約1000兆円という超膨大な借金を語るまでもなく近い将来、日本の福祉はそうした「財源不足」から危機的状況を迎える。ところが一方、特別老人ホームの「余剰金2兆円」という極めて矛盾した現象をご存じだろうか。
支出する国の方は「金がない」と渋い表情を見せる中、公的資金の支援を受ける福祉施設には「金が余っている」となると、これは矛盾というより異常的な現象。その元凶は誰かとなるが、これは福祉を授かる利用者と、財源として支出する国民との中間に存在する者で、それは明らかに行政と運営者による問題。
熊本市は昨年10月、元市長が理事長を務める社会福祉法人G会(熊本市北区龍田)が1990年と2002年において、実態のない架空の工事代金6千万円を建設会社へ支出していたと、その不明朗な会計を指摘、指導。
続けて今年の4月、同法人が運営する三施設で、不正配管を設けて井戸水の取水量を誤摩化し、下水道使用量の一部徴収を免れていたことも指摘。
一方、熊本市外の社会福祉法人を管理、監督する熊本県健康福祉部はどうかというと、表現を換えて「熟柿の落下期待型」である。
それはOBの再就職候補先として露骨な違法、破綻寸前まで待機するという行政の私的パターン。
オフレコながら元担当職員が「明らかに問題と事例を報告しても、それは『指導要項までには至らず』と却下される」と語ったが、その却下された二例を紹介する。
合志市から大津町に向かうルート30沿いに立てられた看板が、二年して大きく変化。
写真で紹介の通り大きさが5分の1以下に縮小されて、内容も謙そん気味なイメージに様変わりした。
それが指導の結果かということになるが、看板の主は社会福祉法人S会(菊池郡菊陽町)。
同法人の目的は「相当程度の作業能力を有する精神障がい者に対して、社会復帰を目指すことへのサポート役」である。
だが、同施設利用者の保護者から一昨年、同法人が「大衆浴場をスタート」させたと疑問視する声が届いた。丁度その頃、同法人は「社会福祉法人の資金が立て替え金という名目で法人外(理事長夫人が経営の有限会社)に流出」と、県が速やかな回収を求めていた時でもある(改善指導は2009年)。
さて、その大衆浴場だが開業の際は折込み広告が菊池郡内に配布され、インターネットでも紹介されて源泉掛け流し、露天風呂、貸し切り風呂、サウナ、また料理長の提供する御膳と、明らかに一般市民向けの保養、娯楽施設。極論の言い換えだが、宗教法人によるパチンコ屋の開業である…。
「社会復帰への指導、訓練場所では…?」
当時、未確認であった県の担当課は逆に質問を返したが授産施設、すなわち障がい者の社会復帰をサポートするような施設とは想定できない環境設備。
ここで問題なのは逆質問がそうだが、開業して一般の健常者に広告で案内されても指摘が「初耳」であった県健康福祉部。
社会福祉法人の理事長が、営利事業(大衆浴場及びサウナ、レストラン等)に精を出すことを禁ずる法律はない。
しかし社会福祉法人の施設内における利用者外の営利事業、そして基本財産の担保提供(銀行)には問題があるのではないか(社会福祉法人定款準則14条)というのが疑問。
「事業欲旺盛な理事長で、高級車で現れる夜の街では常連」
事業プランへの協力を打診された建設業者は、一般市民が描く社会福祉法人の理事長とは少し異なると語った。
社会福祉法第1条の目的に「公明かつ適正な実施の確保」という一項がある。同事業が公金で運用される以上、その確認、知る権利は国民の誰にでもある。
その透明性のために管理行政は何をすべきか。極めてレベルの低い注文となるが、それが義務、責任として県健康福祉部には求められているのではないか、
そういう事案の基本をあえて市民からの疑問として続けるが、美里町の建設業者から「20年前から施設の建設、改修を特定の業者へ継続発注している社会福祉法人」という話もある。
公的資金の提供が存在するわけで、社会福祉法人の発注には透明性もある競争入札が義務づけられている(公益性からの公平性)。
社会福祉法人S2会(間美里町二和田)は2011年、嘉島町上仲間の約258坪に老人ホームを建設して2012年4月、それを特別養護老人ホームとしてオープン。
その施工業者が、該当地の建設業者が名指ししたM建設(熊本市東区)。
同社会福祉法人が開設された1994年、特別養護老人ホームを建設すると次は在宅介護支援センター、そしてグループホーム、高齢者生活支援ハウス太陽の丘、ヘルパーステーション、それにコミュニティーハウスと、先述の特別養護老人ホームまで全て実施された入札での落札者、施工受注者はオールM建設。
約20年間において実施された7件の建築工事及び改修工事の入札で、落札したのは全てM建設。果たして「偶然の結果」であるのか、それとも「異常的な事例」か、ということになるが、一般市民の間でも不可解に思うのは当然。
ここで「何が不信なのか」という不満はともかく、「関知する権利がどこにあるのか」といった該当者サイドからの不可解な疑問に応えると、それは『社会福祉法人が国民の支出により運営されている』(厚生労働省老健局高齢者支援課)という背景で、これに『要らぬ世話』の姿勢では福祉事業の認識の上で極めて問題。これは、先述した「社会福祉法第一条の目的」にある。
そんな中、継続受注の三津野建設には「名誉施設長(同社会福祉法人の理事)の娘婿が幹部社員として在籍」という話が、同競争入札で参加歴を持つ建設業者から入った。
厚生労働省が定めた社会福祉法人定款準則第九条第七項に「特別の利害関係を有する理事は、その議決に加わることはできない」と定めている。
これについて県健康福祉部高齢者支援課は「理事本人が建設請負業者である時は『利害関係』といえるが、娘婿の場合は利害関係とまではいえない」と回答。法律の趣旨か、解釈かという違いになるが、熊本県の「問題があるとは言えない」とは冒頭の予想通りの見解。
厚生労働省の担当官は「管理、監督行政が地方自治体に委託されている以上、見解を出せる立場にはないが、問題は公益性の事業面から公平な入札が行われたか、どうかが焦点」と語ったが問題は、その指導、監督行政。
ところが、この開札調書と報告書について熊本県は「保存期限超過で破棄」と回答。
双方に不満は残るが、市民に福祉事業を考えてもらう「絶好の事例」であることは確かで、今後の福祉を懸念するあなたは果たして納得しますか…。
20代、30代の女性が今の半分しかいなくなったら、地域の社会経済や住民の生存基盤は崩壊する…(増田寛也前岩手県知事・東京大大学院客員教授)。だが五木村では現在、36集落の中で16集落がすでに限界集落(人口の50%以上が65歳以上…高齢者だけとなって冠婚葬祭など社会的共同生活が困難な集落)。
同村の人口は昭和35年の6161人をピークとして後は激減傾向に入り、現在はその約2・1割の1302人。限界集落どころか、村は消滅寸前。色々な見解、評価は承知の上だが、同村の照山哲榮元議長の唱えた「議員報酬評価制」はこの一点において、その憂いからの焦りでもあった。引退前の遅過ぎた政治行動としての責めは認めるが、その趣旨とは同村の議員に求めた「政治家の責任」で、「政治家とは何か」であった。それを同村議会は却下した。ところで同村の限界集落とか、懸念されるとする自治体の崩壊は「ダム建設」という国家事業に振り回された結果というのは詭弁であって、また自治体の崩壊は五木村に限った予測ではなく、遅かれ早かれ県内各市町村が迎える明日といっても過言ではない。他市町村も似たり寄ったりの状況にある。「町職員の給与はもちろん、公共工事に頼る建設業者、補助金で生活を維持する産業と、ほとんどの町民が公金に係わって生活」(県内某町幹部職員談)
それは真っ先に消える村、町の最大要因である。
執行部に責任ある明日に向けた施策がないというのが最大の理由だが、その舵取役と連帯責任にある議会にも問題がある。自治の明日に活かされる立法が全く不在では、何のための議会かとなる。
活発な論議を展開しているというのは、手前の理由による旧態依然とした政治力学上の争いで、住民にとっては無駄な空論。
肝心なチェック(自治)機能が働いているかというと、実質的には無駄な盲判議会。
その無駄な議会の例を挙げてみる。
既報の通り天草市の安田公寛市長は2007年、「(国民宿舎)あまくさ荘の民営化」を打ち出して、入札に向けて公募したものの途中で1689㎡を「給水施設の点検用」(五足の靴への通行路)として市道化し、同入札も不可解な理由を取り出して中止とし、替わりに先の五足の靴へ6311㎡を議会の承認なしで売却(5000㎡以上の市有地の売却には議会の承認を必要とする)。結果、地元農水産品の再購入問題等はもちろん、彼が民営化への最大課題とした従業員の再雇用問題は自ら放棄し、国民宿舎の民営化構想を自ら潰した(国立公園内での建ぺい率からして11640㎡の観光開発には無理がある…開発業者談。一方、五足の靴における事業拡大には貢献)。
これが九月、同市議会で「国民宿舎の民営化構想から逸脱」、また「議会に無断で市有地を売却した責任は?」と問題化。
ところが同市議会は、これを継続審議としたのだ。
関係者の話によると、同議会では「市町合併前の継続事業に基づく随契対象事案」、また「区長の承認に基づく売買」とか、地方自治法からは想定外の答弁が執行部から登場。 この想定外の答弁が出て、そこで継続審議とするようでは、同議会にあっても同事案では同罪。
地方自治法及び市条例と照合すれば、それは即決の事案。
そもそも同議会が5年間も「不承諾事案」というのも不可解な話で、議員としての義務を果たしているか否かであって、彼らにもコンプライアンスが問われる。
天草パールマラソンの後、「市長は閉会後の公式典を抜け出して、親しい女性ランナーの打ち上げパーティに出席」という噂も飛び出しているが、そこで終わったところを考えると、「指をくわえた妬み」として品格が彼らにも問われる。
もちろん、これらの課題が後述の事例を含めて、最も難儀な市民の政治意識に起因することを否定はしない。
また隣の苓北町(田嶋章二町長)にあっても四月、同町議会において「町との事業契約者が暴力団と長年の関係」という問題が勃発したが、その事案が棚上げされた…
九州電力の苓北火力発電所で排出される石炭灰(フライアッシュ)を再資源化(地盤、路盤、盛土材)する目的で誘致、設立された(株)エコアッシュ(苓北町内田)の井手元高行社長が、山口組系暴力団のS組総長(昨年一月引退)とは10年前からの付き合いで、そこには金銭のやりとりもあった…。
苓北火力発電所から排出する石炭灰は、北九州や大分のセメント工場へ搬入する場合のコストに比べて4分の1(1トン当たり4800円)ということもあって、大方は地元のエコアッシュへ搬入されているが、そこで再資源化された建材のほとんどが苓北町に納入されている(年平均3474二トンで約1億6676万円)。
それでは事案の根本的な問題だが、政府は暴力団対策法を制定し、市町村は「暴力団排除条例」を制定して施行していることもあって、各市町村は自治体事業との関係者に「同条例における誓約書」を求める。
そこで先述の通り、町事業として契約(公共工事契約)するエコアッシュが暴力団と関係をもっていると、その物証を添えて内容が議会へ届いた。
ところが同社の井手元社長は、彼も「暴力団とは関係がない」と誓約書を自ら提出。これは権利を有する弁明だが、同時に議会(関連委員会)で「情報発信者を名誉棄損で告訴する」と発言。しかし、日本の司法は「証拠裁判」にあって、証言に加えて「物証」まで提出されると正誤の審判は簡単。
表現は悪いが、理解のしやすい形に換えると、泥棒と捕まえられた男が物証を出されて「泥棒ではない」といっても、その証拠がなければ起訴される。
だが、苓北町議会は先述の提出された「物証」を証拠とせず、「否定」の話だけで推認したのである。それが公共工事契約(購入)2件の承認。何も誘致企業との取引が永久的に無効というわけではなく法、条例に問われている対象は同社代表。
エコアッシュの代表に問われていたコンプライアンスが、ここで同町議会、執行部まで対象を拡げた。刑法161条、同246条、そして住民監査請求の対象となる地方自治法242条まで発生させたのである。
みずほ銀行の反社会組織への融資、またホテルやデパートを揺るがしている食材の偽装問題を語るまでもなく、いま最も注視されているのがコンプライアンス。
人生、会社の存亡に係わるコンプライアンスだが、条例を施行してもそれが守れないとなると、表現は悪いが児童らのルール以下。
「町長は震災の超安値(450円)の時に九州電力の株を3万株購入(現在1500円前後)。議員も何らかの形で九州電力、そしてエコアッシュの恩恵に授かっている」
これは現地で出た噂だが、こうした噂の示唆する政治不満、不信より問題なのは、その結果での自治行政への絶望感。
不満、不信はあっても住民側から監査請求等の政治行動が何ら生まれないというのは、自治体崩壊の前兆ともいえる…。
次は地域少年らに「違法を合法化」して見せた菊池市議会…。
ところで論理の成り立たない話は厄介だ。同事業化において収賄容疑の掛かる行為があったとか、また問題化する側には仕切り直しを期待する企業が存在するとか、そんな上ッ面の話題に関わる余裕などないが、問題だと指摘するのは、そんな違和感の環境を含めたコンプライアンス。
改めて問題点から入ると菊池市(江頭実市長)は8月14日、同整備工事の入札に向けた公告(条件付一般競争入札)を発出した。
その中で「参加する者に必要な資格」の(7)項において「主要装置は自らが製造するもの」としている。
そこで仕様書を見ると、周波数に基づいた多重無線装置を「18GHz」と指定。
すなわち「18GHz」を製造していないメーカーは、同入札から除外される。
防災無線機器装置メーカーは東芝、三菱電機、パナソニック、富士通、そしてNEC、日立国際電気、沖電気工業の大手7社。この中で「18GHz」を製造しているのはNECの1社で、他の6社は入札から除外された。
競争入札の原理に反すると思うのは常識であって当然、そこにはARlB(社団法人日本電波産業会)規約があった。
同規約では「特定のメーカーへの指定となるような仕様書は作成してはならない」としており、同会の管理行政である総務省防災情報室も「規約違反の入札」と見解。
仮に「JRC(日本無線)も入札に参加して競争入札は成立」と発注側が主張しても、問題はそれ以前の規約違反。
また同入札参加資格の(10)項で「設計者と資本、人事面において関連のない建設業者」と明記しているが、今回の設計を受託したコンサルタントは長年、泗水町、七城町においてNECの防災無線機器、施設(既設)のメンテナンスに従事してきた(下請け)業者。
主人公はコンサルタントか、それともNECなのかはともかく、NECの受注に向けて無謀な行動があったとみるのは当然の経由。
いずれにしても前項からして、適正な入札ではなかったという結論となるが、それを払拭する材料があるかどうか。
菊池市界隈はともかく、いま企業や地域社会で問題となっているのはコンプライアンス(遵法)。 勝手な推察をすると、話題の主人公となったNECは「350億円規模の全国での仕事に悪影響」と、可能なら同市から脱出も頭に浮上するのではないか。 一方、今回の入札からは除外されて、「仕切り直しに大期待」と地元で予想されているメーカー各社だが、「危険なエリアには近づきにくい」というのが本音。
コンプライアンス問題は、場合によっては企業の存亡に関わる問題で、間違えは彼らには命取りにもなる。 ところが菊池市はどうかというと、旧態依然とした臭覚、感性で、コンプライアンスなど「どこ吹く風」といった状況。
その最もたる例が本日の承認議会で、「補助事業の仕切り直しは面倒」、「ゴミ収集問題(誓約書)への影響が懸念される」と規約違反は棚に上げて可決と見ているのだが…。
1万9640平方メートルの同敷地を秘密裏で特定の業者へ売却し、「観光施設としては成り立たない1万1640平方メートルに面積を縮小した。市長は馬鹿とはいわないが、安田市政は羊頭狗肉」(地元観光協会役員談)
「国立公園内での建ぺい率は20パーセント以下。3928平方メートルの床面だから観光宿泊施設としてはまだ魅力があった。それが2328平方メートルに減って、採算をどう図れというのだ」(全国大手観光業者談)
熊本市内に出張の深夜、タコ焼きを抱えて天草マラソンではないだろうが、小躍りして宿泊先に足を運ぶ市長の後ろ姿を想うと、その羊頭狗肉がオーバーラップする。
経済収支比率92・2パーセント、公債費負担比率が18・2パーセント、地方債現在高が五5百86億2千7百37万円で、これは県内14市ワースト1。市民一人当たりの借金額は65万円。
7年経っても改善の兆しが見えないというのは同市長の資質に問題。人材不足か、また何が良いのか支持する有権者のレベルに問題かということになるが、資質についての実証がこの「あまくさ荘民営化問題」であって、羊頭狗肉の検証でもある。
雲仙天草国立公園内に立地したあまくさ荘はピークの1993年度、1万7400人余りが宿泊。だが、その後は施設の老朽化や観光スタイルの変化に伴って旅行者のニーズに対応できず、宿泊者や休憩者はともに減少。06年度は8265人まで落ち込み、2百79万円の赤字を計上した。
「安全性にも問題が発生した建物と施設。そして泉源まで1・39キロに及ぶ送湯管等の改修まで7億円が試算されて、そこで生き残る道は民間企業への譲渡と決定」(元施設管理者談)
それが冒頭の民間企業への譲渡計画。ところが、その後が馬鹿とは表現できないが、私的で場当たりのプロセス。
当時の対象物件は、建物本館が鉄筋コンクリート建造で一部三階建ての総床面積約1924平方メートル。これに別館木造の約282平方メートル。土地は約1万1614平方メートル。
「評価額は4千50万円なのだが、入札で予定している最低売却価格は2千9百90万4千円」
天草市財政課の見解であったが、さらに条件付きながら譲渡先には一億円を上限として用地取得補助金を約束。
「施設の建物だけでも4千万円の評価額を想定」(地元観光業者談)
こうした見解を考えると、財政ワースト1を忘れた優遇処置の民営化構想。それは、その1である。
公募された入札にはHIS(九州産業交通ホールディングスの親会社)、スタジオアレックス(大阪市)と、これに地元三社(一社は途中で辞退・後述)が参加の意向を表明(07年12月)。
ところが08年1月、その施設面積の中の1689平方メートルを市道に変更。
「施設内を通路、玄関口として利用していた五足の靴(観光旅館)を考慮して、民間譲渡前に同敷地を市道化」(地元商工会役員談)
五足の靴とは、入札を途中で辞退した伊賀屋(山崎博文代表・天草市天草町下田北)の姉妹旅館。
これについて天草市は、「山頂に市水道課の給水施設があって、その点検のための市道化」(同財政課)
給水施設の点検、管理上からの変更と語るが、同市水通課元職員は「非稼働の施設」
と証言。
周辺住民に配水していたか否かはともかく、仮に給水施設として稼働していたとしても月に一、二回程度の点検、管理に1689平方メートルの市道が果たして必要だったのか、というのは問われる。
「明らかに『五足の靴』の通路確保で、同施設の民営化における最悪でのケースを考えての事前的な施策」
周辺地区の観光事業者は、揃ってそう語る。
反全市民的な市政…。
筆頭株主である仏食品大手のダノンが提携関係を解消すると発表し、4700円近くあったヤクルトの株価が4000円を切るまで急落した頃、この熊本でもJR九州と二人三脚で同社が企業の品格を急落させた。
ヤクルト本社(東京都港区東新橋)は熊本市西区上熊本三丁目に所有していた熊本工場跡地(約13762㎡)の売却を決定。そこで昨年の春頃から大規模量販店等が同地での再開発に名乗りを挙げたが結局、そのE社とJR九州、そして地元Tグループの三社による争奪戦となった。
民間同士の不動産売買で任意の交渉は当然だが今年4月、希望価格としてJR九州が坪単価18万円、E社が同20万円、そして地元Tグループが同21万円を提示。 そこで同月11日、ヤクルト本社の資産管理担当であるA主席参与(総務部)が来熊し、Tグループの社長に「貴社が最高価格であった。これから他の二社には断りに行くが、坪単価を後1万円だけ上乗せ(総額約9億1580万円)してもらえないか」と希望を添えて、譲渡決定を告げた。 ところが後日、それが一転。『当社への譲渡が困難なら、JR九州内でのヤクルト販売は排除する』と、JR九州が高圧的に変化(ヤクルト本社A参与談)。
キオスクが持ち出されたからいうわけではないが、前々から特産品の取り扱い、接待の強要と売店を絡めてのJR九州の評判はよくない。旧国鉄時代からの悪習といえば簡単だが、正常な取引を希望する者には納得できない手法。
譲渡契約の内諾を得ていた地元Tグループには、そんな高圧的な姿勢に怯んだヤクルト本社に納得出来ないのは当然だが、鬼が赤子の手を捻るようなJR九州の営業手法に怒るのは当然。
Tグループ側の不動産仲介業者が「モラルどころか商法にも反する」と、一緒に土俵へ上がったJR九州へ電話を入れた。
これにはJR九州が再び怒った。『何で裏の話を第三者へ漏らした』(K副課長・安全推進部)ではないだろうが、ヤクルト側は「JR九州を怒らせた仲介業者は外して欲しい」と再びTグループに通告。そこでTグループ、ここは『譲渡契約が第一』と、「外す」と詫び状を提出。
ところがヤクルト本社サイド、今度は「JR九州が25万円に坪単価を上げてきた」と、『譲渡決定』どころか同対応を迫ってきたのだ。
民間同士の商談で自由競争であるのは当然だが、田舎の小さな不動産業者同士のトラブルならともかくヤクルト本社、JR九州は株式上場のメジャー企業。そこにルール遵守や品格が求められるのは、一般社会との関わり度合いから明らか。
旧態依然とした殿様商売と、寄り合い所帯特有の経営陣内紛が伝統にもなっているこの二社は、『日本経済界の本流とは異なる企業体質』と評するのは簡単だが、一方では子供らに『安全』と『健康』を売る商売と語っていては、その子供らも『偽物』と笑う日がいつか来る。それはいつか。「今でしょ!」とはいわないが、そうした意味でもJR九州の同上熊本開発が楽しみではある…。