万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

東アジア共同体と日米FTAは矛盾する?

2009年09月05日 17時07分26秒 | 国際経済
7日に温家宝首相と会談へ=御手洗経団連会長ら-日中経協(時事通信) - goo ニュース
 今月発足する民主党政権では、東アジア共同体の枠組みで通貨統合を目指すことを、鳩山代表は、内外に表明いたしました。その一方で、農家からの強固な反対でトーン・ダウンしたものの、アメリカとの間に日米FTAの交渉も開始するそうです。アジアの通貨統合とアメリカとの自由貿易協定、この両者、どこかちぐはぐしているように思えるのです。

 その理由は、共通通貨を導入するメリットの一つは、貿易決済の円滑化にあるからです。貿易国の双方が、それぞれ異なる通貨を使用している場合には、双方、あるいは、どちらか一方が、決済通貨を入手するために、外国為替市場で為替取引を行う必要があります。両国が、共通通貨を導入しますと、もはやこの煩雑な手続きを経ることなく、かつ、為替変動のリスクに晒されることなく、あたかも国内市場の如く決済が可能となるのです。この点を考慮しますと、民主党政権が、FTAの推進を軸にアメリカとの貿易拡大を志向するのであるならば、むしろ、ドルとの通貨統合の方が理にかなっているかもしれません。実際にEUでは、加盟国間の取引を自由化した市場統合は、ユーロを導入する根拠ともなりました。

 逆方向の政策を同時遂行することには、自国が引き裂かれてしまうというリスクがあります。もし、鳩山代表が、鳩山論文で記したように、日本国が、アメリカと中国との間に挟まれ微妙な位置にあることを認識しているならば、この点を考慮していただきたいと思うのです。

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