万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国化は進化か?-ブレマー氏の怪しい”国際体制進化論”

2014年12月24日 15時30分44秒 | 国際政治
中国が反対・・・北朝鮮の人権問題、国連安保理は「議論に適切な場所でない」(サーチナ) - goo ニュース
 新たな国際秩序を見いだせない混迷した世界を「Gゼロ」と表現し、一躍注目を集めたアメリカの政治学者、イアン・ブレマー氏。本日の日経新聞に、氏へのインタビューが掲載されておりましたが、紙面に示された氏の見解には、首を傾げざるを得ないのです。

 ブレア―氏は、Gゼロから次の秩序への移行には、二つのシナリオがあると語っています。その一つは、「米国が中国などの意向をくんだ新たなルールや機構を受け入れるシナリオ」であり、「パワーバランスの転換を反映して体制が少しずつ進化する展開だ」と述べています。このシナリオについては、特に”進化”という言葉を用いて肯定的に評価しておりますが、中国の意向を汲んだルールや機構は、果たして、国際体制の”進化”と呼べるのでしょうか。中国の問題点は、国際的なルールや制度を無視し、自国中心の華夷秩序の復活を目指しているところにあります。中国の要求を受け入れるということは、民族自決、主権平等、政治的独立の相互尊重…といった原則が損なわれ、近代以前の状況に逆戻りすることを意味します。全世界に中国中心の冊封体制という新秩序が敷かれるとしますと、これは、進化どころか、退化なのではないでしょうか。なお、もう一つのシナリオは、「国際社会が手に負えない大きな危機に直面し、その中で新秩序が生まれるシナリオ」であり、こちらのシナリオは、あまりにも抽象的であり、具体的なイメージが湧いてきません。

 もしかしますと、中国の意向を汲んでいるのは、ブレア―氏自身なのかもしれません。国際秩序の進化とは、人類が努力して築き上げてきた国際社会の諸原則に沿うべきであり、来るべき新秩序とは、中国を含めた全ての国が、国際社会に対して責任を負うと共に、国際法で定めた行動規範や義務を遵守し、一般的なルールが全ての国の権利や自由を擁護する体制なのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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