万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トランプ次期政権の対北政策は対中依存継承か?-アジア情勢の岐路

2016年12月09日 09時58分16秒 | アメリカ
北朝鮮、核弾頭小型化成功か=再突入技術は未完成―米当局者
 大統領選挙期間にあって、数々の暴言で国際社会を驚愕させたトランプ氏。しかしながら、対北政策に限っては、圧力の強弱の違いこそあれ、”中国に北朝鮮を抑えさせる”という、従来の対中依存方針を継承していました。

 これまでの報道によりますと、大統領の座を確定した後、トランプ氏は、台湾の蔡英文総統と電話会談に臨むという”トランプ・ショック”を起こす一方で、駐中大使には、習主席の”古い友人”であるアイオワ州のテリー・ブラン スタッド知事を起用する方針を示しています。対中政策が、一体、どちらの方向を向くのか、皆目検討が付かない状況なのですが、その方向性を見極める上で重要となるのは、北朝鮮に対するトランプ政権の対応です。北朝鮮の核の脅威については、ミサイルへの搭載可能な核弾頭の小型化に成功したとする情報もあり、アメリカに対する軍事的脅威のレベルは格段に上がっています。仮に、この情報が事実であれば、従来の対中依存政策が無力であったことの証明でもあり、アメリカが何らかの政策変更を余儀なくされていることをも示しています。そして、その対北政策の変更は、対中政策の行方とリンケージしているのです。

 想定される第1の政策変更のシナリオは、従来の対中依存の基本路線を継承しつつも、中国に対して事実上の”強制力”を働かせる、即ち、米軍による軍事的圧力や経済制裁等の手段を用いてでも、中国に北朝鮮の核放棄という”ミッション”を強要することです。このシナリオでは、中国による対北軍事オプションも許容されるかもしれません。第2のシナリオは、アメリカ自身が、自らの手で本格的に北朝鮮の核放棄に乗り出すというものです。核施設、軍事施設、金正恩を狙ったピンポイント爆撃もあり得ますので、必ずしも全面的な第二次朝鮮戦争を招くとは限りませんが、このシナリオでは、軍事的オプションは、アメリカの手中にあります。そして第3のシナリオは、アメリカが大幅に譲歩し、北朝鮮が提案している講和条約の締結、国交樹立、並びに独裁体制の保障に応じることです。しかしながら、たとえ、北朝鮮の要望に応えても、核放棄が不確実な以上、このシナリオが選択される可能性は高くはありません。また、国連安保理の枠組みで対北制裁が追及されるシナリオもないわけではありませんが、中国は、即、”拒否権”を行使することでしょう。

 何れにしても、トランプ次期政権の対北政策は、中国との関係にも抜本的な見直しが及ぶ面において、アジア情勢の岐路ともなり得ます。今日、米中関係は、北朝鮮の核・ミサイル問題の緊迫化も加わることで、重大な局面を迎えていると思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする