万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米キューバ正常化交渉-オバマ大統領の危険な賭け?

2014年12月19日 10時31分30秒 | 国際政治
米・キューバ正常化交渉 中国「歓迎」平静装う 急接近にショック?(産経新聞) - goo ニュース
 昨日、アメリカのオバマ大統領は、キューバ危機以来、断絶状態にあったキューバとの国交正常化交渉を開始することを表明いたしました。既にキューバの後ろ盾であったソ連邦も消滅し、米ソ間の冷戦も終焉したのであるから、アメリカの裏庭を安全にした方が得策である、とする判断が働いたようです。

 しかしながら、この正常化交渉、楽観視はできないのではないかと思うのです。学問の世界では、体制間の違いも相互交流の活発化によって変化が生じ、やがて、全体主義体制も自由で民主的な体制へと転換する説が唱えられてきました。ところが、この説、理想論ではあるのですが、残念ながら、これまでのところ成功例がないのです。1989年以降の東欧諸国やソ連邦の崩壊は、社会・共産主義体制の行き詰まりがもたらしたものであり、自滅を誘導する”分離政策”が功を奏しました。中国が最たる失敗例であり、中国との通商関係の拡大、政治的対話の促進、人的交流の活発化…などは、むしろ、中国の軍事大国化を許し、独裁体制が強化されると共に、かつてのソ連邦に迫るほどの脅威を国際社会にもたらすようになりました。北朝鮮もまた、日本国内の在日朝鮮人による本国送金、つまり、資金の流れが核・ミサイル開発の財源となったのです。このことは、一つ間違いますと、キューバもまた、これらの諸国と同じ道を歩むことを意味します。特に、民主主義、人権の尊重、法の支配といった政治的な思想や情報の流入が遮断され、経済分野のみが開放されますと、このような期待外れの現象が起こります。

 中国は、このニュースに「歓迎」の意を表したそうですが、最近、中南米に急接近してきただけに、内心ではショックなのではないかとする憶測もあります。中国が進めてきた”アメリカ包囲網”の一角が崩れることになるのですから。その一方で、戦略と謀略に長けている中国のことですから、アメリカは、今後、中国とキューバとの関係に常に神経を尖らせる必要が生じます。アメリカがキューバに裏切られ、独裁国家であり、かつ、双方とも軍事力を増強させた中国とキューバに挟まれるシナリオこそ、地政学から見て最悪の展開となるからです。もちろん、理論が現実化し、独裁国家が体制崩壊に向かう可能性も否定できないのですが、オバマ大統領は、危険な賭けに出たのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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