を認めるように訴えた」と主張。
役員推薦会議は、現会長(上田氏)に召集権があって、こうした状況から会長選挙の日程は未だ決まっていない。
森林組合はもちろん、農業協同組合でも想定されない程の権益、また背景の代議士派閥、そして捕る魚より期間はどうあれ栽培の貝類、海苔等の収益割合が極めて大きい現在の漁協を考えると、こうした争いも想定内だが、それだけに第三者には、自ら覗けばワールドカップに準ずる興味ある熊本県漁業協同組合連合会の会長選挙・・・。
勝者なき和解か、それとも両首を賭けた徹底抗戦なのか。
アメフト部問題で世論も総参加して大揺れの日大とは異なり、記者クラブに上がらない結果での無報道もそうだが聞か猿、言わ猿を決め込み、真相をベールに包んだままの学校法人熊本学園(目黒純一理事長・熊本市中央区)の問題は、攻める志文会(同熊本学園大学同窓会・約93000人)側にも焦りの色が見え始めた。
ただ、この二つの私学に一致していることは「私学運営を巡る問題」であって、「誰が嘘をついて、何が真実なのかが市民には理解のできる事案」(志文会会員談)で同じことだけは確か。
目黒理事長は同学園が運営する熊本商科大学(現・熊本学園大学)を卒業後に熊本振興㈱(現・熊本ホテルキャッスル)に入社。だが1967年、同社を退社して熊本学園事務局に入職。そして同事務局の総務部長、事務局長、同学園の常務理事を歴任した後、2015年に第9代同学園理事長に就任して、現在は2期目。すなわち1992年(総務部長)からの25年間は、同学園における運営の実務的な中心にあって、その運営上では極めて大きい責任にあった。
説明するまでもなく学校法人熊本学園は、創立家がオーナー理事長として君臨して来たわけではなく、そもそも原資は国民の税金という公費の助成によって運営される公益法人であって、一般の私企業とは大きく異なり社会性が高く、「聞かざる、言わざる」など許されない社会責任の大きい法人。
017年度、私立大学には総額3153億円の公費補助が実行され、震災の私立大学には18億円、また授業料減免等の充実について102億円の助成を実施となった。ちなみに熊本学園には、この前年度である016年度、一般・特別の計10億5522万円の私学補助が交付。
これを念頭に熊本学園と志文会側との対立事案を紹介するが、
「熊本大震災における被災学生330人の学費免除(総額2億6400万円)が決定(熊本学園)し、それを折半(1億3200万円)でと支援負担が志文会側に求められて、それに応じた」(志文会会員談)
ところが、その後で国から総額の3分の2(1億7600万円)が助成されたことを知った志文会側は、「3分の1(8800万円)の折半(4400万円)支援が妥当であって、8800万円(1億3200万円-4400万円)は返還して欲しい」と学園側に迫った。
だが学園側は「寄付であって返す必要はない」と、これを拒否。それに「寄付だから『嫌』ならするな」(目黒理事長)という姿勢が見られたことで、これに志文会側は激怒し、目黒理事長の品格、能力に疑問を抱いた。
それに、もう一点の志文会側が疑念を持ったのが奨学支援の問題。
「この20年間、毎年1500万円の奨学支援を行ってきたが、それが5000万円の余剰を生んでいた」
この余剰金5000万円は志文会側負担の3ヶ年分に相当し、「調整するか返金するのは当然」というのが志文会側の言い分。
先の種々の公費補助からしてもそうだが、目黒理事長の語る「寄付だから返す必要はない。不服なら応じなければよい」という主張が、果たして通る中身であるか否かである。
私学の学校会計では減価償却累計が計上されず、薄価すら分からないとされるが、そこには借入せず寄付や補助金で建物を新設すれば、無尽蔵に資産は増えるというトリックも存在する。
日大問題では学校施設の建設業者、納入業者まで巻き込む疑惑まで発展しているが、熊本学園の施設建設に向けた受注業者にも容疑の掛かる流れがあって、その下請けまで志文会の中で相対関係を生んでいるのも確か。
熊本学園は現在、同学園敷地の西側(同市同区大江2丁目1903-10・約1400坪)に約13億円を投じてスポーツクラブの施設を建設中。
これはルネサンス熊本に継続貸与を予定しての既設の移転改築だが、「学校法人は教育に支障がない限り、その収益を私学運営に充てるため事業を行うことができる」(私学法第26条第1項)とはいっても、文部科学省における教育施設の復旧整備に向けた震災補助が未だ行われている中で、果たして「13億円も投下されるビジネス施設の建設が優先されるか」という点、また新たな施設を提供しての収益事業は委託(私学法違反)には当たらないかという点など疑問の声も挙がる。
017年8月、熊本学園は「不動産賃貸業、駐車場業、貸事務所業」での収益を学校の経営に充てるとし、その収益事業を法人定款にて変更し、同年9月にそれを登記。
私立学校法人が私学法第26条に基づき新たに収益事業を行う場合、私学は寄付行為(定款)を改正して所轄庁(文部科学省)の認可を受けなければならないが、それを所轄庁は私立審議会等の意見を聴いて決定し、それを所轄庁は公告する必要がある。
これから考えると、先の疑問点における審議会メンバーの審議内容も注視されるが、熊本学園の収益事業としてのルネサンス熊本への施設貸与(不動産業・貸事務所業)は、昨年8月以降に文部科学省は認可したということになる。
ところが熊本学園は005年2月、JT(日本たばこ産業)から同地、同施設(既設)を譲受すると、継続して年間8000万円でルネサンス熊本に貸与。
「平成17年に文部省の認可は受けている」(目黒理事長談)
私学法に問題があるとするなら、それは「文部科学省側での問題」というのだ。
深刻な定員割れの私立大学・短大(47%)が発生している中で、大学の学部学科39増設という不可解(矛盾)な施策、またモリカケ問題等における文部科学省の対応を考えると、「嘘をついているのは文部科学省」という見解も決して否定は出来ない。
志文会強硬派の「目黒理事長には運営責任者として品位、能力に欠ける」という意見が妥当なのか、それとも「運営には何ら問題なない」(問題は所轄庁の責任)というのが正しいのか、その文部科学省私学行政課の見解が注目される。
学校法人熊本学園には、長期的に棚上げされた管財の別問題も存在するが、「志文会93000人の中での結論付けのためにも『勝者なき和解』など許されない」というのは確か・・・。
冒頭から余談となるが5月8日、金沢競馬場の2レースに八百長疑惑が浮上。1番、2番、3番人気の馬が3着外となり、3連複5万9410円の大穴が出た。実はここまでなら時に有るケースだが、投票した3頭の馬が1着から3着までの順位に関係なく当たり馬券となる3連複馬券より、1着から3着までの着順を的中させる3連単的中馬券(4万6600円)の方が安かったことで、馬券購入側の客がネットで取り上げ「八百長疑惑」となった。
パソコンやスマホで馬券の購入が可能な時代では、分刻みで馬券の購入状況がデータとして出て来るが、締め切り1分前に変動のまとめ買い(3連単当たり馬券・急激な配当率ダウン)のあったことも判明。さらに出馬表を覗くと着外に消えた1、2、3番人気の馬は所属するのが同一の厩舎。
だが、金沢競馬場は「関係者の事情聴取の結果、不正と確証できる具体的な事実及び証拠は得られなかった」と発表。
大穴が出て即、「逮捕」という忖度での行為も逆に違法だが、誰の指示なのかはともかく、関係者はもちろん調査、捜査する側に自己保全による忖度の動いたことは想定内。
市民、国民には「誰が嘘をついて、何が真実なのか」が読めても、不可解な出来事の実に多いのが現代社会。
今回の熊本学園問題も同じといえる。
被災した学生、奨学資金に向けての支援金が多額(8800万円、5000万円)の余剰となった場合、それを「寄付金だから返す必要はない」という論理が通るだろうか。
こうした志文会役員の追求に際し、同会内から「役員改選前に事を持ち出してどうする・・・手頃なところで幕引きはどうか」と、手打ちを促す忖度も問題。
こうした背景を推察すると、この事案は永久保存版の可能性も当事者らには高いが、改めてここで断っておくと、問題は「目黒理事長が1億3800万円を横領した」とかいう刑事問題ではなく、他の私学と同じく少子化時代で岐路に立つ私学運営上の問題。
それを「弁護士、警察に相談中」という動揺が不可解な話で、これも理事長の任にあるか否かが問われる点。
繰り返すが熊本学園は現在、熊本法務局と対面する側に約13億円を投じてスポーツクラブの施設を移転建築中。施主・熊本学園の表示は存在しても、借人であるルネサンス熊本の家主が同学園であることを同学園の生徒、学生らの大方には初耳状態。
熊本大震災による被災学生らへの支援が論じられている最中、学校教育施設の復興整備が優先されるべき背景にあって土地、施設の不動産業のために多額の資金を投資する姿勢は、やはり私学運営者としては不可解。
平成17年、同地は同施設(スポーツクラブ)と供にJTから譲渡されたのだが、熊本学園側は購入すると直ぐ、同地を分筆。「回答できる段階てはない」と質問を拒否(同学園管財課)された以上、その分筆の理由は想定の域に入るが、施設の該当番地に建物登記が不存在(熊本法務局)というのは実に不可解な話。
ここで発生する問題点は、同学園の学生も大方は理解できると思われるが、これについて「登記も存在するし、税金も納めてある」というのが第三者を介しての目黒理事長のメッセージ。
また法人の定款は該当法人の基本規則とされるが、学校法人等の公益法人における定款の変更には、主務官庁の許可を要する。
すなわち学校法人の新規収益事業には文部科学省の許可を要し、その許可をもって同定款の変更となる。
熊本学園は昨年8月、「貸事務所、駐車場業等の不動産業」を新規収益事業として定款変更しているが、先に述べた平成17年度からの不動産業については「文部科学省の許可を得ている」と、同じく第三者を通じての理事長の回答。
冒頭の例えと同様、「誰が嘘をついて、何が真実なのか」ということになるが、文部科学省私学行政課からの夏休み前までの見解が待たれる・・・。