万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ソフトバンクの対米巨額投資は”トロイの木馬”?

2016年12月08日 15時21分29秒 | アメリカ
ソフトバンクの孫社長、米国に500億ドル投資へ トランプ氏と会談
 ソフトバンクと言えば、東日本大震災に際して発生した福島第一原発事故に乗じ、当時の民主党政権と結託して再生エネルギー事業に乗り出した”政商”としての側面があります。そのソフトバンクが、今度は、アメリカの次期大統領であるトランプ氏に対して、500億ドルの対米投資を以って急接近を図っていると報じられております。

 考えても見ますと、このソフトバンクの対米巨額投資、トランプ次期大統領がしばしば”反グローバル主義者”、”反イスラム主義者”、並びに、”反移民主義者”と評されてきただけに、何とも矛盾に満ちています。
 
 ソフトバンクの真の狙いは、米国通信事業の再編と称した企業買収にあり、5兆円の内訳を見れば、その大半は、米競争当局が阻止したTモバイルUS<TMUS.O>の買収に費やされると指摘されています。つまり、グローバル企業の海外展開が目的であり、ソフトバンクは、まさしくグローバリズムの極致にあります。しかしながら、”アメリカ・ファースト”への米国民の支持を考慮しますと、社会インフラの側面が強い通信分野において、米国企業が海外企業に買収されることが、米国民に歓迎されるのか疑問なところです。

 さらに奇妙に映るのは、この5兆円の資金は、サウジアラビアと共同で設立した投資ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PFI)からの拠出であることです。いわば、”イスラム・マネー”であり、ソフトバンクを介して米国経済にアルカイダを支援したサウジアラビアの影響が及ぶことになります。ソフトバンクの孫氏は、中国とも協力関係を強化しており、資金の一部は、”チャイナ・マネー”の迂回融資である可能性も否定はできません(会談で名の上がった鴻海精密工業は台湾企業であるものの、中国との緊密な関係にある…)。

 加えて、孫氏は、アメリカ国内での5万人規模の新規雇用の創出を約束していますが、投資先はIOTやAIといった次世代技術関連企業に絞られています。先の大統領選挙では、トランプ氏は、失業問題に苦しむ白人労働者層の期待を背負って当選しておりますので、雇用機会のミスマッチが見られます。また、IT産業は、比較的外国人雇用率が高い分野でもあり、この分野での投資が一般のアメリカ国民の雇用機会を増やすのかも不明であり、逆に、移民が増加する可能性もあります。

  事業のグローバル展開が、一起業家による野心、あるいは、その協力関係にある支援勢力の政治的戦略を動機としているとしますと、ソフトバンクの対米巨額融資とは、トランプ氏を支持した米国の一般国民にとりまして、危険な”トロイの木馬”である可能性もあります。日米関係にも良い影響を与えるとも思えず、このニューズ、日本国内では、むしろ、冷ややかな反応をもって迎えられているように思えるのです。

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コメント (6)
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