万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「ザ・インタヴュー」はヘイトスピーチか

2014年12月26日 10時35分25秒 | 国際政治
「正恩氏映画」満員、ロスで公開…手荷物検査も(読売新聞) - goo ニュース
 北朝鮮がテロを予告したことから、公開停止騒ぎとなった「ザ・インタヴュー」。”独裁国家の脅迫に屈するな”、”言論の自由を護れ”の声が優り、劇場公開の運びとなりましたが、一国のトップの暗殺映画は、特定の国家の尊厳を傷つけ、民族に対するヘイトスピーチ(ヘイトクライム)であるとする反対意見も聞かれます。

 仮に、「ザ・インタヴュー」が禁止すべきヘイトスピーチであるとしますと、当然に、ヒトラーを皮肉ったチャップリンの「独裁者」も上映されるべきではなかったとする結論に達します。現在でも、北朝鮮のみならず、中国や韓国が制作した反日映画やドラマは、明らかに日本国と日本人をターゲットにしており、特定の国や民族に対する憎悪を煽っています。ネット情報によりますと、韓国に至っては、日本国に核攻撃を仕掛ける「むくげの花が咲きました」や天皇暗殺を描いた「憤怒の王国」といった作品も、既に制作・公開されているそうです。また、日本軍による捕虜虐待を描いたアンジェリーナ・ジョリーの「アンブロークン」も、ヘイトスピーチの範疇に入るかもしれません。ヘイトスピーチとは何か、を問うこともなく、独り歩きさせますと、禁止の対象は際限なく広がってゆきます。やがて、国や民族を扱う作品を制作すること自体が非合法行為と見なされることでしょう。言い換えますと、ヘイトスピーチ規制によって、言論や表現の自由は、著しい制約を受けることになるのです。言論や表現の自由に対する抑圧が、人類に閉塞感と停滞感をもたらすことは、歴史が証明しております。また、映画、小説、ドラマとは、様々な手法を用いて悪を暴くものでもあり、人々が善悪や世の中のあり方について考える機会を与えています。こうした自由な表現活動なくして、人類が精神的に発展するとは思えません。長期的な視点に立てば、ヘイトスピーチを理由とした言論や表現の規制は望ましものではないのです。その一方で、際限のない自由にもたらす名誉棄損、中傷被害、差別…といったマイナス面とのバランスを取る必要もあります。そこで、何らかの措置を講じるとしますと、(1)歴史を扱う作品については、実証性を要求すること、(2)フィクションである場合には、作品内で明記すること、(3)作品の対象となった国や団体の見解を公表すること、(4)苦情やコメントの受付や製作者との質疑応答公開サイトを設けること…といった工夫が考えられます。

 北朝鮮が、実際に「ザ・インタヴュー」を公開した映画館にテロ攻撃を加えるとしますと、当然に、アメリカとの戦争を覚悟することになりますので、おそらくテロ事件は発生しないことでしょう。その一方で、”ヘイトスピーチ”を武器に、映画の公開をに対する妨害活動を強めるかもしれません。金正恩氏は、近々、国際刑事裁判所に提訴されますが、反人道的な行為を止めさせるためにも、弾圧国家への批判を込めた映画は上演されるべきと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村


 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする