万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国経済―二つの不安

2009年09月15日 16時16分10秒 | 国際政治
リスク度はレッドゾーンに突入?「中国依存症」に陥る日系企業の光と影(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 リーマン・ショック以来の金融危機の煽りを受けて、欧米市場での販売が低下した日本企業は、中国への依存を高めているようです。しかしながら、この依存症には、(1)ダンピング問題への対応と(2)賃金コストの上昇という二つの不安があるように思うのです。

(1)ダンピング問題への対応
 先日、アメリカ政府は、中国製タイヤの輸入にセーフガードとして数量制限を設けると発表したところ、中国政府は、アメリカ製自動車に対してダンピング調査を行う構えを見せました。中国の物価水準を考慮しますと、先進国の製品は、すべてタンピングの疑いがかけられる可能性があります。このダンピング問題を回避するためには、中国で現地生産を行わなければならないのですが、先進国は、雇用の喪失という別の問題に対処しなければならなくなります。

(2)賃金コストの上昇
 中国政府は、廉価な労働力を維持するために、沿岸部の都市での賃金上昇には警戒心を抱きつつ、その一方で、内陸部の農村などの購買力を高めるために、補助金制度や貸付制度などを設けているようです。中国市場では、自動車や農業機械といった製品の販売が伸びてはいるものの、こうした”貸付”制度や銀行などからの借入金で製品を購入しているとしますと、国民の多くが借金を負うことになります。不景気に加えて、借金の返済も抱えるようになると、国民は、賃金の値上げを要求するかもしれません。また、国民の不満の声が高まれば、政府も、低賃金政策を見直す可能性もあります。結局、現地生産に切り替えた企業も、賃金コストの上昇に見舞われることになります。

 以上の二点ほど問題点を指摘してみましたが、中国市場への過度の期待は禁物と言えそうです。 

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