万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

韓国の対馬領有主張を紹介する中国メディア-恐るべき無批判

2014年12月01日 15時34分03秒 | アジア
なぜ韓国人は対馬の仏像を盗むの?=中国メディア(サーチナ) - goo ニュース
 韓国人による対馬における仏像窃盗に関して、中国メディアでは、韓国人が、対馬を自国の領土と考えている点を原因として挙げおります。通常、窃盗事件なのですから、韓国に対して批判的な記事となるはずなのですが、むしろ理解を示しているように読み取れます。

 そもそも、韓国の対馬に対する領有権の主張は、李氏朝鮮が対馬に侵攻した1419年の応永の外寇の際の一件を根拠としています。応永の外寇は、李氏朝鮮側が武力による対馬の占領を企てたものですが、対馬側の反撃を受けて撤退を余儀なくされました。この戦闘、李氏朝鮮側の大敗北なのですが、『朝鮮王朝實録』には、対馬から使者が遣わされ、降伏を請うたとする記述があり、韓国人は、この部分を根拠としているらしいのです。実際には、この時の対馬からの使者は偽使であり、対馬と李氏朝鮮の関係は、正式には1443年の嘉吉条約の締結によって一先ずは律せられます。当条約は貿易協定であり、以後、対馬は、朝鮮貿易を独占するのです。この際、対馬の宋氏は、形式として李氏朝鮮から官位を受けるのですが(官位を受けたのは宋貞盛の子成職)、宗氏は、室町幕府に仕える守護大名であり、日本国の守護領国制から離脱したわけではありません。あくまでも、貿易上の特権を得るための便宜上の措置であり(叙勲のようなもの…)、対馬と李氏朝鮮との間の歴史的経緯は、到底、韓国の対馬に対する領有権主張の根拠となるものではなく、況してや、国際法上の根拠はゼロなのです。

 中国は、対馬の仏像窃盗に対して寛容であるのは、過去において中国の歴代王朝が冊封・朝貢体制に組み込んだ全ての周辺諸国に対して、同様の主張ができると考えているからかもしれません。韓国もまた、李氏朝鮮は清国の属国であったのですから、中国から中国で造られた文化財のみならず、領土そのものを要求されるかもしれないのです。中国と韓国の強欲と前近代的な思考は、アジアの平和を乱す脅威となるのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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